← Library‹ 少年探偵団 少年捜索隊

ちょうどそのころ、篠崎しのざき君くんのおうちの近ちかくの、養よう源げん寺じの門前もんぜんを、六ろく人にんの小しょう学校がっこう上級じょうきゅう生せいが、何なんか話はなしながら歩あるいていました。

先頭せんとうに立たっているのは、篠崎しのざき君くんの親友しんゆうの、よくふとった桂かつら正一しょういち君くんです。桂かつら君くんは、学校がっこうで篠崎しのざき君くんからこんどの事件じけんのことを聞きいたものですから、まず、いとこの羽柴はしば壮そう二に君くんに電話でんわをかけ、羽柴はしば君くんから少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんに伝つたえてもらって、一同いちどう、桂かつら君くんのところに勢せいぞろいをしたうえ、篠崎しのざき家かを訪問ほうもんすることになったのです。団員だんいんのうち三さん人にんは、さしつかえがあって、集あつまったのは六ろく人にんだけでした。

少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんたちは、仲間なかまのうちに何なんか不幸ふこうがあれば、かならず助たすけあう、というかたい約束やくそくをむすんでいました。いま、団員だんいん篠崎しのざき始はじめ君くんのおうちは、おそろしい悪魔あくまにおそわれています。しかも、それが、このあいだから、東京とうきょう中ちゅうをさわがせている「黒くろい怪物かいぶつ」なのですから、少年しょうねん探偵たんてい団だんは、もう、じっとしているわけにはいきませんでした。ことに彼かれらの団長だんちょうの小林こばやし少年しょうねんが、篠崎しのざき君くんの請こいにおうじて、出動しゅつどうしたことがわかっているものですから、一同いちどう、いよいよ勇いさみたったのです。「黒くろい怪物かいぶつ」は、ぜひ、われわれの手てでとらえて、少年しょうねん探偵たんてい団だんの手てなみを見みせようではないかと、団員だんいんは、もう、はりきっているのです。

桂かつら正一しょういち君くんは、養よう源げん寺じの門前もんぜんまで来くると、そこに立たちどまって、いつかの晩ばんの冒険ぼうけんについて、一同いちどうに語かたりきかせました。読者どくしゃ諸君しょくんは、そのとき、黒くろい怪物かいぶつが養よう源げん寺じの墓地ぼちの中なかで、消きえうせるように姿すがたをかくしてしまったことを記憶きおくされるでしょう。

「ほんとうにかき消けすように見みえなくなってしまったんだよ。ぼくは、お化ばけなんか信しんじないけれど、墓地ぼちの中なかだろう。それにまっくらな夜よるだろう、さすがのぼくもゾーッとふるえあがって、やにわに逃にげだしてしまったのさ。その墓地ぼちっていうのは、この本堂ほんどうの裏手うらてにあるんだよ。」

桂かつら君くんはそういいながら、お寺てらの門内もんないにはいって、本堂ほんどうの裏手うらてを指ゆびさしました。少年しょうねんたちも桂かつら君くんといっしょにぞろぞろと門内もんないにはいり、たそがれ時どきの、ものさびしい境内けいだいを、あちこちと見みまわしていましたが、最さい年少ねんしょうの羽柴はしば壮そう二に君くんが、何なんを発見はっけんしたのか、びっくりしたように、桂かつら君くんの腕うでをとらえました。

「正一しょういち君くん、あれ、あれ、あすこを見みたまえ。なんだかいるぜ。」

ほとんどふるえ声ごえになって、壮そう二に君くんが指ゆびさすところを見みますと、いかにも、門もんの横よこのいけがきのそばの低ひくい樹木じゅもくのしげみの中なかに、何なんかモコモコとうごめいているものがあります。それが、どうやら人間にんげんの足あしらしいのです。人間にんげんの足あしが、しげみの中なかからニューッとあらわれて、まるでいも虫むしみたいに、動うごいているのです。

一同いちどうそれに気きづくと、いくら探偵たんてい団だんなどといばっていても、やっぱり子こどものことですから、ゾッとして立たちすくんでしまいました。おたがいに顔かお見みあわせて、今いまにも逃にげだしそうなようすです。

むりもありません。物ものの姿すがたのおぼろに見みえる夕暮ゆうぐれ時とき、さびしいお寺てらの境内けいだいで、しかも桂かつら君くんの怪談かいだんを聞きかされたばかりのところへ、うす暗ぐらいしげみの間あいだから、ふいに人間にんげんの足あしがあらわれたのですからね。おとなだって、おびえないではいられなかったでしょう。

「よし、ぼくが見みとどけてやろう。」

さすがに相撲すもうの選手せんしゅです。桂かつら正一しょういち君くんは、おびえる一同いちどうを、その場ばに残のこして、ただひとり、しげみのほうへ近ちかづいていきました。

「だれだっ。そこにかくれているのは、だれだっ。」

大声おおごえでどなってみても、相手あいては少すこしも返事へんじをしません。といって逃にげだすわけでもなく、いも虫むしのような足あしが、ますますはげしく動うごくばかりです。

桂かつら君くんは、また二に―三さん歩ほ前進ぜんしんして、しげみのかげをのぞきました。そして、何なんを見みたのか、ギョッとしたように立たちなおりましたが、いきなりうしろをふりむくと、一同いちどうを手てまねきするのです。

