← Library‹ 魔法博士 小林少年の知恵

黄金おうごん怪人かいじんは、やっと、笑わらいやむと、しばらくだまっていましたが、じぶんの顔かおをにらみつけている小林こばやし君くんを、見みかえして、しずかにたずねました。

「きみには、わしの魔法まほうの種たねが、すっかりわかったかね?」

「うん、わかっている。ぼくには、もう、なにもかも、わかっているよ。」

小林こばやし少年しょうねんは、自信じしんありげに答こたえました。かわいい目めが、キラキラ光ひかっています。

「ほう、えらいもんだ。それじゃ聞きくがね。わしは、なぜ井上いのうえとノロを、つかまえたんだろうね。」

「それは、ふたりのかえだまを、つくるためさ。」

「なぜ、かえだまを、つくったんだね。」

「山下やましたさんの蔵くらの中なかから、グーテンベルクの聖書せいしょを、盗ぬすむためさ。」

「かんしん、かんしん、きみは、そこまで気きがついたのか。で、どうして、あの聖書せいしょを盗ぬすんだんだね。」

「あのとき、ぼくと、山下やました君くんのおとうさんと、山下やました君くんのほかに、四よん人にんの少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんが、がんばっていた。その四よん人にんの中なかに、にせものの井上いのうえ君くんと、ノロちゃんが、まじっていたのだ。そして、たぶん、にせの井上いのうえ君くんが、黄金おうごん怪人かいじんにばけたんだ。あの金色きんいろの衣装いしょうは、おりたためば、小ちいさくなるにちがいない。にせの井上いのうえ君くんは、それを、きたり、ぬいだりして、みんなをごまかしたんだ。」

「うん、そのとおりだ。あのときに、つかった金かねの仮面かめんや、よろいは、ビニールに金かねのこなをぬったもので、蔵くらの中なかのうす暗ぐらい電灯でんとうだから、ごまかせたんだよ。にせの井上いのうえは、その金かねの衣装いしょうを、二にくみ持もっていた。子こどもの大おおきさのと、おとなの大おおきさのとね。おとなの衣装いしょうには、足あしにタケウマのような棒ぼうがついていて、せいが高たかくなるんだ。それを、電灯でんとうの消きえているまにきかえて、うす暗ぐらい蔵くらのすみに立たって、みんなを、おどかしたんだよ。ぬいだときには小ちいさくたたんで、本棚ほんだなの大おおきな本ほんのうしろにかくしておいたのだ。あのとき、だれも本ほんのうしろなど、さがさなかったからね。黄金おうごん怪人かいじんは、煙けむりのように消きえうせてしまったとしか、考かんがえられなかったのだよ。」

「蔵くらの電灯でんとうを、消けしたり、つけたりしたのは、にせのノロちゃんのほうだね。それから、電灯でんとうが消きえているすきに、山下やました君くんのおとうさんの手てから、聖書せいしょの桐きりの箱はこをうばいとったのも、にせのノロちゃんだったにちがいない。」

「そのとおり。だが、待まちたまえ。あのときの黄金おうごん怪人かいじんは、おとなになったり、子こどもになったり、ネズミぐらいの小ちいさな姿すがたになったりしたね。あのときばかりじゃない。そのまえに、庭にわで山下やました少年しょうねんの前まえにあらわれたときも、見みている前まえで、だんだん小ちいさくなった。そして、ネズミぐらいになって、井戸いど側がわをのぼって、古ふる井戸いどの中なかへ、かくれてしまった。あれは、どういうわけだね。」

おそろしい魔法まほう博士はかせの黄金おうごん怪人かいじんが、まるで、先生せんせいが生徒せいとに質問しつもんするように、やさしいことばをつかっています。小林こばやし君くんの知恵ちえに、感心かんしんしてしまったかたちです。それに、いくら、かしこくても、この地下ちか室しつからは逃にげだせるものじゃないと、安心あんしんしていたからです。この子こどもはどのくらい知恵ちえがあるか、ためしてみようと、しているのです。

