← Library‹ 宇宙怪人 銀仮面

北村きたむらさんは、明智あけち探偵たんていの顔かおを見みつめながら、さらに話はなしつづけます。

「明智あけち先生せんせい、あいつは、なぜ、日本にっぽん語ごをならったのでしょう。ひと月がつもかかって、あんなに熱心ねっしんに、ぼくたちのことばをならったのでしょう。ああ、おそろしいことです。それには、やつの、ふかい、たくらみがあったのです。

ぼくが、とりこになってから、半月はんつきほどのちのことでした。もうそのころは、日本にっぽん人にんのいろいろな服装ふくそうのことや、どこに何なんを売うっているというようなことを、ぼくにおそわって、すっかり知しっていたのですが、ひとりで、どこかへ出でていって、五、六ごろく時間じかんも、るすにしたことがあります。むろん、ぼくは、そのすきに、円盤えんばんから逃にげだそうと、いろいろ、やってみたのですが、円盤えんばんの口くちは、どうしてもひらきません。しかたがないので、そのまま、あいつの帰かえってくるのを、まっていたのです。

すると、あいつは、大おおきな荷物にもつをかかえて帰かえってきました。それは、なんだったと思おもいますか。服ふくですよ。背広せびろが二ふたつ、オーバーが二ふたつ、それから、警官けいかんの服ふくと帽子ぼうしが、ひとそろい。たぶん、東京とうきょうか横浜よこはまの、どこかの古着ふるぎ屋やから、ぬすみだしてきたのでしょう。

それからというもの、三み日かに一いち度どぐらい、やつは、どこかへ、出でていくのです。そして、そのたびごとに、警備けいび隊たい員いんの制服せいふくだとか、労働ろうどう者しゃの服ふくだとか、絹きぬの和服わふくだとか、その上うえにきるマントだとか、あらゆる服装ふくそうを持もって帰かえるのです。円盤えんばんの中なかは、まるで、芝居しばいの衣装いしょう部屋へやのようになってしまいました。

そして、ある朝あさのことです。ぼくが円盤えんばんの中なかのベッドで、目めをさましますと、すぐ目めの前まえに、ひとりの人間にんげんがつっ立たっていたではありませんか。そうです。あのトカゲとコウモリの、あいの子このような宇宙うちゅう怪人かいじんが、この地球ちきゅうの人間にんげんに化ばけたのです。変装へんそうしたのです。

洋服ようふくの上着うわぎのせなかにさいくをして、れいのコウモリのはねだけが、そとへ出でるようにしてありました。頭あたまには、ソフト帽ぼうを、まぶかにかぶっていました。その下したに、どんな顔かおがあったと思おもいますか。あの鳥とりのような顔かおではありません。人間にんげんの顔かおなのです。しかも、その顔かおが、銀色ぎんいろにピカピカ光ひかっていたのです。

人間にんげんの顔かおとソックリのかたちをした、銀ぎん仮面かめんなのです。目めのところは、くりぬいてあって、そのおくから、怪物かいぶつのヘビの目めが、きみ悪わるく、のぞいていました。口くちのところにも、穴あながあいていました。両りょうはじがギュッと上うえにあがった、三日月みかつきがたの黒くろい穴あなです。つまり、銀ぎんのお面めんが、ニヤリと笑わらっているのです。いつでも、どんなときでも、笑わらっているのです。

あとでわかったのですが、その仮面かめんは、顔かおのまえだけのものではなくて、頭あたまからスッポリかぶるようになっていました。銀色ぎんいろの鉄てつ仮面かめんなのです。この仮面かめんは、宇宙うちゅう怪人かいじんが、自分じぶんでつくったものでした。あのはがねのようにかたくて、しかも、自由じゆう自在じざいにまがる、星ほしの世界せかいの金属きんぞくでつくったのです。そういう、ふしぎな金属きんぞくですから、仮面かめんをつくるのも、わけのないことでした。怪人かいじんは、ぼくの知しらぬまに、大だい円盤えんばんの中なかの工作こうさく場じょうで、それをつくりあげていたのです。