「早はやく来きたまえ、人ひとがしばられているんだよ。ふたりの人ひとが、ぐるぐる巻まきにしばられて、ころがっているんだよ。」

お化ばけではないとわかると、団員だんいんたちは、にわかに勢いきおいづいて、その場ばへかけだしました。

見みると、いかにも、そのしげみのかげに、ふたりのおとなが、手てと足あしを、めちゃくちゃにしばられ、さるぐつわまではめられて、よこたわっていました。そのうちのひとりは、着物きものをはぎとられたとみえて、シャツとズボン下かばかりの、みじめな姿すがたです。

「おや、これは篠崎しのざき君くんとこの秘書ひしょだぜ」

桂かつら少年しょうねんは、そのシャツ一いち枚まいの青年せいねんを指ゆびさしてさけびました。

それから、六ろく人にんがかりで、なわをとき、さるぐつわをはずしてやりますと、ふたりのおとなは、やっと口くちがきけるようになって、事ことのしだいを説明せつめいしました。

しばられていたのは、シャツ一いち枚まいのほうが篠崎しのざき家かの秘書ひしょ今井いまい君くん、もうひとりの洋服ようふくの男おとこは、篠崎しのざき家かお出入でいりの自動じどう車しゃ運転うんてん手しゅでした。

ふたりの説明せつめいを聞きくまでもなく、もう読者どくしゃ諸君しょくんにはおわかりでしょうが、今井いまい君くんが、主人しゅじんのいいつけで自動じどう車しゃを呼よびに行いき、気心きごころの知しれた運転うんてん手しゅをえらんで、同乗どうじょうして篠崎しのざき家かへひっかえす途中とちゅう、この養よう源げん寺じの門前もんぜんにさしかかると、とつぜんふたりの覆面ふくめんをした怪漢かいかんに呼よびとめられ、ピストルをつきつけられて、有無うむをいわせず、しばりあげられてしまったというのです。

そして、その怪漢かいかんのひとりが、今井いまい君くんの洋服ようふくをはぎとって、今井いまい君くんに変装へんそうをして、ふたりは、うばいとった自動じどう車しゃにとびのると、そのまま運転うんてんをして、どこかへ走はしりさってしまったのだそうです。

団員だんいんたちは、ふたりのおとなといっしょに、ただちに篠崎しのざき家かにかけつけ、事ことのしだいを報告ほうこくしました。それをお聞ききになった篠崎しのざき君くんのおとうさま、おかあさまは、もう、まっさおになっておしまいになりました。

ふたりがこんなめにあわされたからには、さいぜんの自動じどう車しゃは、インド人にんが変装へんそうして運転うんてんしていたのにちがいない。すると、緑みどりちゃんも小林こばやし君くんも、今いまごろは、彼かれらの巣そうくつにつれこまれて、どんなひどいめにあっているかわからないのです。

すぐさま警察けいさつへ電話でんわがかけられる。まもあらせず、所轄しょかつ警察けいさつ署しょからはもちろん、警視けいし庁ちょうからも、捜査そうさ係かかり長ちょうその他たが自動じどう車しゃをとばしてくる、篠崎しのざき家かは、上うえを下したへの大おおさわぎになりました。

さいわい、自動じどう車しゃの番号ばんごうがわかっているものですから、たちまち全ぜん都との警察けいさつへ、その番号ばんごうの自動じどう車しゃをさがすように手配てはいがおこなわれましたが、しかし、犯人はんにんのほうでも、まさかあの自動じどう車しゃを、そのまま門前もんぜんにとめておくはずはなく、おそらくどこか遠とおいところへ運転うんてんしていって、道みちばたにすてさったにちがいありませんから、たとえ自動じどう車しゃが発見はっけんされたとしても、賊ぞくの巣すくつをつきとめることは、むずかしそうに思おもわれます。

いっぽう、篠崎しのざき始はじめ君くんをくわえた、七しち人にんの少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんは、なるべく、おとなたちのじゃまをしないように、門もんの前まえに勢せいぞろいをして、いろいろと相談そうだんをしていましたが、ぼくたちも、手てをつかねてながめていることはない。警察けいさつとはべつに、できるだけはたらいてみようではないかということになり、七しち人にんが手分てわけをして、自動じどう車しゃの走はしりさった方角ほうがくを、ひろく歩あるきまわり、例れいの聞ききこみ捜査そうさをはじめることに一決いっけつしました。

賊ぞくの自動じどう車しゃが、玉川たまがわ電車でんしゃの線路せんろを、どちらへまがっていったかということだけは、わかっていましたので、七しち人にんは肩かたをならべて、その方角ほうがくへ歩あるいていきましたが、四辻よつつじに出でくわすたびに、ふたりまたは三さん人にんずつの組くみになって、枝道えだみちへはいっていき、たばこ屋やの店番みせばんをしているおばさんだとか、そのへんを歩あるいているご用よう聞ききなどに、こういう自動じどう車しゃを見みなかったかと、たんねんに聞ききこみをやり、なんの手てがかりもないばあいは、またもとの電車でんしゃ道どうに引ひきかえして、つぎの四辻よつつじをさがすというふうに、なかなか組織そしき的てきな捜査そうさ方法ほうほうをとって、いつまでもあきることなく、歩あるきまわるのでした。

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