← Library‹ 魔法博士 魔術の種

そのとき、黄金おうごん怪人かいじんが、三日月みかつきがたの黒くろい口くちを、キューッとまげて、きみの悪わるい声こえで笑わらいました。

「ウヘヘヘヘ……、小林こばやし団長だんちょう、とうとう、つかまったね。わしは、きみのくるのを、いまかいまかと、待まちかまえていたんだよ。」

小林こばやし君くんたち三さん少年しょうねんは、黒くろ覆面ふくめんの男おとこにおしやられて、黄金おうごん怪人かいじんのこしかけている前まえの、黄金おうごんのテーブルのそばに立たたされていました。三さん人にんは、ただ、恐おそろしい怪人かいじんの顔かおを、見みつめているばかりです。まだ、ものをいう力ちからもありません。

「フフフフ……、驚おどろいたか。わしは、かならず、約束やくそくをまもる。いつか、わしは名めい探偵たんてい明智あけち小五郎こごろうを盗ぬすみだして、わしのすみかに閉とじこめてみせると、約束やくそくした。また、そのてはじめに、明智あけち探偵たんていのだいじな助手じょしゅの小林こばやし少年しょうねんを、とりこにしてみせると約束やくそくした。その約束やくそくのはんぶんを、いま実行じっこうしたのだ。小林こばやし君くん、きみはもう、わしのとりこになったのだよ。そして、このつぎは明智あけち先生せんせいのばんだ。ウヘヘヘヘ……。」

小林こばやし君くんは、まだ、なにもいいません。ただ、じっと、怪人かいじんのぶきみな顔かおを、にらみつけているばかりです。

「ところで、小林こばやし君くん、きみのポケットにB・Dバッジが、たくさんはいっているはずだね。それを、ここへだしてくれたまえ……。おい、この子このポケットを、さがすんだ。」と、うしろに立たっていた黒くろ覆面ふくめんの部下ぶかに、命令めいれいしました。

小林こばやし君くんは、じぶんで、ポケットから、三十さんじゅう個このB・Dバッジをつかみだして、黄金おうごんのテーブルの上うえに、ザラッと、なげだしました。いやだといっても、黒くろ覆面ふくめんに、とられるにきまっているからです。

「うん、よしよし、これがきみたち少年しょうねん探偵たんてい団だんの目めじるしだね。だれかにつれさられるとき、これを、ひとつひとつ、道みちに落おとしておいて、あとから、さがしにくる人ひとの目めじるしにしようというわけだね。フフフ……、どうだ、よく知しっているだろう。じつは、わしも、B・Dバッジを、すこしばかり持もっているのだよ。これを見みたまえ。」

黄金おうごん怪人かいじんは、そういって、どこからか、ひとにぎりのB・Dバッジをとりだし、それをテーブルの上うえに、バラバラと、こぼしました。たしかに、少年しょうねん探偵たんてい団だんのバッジです。これは、いったい、どうしたというのでしょう。怪人かいじんがB・Dバッジを、こんなにたくさん持もっているなんて、おもいもよらないことです。

「ウフフフフ……、ふしぎそうな顔かおをしているね。ほら、みたまえ、にせものじゃないよ。ちゃんと、裏うらに団員だんいんの名なまえが、ほりつけてある。読よんでみるよ。イ、ノ、ウ、エ、うん、井上いのうえだな。それから、こちらは、ノ、ロ、野呂のろだよ。ウフフフ……、どうして、このふたりのバッジが、わしの手てに、はいったとおもうね。」

怪人かいじんは、三日月みかつきがたの口くちを、へんなふうにゆがめて、さもたのしそうに笑わらいました。

「おい、あのふたりを、ここへ、ひっぱってくるんだ。」

怪人かいじんは、黒くろ覆面ふくめんの部下ぶかに命めいじました。部下ぶかは、うなずいて、部屋へやの外そとへ出でていきましたが、まもなく、ふたりの少年しょうねんをつれて、はいってきました。

それを見みると、小林こばやし少年しょうねんは、おもわず、「あっ。」と声こえをたてました。じつにふしぎなことが、おこったからです。

はいってきた、ふたりの少年しょうねんも、びっくりして立たちすくんでいます。みんな、じぶんの目めをうたがっているのです。こんな、ふしぎなことが、あるものでしょうか。夢ゆめを見みているのではないでしょうか。

はいってきた、ふたりの少年しょうねんというのは、井上いのうえ君くんとノロちゃんだったのです。そして、こちらに小林こばやし君くんとならんでいるのも、井上いのうえ君くんとノロちゃんです。井上いのうえ君くんが、ふたりになったのです。ノロちゃんも、ふたりになったのです。

いま、はいってきたほうの井上いのうえ君くんが、おずおずと、もうひとりのじぶんに近ちかづいてきました。そのあとから、ノロちゃんも、井上いのうえ君くんのうしろにかくれるようにして、こちらへ、やってきます。

井上いのうえ君くんと井上いのうえ君くんが、一いちメートルの近ちかさで、おたがいに向むきあって立たちました。じっと、顔かおを見みあわせています。

井上いのうえ君くんは、いま、じぶんは、大おおきな鏡かがみの前まえに、立たっているのではないかと思おもいました。じぶんの前まえに立たっているやつは、顔かおも服ふくも、なにからなにまで、じぶんとそっくりなのです。鏡かがみの前まえに立たったのと、まったくおなじです。

ノロちゃんも、もうひとりのノロちゃんの前まえに、立たっていました。

「きみ、いったい、だれなの? ぼく、ふたごの兄弟きょうだいなんて、ないんだがなあ。きみとぼくと、まるで、ふたごみたいだねえ。」

はいってきたほうのノロちゃんが、たまげたような顔かおをして、そんなことを、つぶやきました。すると、怪人かいじんは、また、笑わらいだして、

「ウフフフ……、びっくりしたかい? こんなに、よくにた子こどもを、ふたりも、さがしだすのは、よういなことじゃなかったよ。どちらかが、にせものなんだ。え、小林こばやし君くん、きみは、いったい、どちらがほんもので、どちらが、にせものだとおもうね。」

と、いたずらっぽく、たずねるのでした。

「わかった! いままで、ぼくと、いっしょにいた、このふたりは、にせものです。それが、きみの魔法まほうの種たねだったのだ。」

小林こばやし君くんが、ほおをまっかにして叫さけびました。魔法まほう博士はかせのトリックが、わかってきたように、思おもったのです。

「ウフフフ……、さすがは、明智あけち探偵たんていの弟子でしだ。きみは、頭あたまのはたらきが、すばやいね。わしは、数十すうじゅう人にんの部下ぶかに、東京とうきょうじゅうを歩あるきまわらせて、このふたりをさがしだした。だが、いくら、にているといっても、ソックリとはいかない。それで、わしは、このふたりに、とくいの化粧けしょうをしてやった。つまり変装へんそう術じゅつだね。ちょっと見みたのでは、わからないが、このふたりの顔かおには、わしの変装へんそう術じゅつが、ほどこしてある。そのおかげで、きみたちを、だますことができたんだよ。」

「じゃあ、ほんとうの井上いのうえ君くんとノロちゃんは、ここに閉とじこめられていたのですね。だから、イノウエとノロとほったB・Dバッジを、きみが持もっていたんだ。そうでしょう?」

小林こばやし少年しょうねんが、息いきをはずませて、いいました。

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