小林こばやし君くんのほうは、そんな、のんきなたちばではありません。このにくい怪物かいぶつの魔法まほうの種たねをあばいて、あいてを、へこませてやろうという気持きもちで、いっぱいでした。

「あの、山下やました君くんの庭にわに、あらわれたときは、もう、うす暗ぐらくなった、夕ゆうがただった。だから、やっぱり、うまく動うごかせたのだ。大おおきな木きが、たくさん立たちならんでいた。あのときの怪物かいぶつ、あれは、むろん、きみだよ。きみばかりじゃない。子こどもの助手じょしゅがいた。それも、にせの井上いのうえとノロちゃんだったかもしれない。ふたりは、金色きんいろの衣装いしょうをつけて、大おおきな木きのみきのかげにかくれていた。まず、おとなのきみが、山下やました君くんのそばをはなれて、一いち本ほんの木きのかげにかくれる。すると、にせの井上いのうえが、きみにかわって、山下やました君くんに見みえるように歩あるきだし、はんたいがわの木きのみきにかくれる。そこに、にせのノロちゃんが待まっていて、いれかわって、姿すがたをあらわす。ノロちゃんは、井上いのうえ君くんにくらべると、ずっと、せいがひくいのだから、そこで、また黄金おうごん怪人かいじんが小ちいさくなったように見みえたのだ。」

「うん、よく、考かんがえたね。そのとおりだ。しかし、ネズミのように、小ちいさくなったのは、どうしたわけだろう。まさか、あんな小ちいさな人間にんげんが、いるはずはないからね。」

「あれは、オモチャだ!」

小林こばやし君くんが、叫さけぶように、いいました。

「えっ、オモチャだって、オモチャが、どうして、井戸いど側がわをよじ登のぼれるね。」

「目めに見みえないぐらい細ほそい糸いとだ! たぶん、じょうぶな黒くろい絹糸きぬいとだ。それを、古ふる井戸いどの中なかに、きみの部下ぶかがかくれていて、ひっぱったのだ。それから、地面じめんを歩あるいたのは、ゼンマイじかけだ。ゼンマイじかけのオモチャは、ひとりで歩あるけるからね。蔵くらの窓まどによじ登のぼったときも、中なかから、たぶん、にせの井上いのうえが、細ほそい糸いとを、ひっぱっていたのだ。」

「うまいっ! きみは、じつに名めい探偵たんていだよ。よく、そこまで、考かんがえられたねえ。そのとおりだよ。きみのような、かしこい子こどもは、このわしの部下ぶかにしたいくらいだ。いや、部下ぶかにするつもりだ。きみばかりじゃない。明智あけち名めい探偵たんていも、そのうち、わしの部下ぶかにするつもりだよ。」

「それはだめだ。ぼくは、けっして、きみの部下ぶかにならない。まして、明智あけち先生せんせいが、きみの部下ぶかになんかなって、たまるもんか。いまに、ひどいめにあわされるから、見みているがいい。」

小林こばやし君くんも、負まけてはいません。リンゴのようなほおを、いっそう赤あかくして、くってかかるのでした。

「ウヘヘヘ……、わしのとりこになった身みのうえで、なにを大おおきなことをいっている。そっちこそ、いまに見みているがいい。明智あけち先生せんせいが、この部屋へやに、とらえられてきたときに、べそをかくんじゃないぞ。」

「とらえられるもんか。ぼくが、じゃまをしてやる。けっして、先生せんせいは、きみなんかに、だまされやしないよ。」

それを聞きくと、いままでだまっていた、ほんものの井上いのうえ君くんも肩かたをいからして、どなりだすのでした。

「うん、そうだ。小林こばやしさんと、ぼくと、ノロちゃんの三さん人にんで、きみのじゃまをしてやるんだ……。負まけるもんかっ。」

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