← Library‹ 宇宙怪人 山中の大円盤

ラジオでも、いちはやく、それをつたえましたが、夕刊ゆうかんにはもっと、くわしい記事きじがのりました。

空そらとぶ円盤えんばん、丹沢たんざわ山中さんちゅうに墜落ついらく

大だい円盤えんばんより有翼ゆうよく怪人かいじんあらわる

きこり松下まつした岩男いわお氏しの体験たいけん談だん

ある夕刊ゆうかんには、こんな見出みだしがついていました。

銀色ぎんいろにかがやく、直径ちょっけい五ごメートルもある大だい円盤えんばんの一ひとつが、神奈川かながわ県けん、丹沢たんざわ山やまと塔とうガ嶺みねの中間ちゅうかん、きこりさえはいったことのない、大だい森林しんりんの中なかへ墜落ついらくしたというのです。一いちキロもへだたった場所ばしょで、ただひとり仕事しごとのあとかたづけをしていた、きこりの松下まつした岩男いわおという男おとこが、天地てんちもくつがえるような大だい音響おんきょうにおどろいて、こわごわそこへ近ちかづいてみますと、銀色ぎんいろの巨大きょだいなおさらを、二ふたつあわせたようなかたちの、えたいのしれぬ、ばけものが、森もりの大木たいぼくをおしたおして、そこに横よこたわっていたのです。

きこりは、夢ゆめにも見みたこともない、ふしぎな、巨大きょだいなもののおそろしさに、気きもてんとうして、そのまま逃にげかえろうとしましたが、やっと、おもいかえして、遠とおくの方ほうから、大木たいぼくのかげに身みをかくし、しばらく、ようすを見みていたといいます。

夕刊ゆうかんには、きこり松下まつした君くんの写真しゃしんが、大おおきく出でていましたが、四十よんじゅう歳さいぐらいの、顔かおじゅうに、ぶしょうひげをはやした、目めも鼻はなも口くちも大おおきい、いかにも豪胆ごうたんそうな男おとこでした。

この山男やまおとこのようなきこりが、気きをうしなうほど驚おどろいたというのですから、いかにおそろしいできごとだったか、そうぞうがつくではありませんか。

そのころは、もう日ひがくれきって、ことに山やまの中なかですから、ひじょうに暗くらくなっていましたが、銀色ぎんいろの大だい円盤えんばんが、発光はっこう体たいのようにひかっていたので、あたりが、うすぼんやりと見みえたといいます。

じっと、しんぼうして、見みていますと、しばらくは、なにごともおこりませんでしたが、やがて、どこからともなく、ブーンという、なにかの機械きかいが回転かいてんしているような、かすかな音おとがひびいてきました。

いよいよ、きみがわるくなりましたが、きこりは、ナニクソッとふみこたえて、なおも、ひとみをこらしていました。

すると、大だい円盤えんばんが、かすかに、ジリリ、ジリリと、動うごくような気きがしました。はじめのうちは、どこが動うごいているのか、よくわかりませんでした。やがて、大おおきなおさらがかさなりあっているような、その上うえのほうのさらが、ちょうど、貝かいがらが口くちをひらくように、すこしずつ、すこしずつ、上うえのほうへ、ひらいていることがわかりました。

中なかに、だれか人間にんげんがいて、もちあげているのでしょうか。いや、そんなことは、とても、できません。直径ちょっけい五ごメートルもある金属きんぞくのおさらですから、人間にんげんの力ちからで、もちあがるものではありません。機械きかいじかけで、ふたが、ひらいているのです。ブーンという音おとは、その機械きかいの音おとにちがいないのです。

一いちセンチ、二にセンチ、三さんセンチ、重おもい金属きんぞくのふたは、動うごいているか動うごいていないか、わからぬほどの速度そくどで、しかし、かくじつに、ひらいていきます。

ふたのすきまが二十にじゅうセンチほどになったとき、そのすきまの中なかに、なにか黒くろいものが、動うごいているのが見みえました。うすぐらいので、ハッキリはわかりませんが、なにかの生いきものです。動物どうぶつです。動物どうぶつが、すきまから、そとの世界せかいをのぞいているのです。

きこりは、なんともいえない、いやらしいものだったと、いっています。そいつには二ふたつの目めのようなものがありました。しかし、人間にんげんの目めではありません。サルやオオカミやキツネの目めでもありません。きこりの知しっている動物どうぶつでは、いつか山中さんちゅうで出であった、うわばみの目めに、どこかしら似にていたといいます。大蛇だいじゃの目めなのです。

暗くらいので、そのほかのことは、よくわかりませんが、きこりは、いよいよ、こわくなって、こんどこそ逃にげだそうと、おもったそうです。しかし、もう逃にげることもできなくなっていました。おそろしいばけものに、みいられたように、足あしが動うごかなくなっていたのです。

それから、しばらくして、大だい円盤えんばんのふたのすきまが、五十ごじゅうセンチほどまで、ひらいたとき、中なかにうごめいていた生いきものが、いきなり、そとへ、とびだしてきました。

それを見みたとき、きこりは、あまりのおそろしさに、気きをうしないそうになったといいます。

それははねのはえた大おおトカゲのような怪物かいぶつでした。顔かおは、鳥とりに似にていたといいます。それにヘビのような、きみのわるい目めが、光ひかっていたのです。かたちは人間にんげんに似にて、手ても足あしもあり、立たって歩あるくこともできるのですが、そのからだぜんたいが、巨大きょだいなトカゲなのです。顔かおもからだも、むらさきとみどりと黄色きいろのしまになって、それがヌメヌメと銀色ぎんいろに光ひかっているのです。そして、せなかには、コウモリのような、大おおきなはねがついていたといいます。

その怪物かいぶつは、円盤えんばんの中なかからはいだして、地上ちじょうに立たつと、ヘビの目めで、ジロリジロリと、あたりを見みまわしていましたが、やがて、パッと、大おおきなはねをひろげました。そして、二に、三さんど、ハタハタとはばたきをしたかとおもうと、スーッと空そらへ飛とびたっていったのです。

そのはばたきの、すさまじかったこと。二十にじゅうメートルもはなれたところに立たっていたきこりの顔かおに、はばたきの風かぜが、あらしのように、サーッと、吹ふきつけたといいます。

気きをうしなったように、みうごきもできなくなっていたきこりは、そのはげしい風ふうにうたれて、やっと気きをとりなおし、あとをも見みずに、いちもくさんに逃にげかえったのでした。

ふもとの村むらにたどりついて、そのことを話はなしたものですから、さあ、たいへんなさわぎになりました。村むらのちゅうざい所ところから、警察けいさつ署しょへ、それから、国警こっけい本部ほんぶへと、電話でんわでほうこくされ、警官けいかん隊たいが、ふもとの村むらへかけつける。それにつれて、各かく新聞しんぶん社しゃからも、おおぜいの記者きしゃや写真しゃしん班はんがあつまってくる。消防しょうぼう隊たいや青年せいねん団だんも、かりだされる。そして、その一団いちだんが、きこりを、道どうあんないにして、大だい円盤えんばんのおちたという山中さんちゅうへ、わけのぼった、というところで、夕刊ゆうかんの記事きじはきれていました。ふかいふかい山やまのことですから、夕刊ゆうかんのしめきりまでに、そうさくの結果けっかがわからなかったのです。

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