← Library‹ 灰色の巨人 少女のゆくえ

「にじの宝冠ほうかん」をかぶった少女しょうじょが、神社じんじゃの森もりのなかへ逃にげこんだときには、神社じんじゃの表門おもてもんにも、うら門もんにも、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんたちが見みはっていたのですから、神社じんじゃの外そとへは、ぜったいに逃にげられなかったはずです。少女しょうじょは神社じんじゃの森もりの中なかの、どこかに、かくれているにちがいないのです。

そこで、少年しょうねんたちは、さいごに、その少女しょうじょの捜索そうさくをすることになりましたが、そのときは、もう日ひがくれて、あたりは、まっ暗くらになっていました。ことに神社じんじゃの中なかは、大おおきな木きがしげっていて、ところどころに、街灯がいとうが立たっているばかりですから、この捜索そうさくは、じつにこんなんです。

小林こばやし団長だんちょうは、神社じんじゃの表門おもてもんと、うら門もんにいる五ご人にんずつの団員だんいんには、そのまま見みはりをさせておいて、あとの九きゅう人にんの団員だんいんを、うら門もんの外そとへ集あつめました。

「これからサーカスの女おんなの子こを、さがすんだよ。みんな探偵たんてい七ななつ道具どうぐの中なかの、懐中かいちゅう電灯でんとうを出だして。」

と命めいじました。探偵たんてい七ななつ道具どうぐというのは、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんが、いつも身みにつけている小ちいさい道具どうぐ類るいで、万まん年ねん筆ひつ型がたの望遠ぼうえん鏡きょう、虫むしめがね、磁石じしゃく、万能ばんのうナイフ、黒くろいきぬ糸いとのなわばしご(まるめると、ひとにぎりになってしまいます。)小型こがたの手帳てちょう、万まん年ねん筆ひつ型がたの懐中かいちゅう電灯でんとうなどです。

少年しょうねんたちは、その万まん年ねん筆ひつ型がたの懐中かいちゅう電灯でんとうをとりだして、スイッチをおしました。すると、小林こばやし団長だんちょうのをあわせて、十じゅう個この豆まめ電灯でんとうが、ほしのように光ひかって、そのへんがパッと明あかるくなったのです。

そのとき、ひとりの少年しょうねんが、前まえにでて、小林こばやし団長だんちょうに、よびかけました。

「団長だんちょう、いくら懐中かいちゅう電灯でんとうがあっても、あの広ひろい、まっ暗くらな森もりの中なかを、さがすのは、むずかしいと思おもいます。こんやは見みはりのものだけのこしておいて、あすの朝あさ、捜索そうさくしたほうがいいと思おもいます。」

いかにも、もっともなことばでした。広ひろい森もりの中なかを、二十にじゅう人にんの少年しょうねんで、さがすのは、むりなはなしです。すると、小林こばやし団長だんちょうがそれに答こたえました。

「そう思おもうのは、もっともだが、この捜索そうさくは夜よるのほうがいいんだよ。それには、わけがあるんだ。ぼくは明智あけち先生せんせいから、あることを、おそわっているんだよ。だいじょうぶだから、ぼくの命令めいれいのとおりに、やってくれたまえ。」

そういわれると、だれも、異議いぎをとなえるものはありません。そこで、小林こばやし少年しょうねんは、つぎのように、さしずをしました。

「みんな懐中かいちゅう電灯でんとうを消けして、ぼくについてくるんだよ。どんなことがおこっても、ぼくがつけろというまでは、懐中かいちゅう電灯でんとうをつけてはいけない。わかったね。それから、神社じんじゃの中なかの、ある場所ばしょへいったら、みんなが、はなればなれになって、木きのかげにかくれて、ぼくがよぶまで、じっと、待まっているんだよ。へんなことがおこっても、むやみに、とびだしちゃいけない。いいかい。さあ、それじゃあ、出発しゅっぱつ!」

小林こばやし団長だんちょうをあわせて十じゅう人にんの少年しょうねんが、しずかに神社じんじゃのうら門もんをはいっていきました。

うら門もんには、五ご人にんの少年しょうねん団だん員いんと、三さん人にんの警官けいかんが、見みはりばんをつとめていました。小林こばやし団長だんちょうは、その人ひとたちにむかって、

「きみたちは、やっぱり、ここで見みはっててくれたまえ。おまわりさんにも、おねがいします。女おんなの子こは、ぼくたちで、きっと、見みつけだしておめにかけます。もし見みつけたら、よびこの笛ふえをふきますから、そうしたら、おまわりさんたちも、かけつけてください。おねがいします。」

といいのこして、森もりの中なかへはいっていきました。警官けいかんたちは、中村なかむら警部けいぶから、まえもって、そのことを聞きいていましたので、小林こばやし少年しょうねんのことばに、うなずいて見みせました。

十じゅう人にんの少年しょうねんは、暗くらい森もりの中なかを、足音あしおとをたてないようにして、社殿しゃでんの方ほうへすすんでいきます。

やがて、社殿しゃでんの前まえに出でましたが、外そとに大おおきな石いしのコマイヌが、ふたつ立たっています。先さきにたって歩あるいていた小林こばやし団長だんちょうは、うしろをむいて、ささやき声ごえでいいました。

「みんな、ばらばらになって、かくれるんだ。そして、あのコマイヌを、よく見みているんだ。長ながくかかるかもしれない。でも、しんぼうづよく待まっているんだよ。そのうちに、きっと、びっくりするようなことがおこるからね。しかし、なにがおこっても、ぼくが、命令めいれいするまでとびだしちゃいけないよ。」

そして、みんな、バラバラになれという手てまねをしました。少年しょうねんたちは、それぞれ、コマイヌのそばの木きのみきのうしろへ、かくれました。小林こばやし団長だんちょうも、社殿しゃでんの高たかい床下ゆかしたに、身みをかくして、じっと、ふたつのコマイヌをみつめていました。

コマイヌというのは、むかし中国ちゅうごくからつたわってきた、神かみさまのばんをする石いしのイヌですが、イヌといっても、おまつりのシシのような、おそろしい顔かおをしています。この神社じんじゃのコマイヌは人間にんげんほどの大おおきさで、まえ足あしを立たて、うしろ足あしをまげて、四角しかくな石いしの台だいの上うえに、いかめしく、すわっています。石いしでそういうかたちが、ほってあるのです。

少年しょうねんたちは、めいめいの、かくれ場所ばしょから、そのふたつのコマイヌを、じっと見みつめていました。

長ながい長ながいあいだ、なにごともおこりませんでした。あたりはまっ暗くらで、しいんと死しんだように、しずまりかえっています。遠とおくの街灯がいとうの光ひかりで、ぼんやりとコマイヌが見みえています。それを、じっと見みていると、なんだか、えたいのしれない、まっ黒くろな怪物かいぶつのように、おもわれてきます。

みんな、はなればなれになっているものですから、少年しょうねんたちは、だんだん、こわくなってきました。うしろのやみの中なかから、おそろしいばけものが、しのびよってくるのではないかと、せなかが、ゾーッと寒さむくなってくるのでした。

そればかりではありません。黒くろい怪物かいぶつのようなコマイヌが、いきなり動うごきだして、あのシシとそっくりのこわい顔かおで、こちらへ、とびかかってくるのかと思おもうと、いよいよ、おそろしくなってきました。

もう夜よるが明あけるのではないかと、思おもうほど、長ながいあいだ待まちました。でも、ほんとうは、一いち時間じかんもたっていなかったのです。

そのとき、じつにおそろしいことが、おこりました。

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