← Library‹ かちかち山 四

それから四よん、五いつ日にちたちました。ある日ひうさぎは、

「たぬきのやつどうしたろう。こんどはひとつ海うみに連つれ出だして、ひどい目めにあわせてやろう。」

と独ひとり言ごとを言いっているところへ、ひょっこりたぬきがたずねて来きました。

「おやおや、たぬきさん、もうやけどはなおったかい。」

「ああ、お陰かげでたいぶよくなったよ。」

「それはいいな。じゃあまたどこかへ出でかけようか。」

「いやもう、山やまはこりごりだ。」

「それなら山やまはよして、こんどは海うみへ行いこうじゃないか、海うみはおさかながとれるよ。」

「なるほど、海うみはおもしろそうだね。」

そこでうさぎとたぬきは連つれだって海うみへ出でかけました。うさぎが木きの舟ふねをこしらえますと、たぬきはうらやましがって、まねをして土つちの舟ふねをこしらえました。舟ふねができ上あがると、うさぎは木きの舟ふねに乗のりました。たぬきは土つちの舟ふねに乗のりました。べつべつに舟ふねをこいで沖おきへ出でますと、

「いいお天気てんきだねえ。」

「いいけしきだねえ。」

とてんでんに言いいながら、めずらしそうに海うみをながめていましたが、うさぎは、

「ここらにはまだおさかなはいないよ。もっと沖おきの方ほうまでこいで行いこう。さあ、どっちが早はやいか競争きょうそうしよう。」

と言いいました。たぬきは、

「よし、よし、それはおもしろかろう。」

と言いいました。

そこで一、二いちに、三さんとかけ声ごえをして、こぎ出だしました。うさぎはかんかん舟ふなばたをたたいて、

「どうだ、木きの舟ふねは軽かるくって速はやかろう。」

と言いいました。するとたぬきも負まけない気きになって、舟ふなばたをこんこんたたいて、

「なあに、土つちの舟ふねは重おもくって丈夫じょうぶだ。」

と言いいました。

そのうちにだんだん水みずがしみて土つちの舟ふねは崩くずれ出だしました。

「やあ、たいへん。舟ふねがこわれてきた。」

とたぬきがびっくりして、大おおさわぎをはじめました。

「ああ、沈しずむ、沈しずむ、助たすけてくれ。」

うさぎはたぬきのあわてる様子ようすをおもしろそうにながめながら、

「ざまを見みろ。おばあさんをだまして殺ころして、おじいさんにばばあ汁じるを食くわせたむくいだ。」

と言いいますと、たぬきはもうそんなことはしないから助たすけてくれと言いって、うさぎをおがみました。そのうちどんどん舟ふねは崩くずれて、あっぷあっぷいうまもなく、たぬきはとうとう沈しずんでしまいました。

Click a word · hold for the whole sentence 0%