ぼくは、洋服ようふくのせなかに、はねのはえている銀ぎん仮面かめんの怪物かいぶつを見みて、いちじはギョッとしましたが、すぐ宇宙うちゅう怪人かいじんの変装へんそうとわかったので、

「きみは、そんな変装へんそうをして、いったい、なにをするつもりだ。」

と、たずねてやりました。

『ワカラナイカネ。』

あいては、銀ぎん仮面かめんの三み日か月がつがたの口くちで、ニヤニヤ笑わらっているばかりです。

『さては、きみは、そんな日本にっぽん人にんの変装へんそうをして、東京とうきょうの町まちへ、まぎれこむつもりだな。そして、なにをしようというのだ。地球ちきゅうのようすを――日本にっぽんのようすを、さぐるのか。スパイをするのか。』

『ソウカモシレナイ。』

怪人かいじんは、やっぱり笑わらったままです。

『スパイをするだけでなくて、何なんか、ぬすみだすのじゃないか。地球ちきゅうの人間にんげんを、ほりょにして、星ほしの世界せかいへつれていこうというのじゃないか。』

『ヤメナサイ。キミハ、ハイニナルノガ、コワクナイノカ。』

そう言いわれると、ぼくはもう、いちごんもありません。あの金属きんぞくのスポイトのようなものから、スーッと煙けむりがでて、その前まえにいたサルが、一いちしゅんかんに、灰はいになってしまったことを、思おもいだしたからです。灰はいにされてはたまりません。ぼくは、ギョッとして、口くちをつぐんでしまいました。

それからというもの、ぼくは、なんとかして円盤えんばんの中なかから、逃にげだそうと、たえず、すきをねらっていたのですが、きのうの朝あさ、やっと、そのおりがありました。怪人かいじんが、円盤えんばんを出でていったあとが、ひらいたままになっていたのです。あんな、ぬけめのないやつでも、ウッカリすることがあるんですね。

ぼくは、いきなり、そこからはいだして、森もりの中なかへかくれました。そして、おいしげった、木この葉はの下したを、はうようにして逃にげたのです。道みちにまよいましたが、一いち日にちがかりで、やっと、夜よるになって、ふもとに、たどりついたのです。

その晩ばんは、村人むらびとの家いえにとめてもらい、よく日ひ、電車でんしゃの駅えきまで歩あるいて、やっと、東京とうきょうへかえってきました。円盤えんばんのことも、怪人かいじんのことも、だれにも言いいませんでした。いまごろは、ぼくが逃にげたことを知しって、円盤えんばんを、べつの場所ばしょへ、うつしたにちがいないと思おもったからです。それに、ぼくは、むがむちゅうで、逃にげたのですから、円盤えんばんのあったところへ、あんないしろ、といわれても、とてもわからないと思おもったからです。

それよりも、はやく東京とうきょうに帰かえって、警視けいし庁ちょうにうったえ、新聞しんぶん社しゃに知しらせ、怪人かいじんが日本にっぽん人にんに変装へんそうして、どこにあらわれるかもしれないということを、日本にっぽんじゅうの人々ひとびとに知しらせなければならないと考かんがえたのです。」

北村きたむらさんのながい話はなしが、やっと、おわりました。しかし、だれも口くちをきくものがありません。あまりに、おそろしい話はなしなので、なんと言いっていいか、わからなかったからです。

しばらくすると、名めい探偵たんていの助手じょしゅの小林こばやし少年しょうねんが、ふと気きがついたように、たずねました。

「たべものは、どうしていたのですか。怪人かいじんが、どこかから持もってきてくれたのですか。そして、怪人かいじんも、やはり、ぼくたちと同おなじように、食事しょくじをするのですか。」

すると、北村きたむらさんは、もっともな質問しつもんだ、というように、うなずいてみせて、

Click a word · hold for the whole sentence 0%