← Library‹ 宇宙怪人 海底戦争

少年しょうねんたちは、その声こえに、いそいで、ヘッド・ライトのひかりのほうを見みました。

潜航せんこう艇ていのへさきの十じゅうメートルほどさきです。あのみにくい怪物かいぶつが、おそろしい早はやさでおよいでいるのが、小ちいさく見みえました。

コウモリのようなはねが、みじかく、二ふたつにおれていたわけが、わかりました。あのはねが、さかなのヒレと同おなじはたらきをしているのです。はねで水みずをかいてすすむのです。そのうえ、手てと足あしに水みずかきがあります。その水みずかきでも、カエルのように水みずをかいています。大おおきなはねのほかに、水みずかきまで、力ちからをあわせるのですから、どんなさかなだって、かなわないほど、早はやいのです。

人間にんげんのおよぎや、カエルのおよぎとは、まるでちがった、奇妙きみょうなおよぎかたでした。からだが、横よこむきになったり、上うえむきになったり、ときにはコマのように、クルクルまわりながら、すすむのです。アクロバットでも見みているようです。

怪人かいじんは、潜航せんこう艇ていが追おってくることを知しって、ヘッド・ライトのひかりのそとへ、出でようとして、右みぎに左ひだりに、身みをかわします。こちらは、それを見みうしなわぬようにカジをとらねばなりません。運転うんてん士しの虎とら井い博士はかせのほねおりは、なみたいていではないのです。

「いいか、見みてごらん。いま、あいつをつかんでみせるから。」

博士はかせのどなる声こえが、聞きこえてきました。つかむといって、どうしてつかめるのでしょう。小林こばやし君くんは、ふしぎに思おもって、じっと怪人かいじんのほうを見みつめていますと、エンジンのひびきが、いちだん高たかくなって、艇ていは、グンと速度そくどをまし、怪人かいじんめがけて突進とっしんしました。

怪人かいじんとのへだたりが、みるみる、せばまっていきました。そして、あいだが二にメートルほどになったとき、アッというような、ふしぎなことが、おこりました。

シューッという、へんな音おとがしたかと思おもうと、潜航せんこう艇ていのへさきから、ながい鉄てつの棒ぼうが、おそろしい早はやさでとびだしました。そして、その棒ぼうのさきが、まるで人間にんげんの指ゆびのように、パッとひらいて、怪人かいじんに、つかみかかったのです。

ひらいた鉄てつの指ゆびは、あいてのからだにさわると、自動じどう的てきにギュッとしぼんで、怪人かいじんの足あしをつかみました。

「しめた。つかまえたぞ。」と、思おもったしゅんかん、怪人かいじんも、さるものです。つかまれた足あしを、ひじょうなすばやさで、鉄てつの指ゆびから、ひきぬいてしまいました。そして、死しにものぐるいのおよぎかたで、たちまち、ひかりのそとへ、逃にげさりました。

それから二十にじゅう分ふんほどのあいだ、じつにはげしい戦たたかいが、くりかえされました。宇宙うちゅう怪人かいじんと潜航せんこう艇ていとの海底かいてい戦争せんそうです。

あいては身みがるなからだ。こちらは、ずうたいの大おおきな潜航せんこう艇ていです。いくら虎とら井い博士はかせの操縦そうじゅうがうまくても、怪人かいじんを、たえず、ひかりの中なかにとらえておくことはできません。しかし、とうとう、見みうしなったかと思おもっていると、ひょっこり、怪人かいじんのほうで、ひかりのなかに、すがたをあらわします。どうやら、あいては、こちらをからかっているらしいのです。

潜航せんこう艇ていは、二に度ども三さん度ども、さっきと同おなじような、ひじょうな速度そくどを出だして、怪人かいじんにせまり、そのたびに、鉄てつの指ゆびをつきだすのですが、どうしても、あいてを、つかむことができません。つかんだと思おもっても、スルスルと、ぬけられてしまうのです。

「よし、それじゃあ、武器ぶきをかえよう。なるべく、きずつけないで、とらえようと思おもったが、もう、しかたがない。」

虎とら井い博士はかせは、そんなひとりごとをつぶやきながら、席せきの横よこの、べつの発射はっしゃ装置そうちに手てをかけました。

またしても、強つよいエンジンのひびき、艇ていの突進とっしん。そして、怪人かいじんが、へさきのすぐそばまで近ちかづいたとき、シューッという発射はっしゃの音おと。

展望てんぼうガラスから見みていると、こんどは、するどい、ヤリのほさきのようなものが、二にメートルあまり、目めにもとまらぬ早はやさで、サッと、つきだされました。

そのヤリが、からだにささったら、怪人かいじんは、死しんでいたかもしれません。しかし、こんども怪人かいじんのほうが、すばやかったのです。ヤリのほさきは、もうちょっとのところで、まとをはずれました。怪人かいじんは、地球ちきゅうの生いきものには、想像そうぞうもできないような、すばやさをもっていました。それをたのみにして、潜航せんこう艇ていをからかっているのですから、どうすることもできません。

それから、また、怪人かいじんと潜航せんこう艇ていとの、死しにものぐるいの、追おっかけっこがはじまりました。そして、なんども、怪人かいじんに追おいついて、ヤリのほさきをくりだすのですが、一いち度ども、あたりません。さすがの虎とら井い博士はかせも、つかれきってしまいました。

さっきの鉄てつの指ゆびや、ヤリのほさきは、どこからとびだすのでしょう。小林こばやし君くんは、それを考かんがえてみて、ひとりでうなずきました。コンクリートの部屋へやのガラス窓まどから見みた、大だい怪魚かいぎょには、二ふたつの光ひかる目玉めだまの下したに、口くちのような、穴あながありました。あれが、発射はっしゃ口くちだったのです。あの穴あなから、鉄てつの棒ぼうや、ヤリが、つきだされているに、ちがいありません。

さて、怪人かいじんはどうしたのでしょう。いくらカジをまわしてさがしても、ヘッド・ライトの中なかへ、すがたをあらわしません。もう、からかうことをよして、逃にげてしまったのでしょうか。

いや、そうではありません。しゅうねんぶかい怪物かいぶつは、もっとおそろしい、いたずらをはじめたのです。

小林こばやし少年しょうねんは、前まえのほうばかり見みていましたが、その目めのすみに、なにかしらモヤモヤと動うごくものが、感かんじられました。オヤッと思おもって、そのほうを見みあげると、展望てんぼうガラスの天井てんじょうに、うす黒ぐろい大おおきなものが、くっついていました。ひかりのほうばかりを見みていたので、そのうすぐらいところは、よく見みわけられないのです。

展望てんぼうガラスに、大おおきなタコが、すいついたのでしょうか。なんだか、そんなふうな、いやーな気持きもちがしました。じっと見みていると、そのものが、だんだんハッキリしてきました。

タコではありません、人間にんげんと同おなじぐらいの頭あたまがあります。その頭あたまのかっこうが、どこか、鳥とりに似にているのです。ギョッとして、よく見みると、水みずかきのある大おおきな手てが、ペッタリとガラスにすいついているではありませんか。小林こばやし君くんは、せなかに水みずをかけられたように、ゾーッとしました。助手じょしゅの美び少年しょうねんも、それに気きがついたのでしょう。あわてて、台だいをおりると、博士はかせのほうにむいてさけびました。

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