← Library‹ 魔法博士 バラバラ少年

それはやっぱり、白しろい大おおきなきれでからだをつつんだ、まっ黒くろな男おとこでした。さっきの老人ろうじんではありません。三十さんじゅうぐらいの力ちからの強つよそうな男おとこです。手てにはピカピカ光ひかる恐おそろしく幅はばのひろい刀かたなを持もっています。

むかし中国ちゅうごくに、青竜刀せいりゅうとうという恐おそろしい刀かたながありましたが、あれとそっくりです。刀かたなのことを、ダンビラといいますが、これは牛うしでも殺ころすような大だいダンビラです。

その男おとこは、まっ黒くろな中なかに、目めばかり白しろくギョロギョロさせた、恐おそろしい顔かおをしていました。ひとことも、口くちをききません。三さん人にんの少年しょうねんのほうを、ふりむきもしません。うらみにもえる白しろい目めで、縄なわを登のぼっていく子こどもを、ぐっと、にらみあげているのです。

男おとこの手てが、縄なわにかかりました。大だいダンビラを口くちにくわえ、両手りょうてで縄なわにすがると、そのまま、子こどものあとを追おって、登のぼりはじめました。

「キャーッ。」

上うえの方ほうから、悲鳴ひめいがきこえました。もう五ごメートルも、縄なわを登のぼった子こどもが、大だいダンビラの男おとこを見みて、あまりの恐おそろしさに、死しにものぐるいの声こえで、叫さけんだのです。そして、にわかに手足てあしをはやめて、逃にげるように、縄なわを登のぼるのでした。

しかし縄なわは、洞窟どうくつのてんじょうで、いきどまりになっています。そこへ、追おいつめられたら、もう、どうすることもできないではありませんか。

大だいダンビラを口くちにくわえた男おとこは、子こどものあとから、ゆうゆうと登のぼっていきます。いくら逃にげたって、だめなことを、ちゃんと知しっているのでしょう。

三さん少年しょうねんは、それを見みて、胸むねがドキドキしてきました。あの恐おそろしい男おとこは、赤白あかしろだんだらの小ちいさい子こどもを、殺ころしてしまうのではないかとおもうと、気きが気きではありません。井上いのうえ君くんなどは、とびだしていって、下したから男おとこの足あしをひっぱってやろうかと思おもいましたが、もう、まにあいません。男おとこも縄なわのぼりが上手じょうずで、たちまち、四よん―五ごメートル登のぼってしまったからです。

子こどものほうは、もう十じゅうメートルも、登のぼったでしょうか。洞窟どうくつのてんじょうは暗くらいので、下したからは見みえなくなってしまいました。

手てに汗あせをにぎって、見みあげていますと、ダンビラの男おとこも、てんじょうのやみのなかへ、姿すがたが消きえていきました。

ああ、縄なわの上うえに追おいつめられた子こどもは、どうしているのでしょう? いまごろは、男おとこにつかまって、恐おそろしいめにあっているのではないでしょうか。

「キャーッ!」

身みぶるいするような悲かなしい悲鳴ひめいが、てんじょうのやみの中なかから、聞きこえてきました。それが、洞窟どうくつにこだまして、あちらからも、こちらからも、キャーッ、キャーッという声こえが、かさなりあって聞きこえるのです。五ご人にんも六ろく人にんも子こどもがいて、つぎつぎと叫さけんでいるような気きがします。

そのこだまの声こえが、だんだん小ちいさくなって、スーッと消きえていったころに、ぎょっとするような恐おそろしいことが、おこりました。

サーッと、てんじょうから、なにかほそ長ながいものが落おちてきたのです。赤白あかしろだんだらの棒ぼうのようなものでした。それが地上ちじょうに落おちて、コロコロと、ころがりました。

なんだか、えたいのしれないものです。びっくりして、息いきをのんでいますと、……またもや、てんじょうから、同おなじような赤白あかしろだんだらの長ながいものが、サーッと、落おちてきました。それから、そのあとを追おうようにして、こんどは、まえよりはすこし小ちいさい赤白あかしろだんだらのものが、つづいて二ふたつ、落おちてきて、床ゆかにころがりました。

よく見みると、あとから落おちた二ふたつには、かわいらしい五ご本ほんの指ゆびが、はえているのです。手てです。あの黒人こくじんの子こどもの黒くろい手てです。

それでは、さきに落おちた二ふたつは、足あしかもしれません。ああ、そうです。よく見みると、黒くろいズックのゴムぐつをはいているではありませんか。おくびょう者しゃのノロちゃんは、それがわかると、いきなり、小林こばやし少年しょうねんのからだに、しがみつきました。そして、ガタガタふるえているのです。

ああ、あのかわいらしい子こどもは、縄なわの上うえで、恐おそろしい男おとこのダンビラで、バラバラに、きられてしまったのでしょうか。いくら地底ちていの魔法まほう国こくでも、こんな人ひとごろしが、ゆるされていいものでしょうか。

それから、つづいて、二ふたつのものが、てんじょうから落おちてきました。子こどもの首くびと胴どうです。赤白あかしろの運動うんどう帽ぼうをかぶった、かわいらしい首くびが、地上ちじょうに落おちて、コロコロと、ころがりました。

それを見みると、井上いのうえ君くんが、「うーん。」とうなって、小林こばやし君くんの腕うでをつかみました。

「もうだまっていられないよ。ぼくたちで、あいつを、つかまえよう。そして、警察けいさつへつれていくんだ。ね、小林こばやしさん、いくら、魔法まほうの国くにでも、こんなざんこくなことは、ゆるしておけないよ。ぼくらは明智あけち先生せんせいの弟子でしじゃないか。名誉めいよある少年しょうねん探偵たんてい団だんじゃないか。ね、あいつをつかまえて、ひどいめにあわせてやろうよ。」

井上いのうえ君くんは、顔かおをまっかにしておこるのでした。

しかし、小林こばやし君くんは、なにか、べつの考かんがえがあるらしく、すこしもさわぎません。こわがって、ふるえているノロちゃんと、目めをむいて、おこっている井上いのうえ君くんを、力ちからづけたり、なだめたりするように、ニコニコ笑わらっていいました。

「まあ見みていたまえ、いまにわかるよ。あの子こどもが、ほんとうに殺ころされたのかどうか、いまにわかるよ。」

そのとき、まっすぐに立たっている縄なわを、スーッと、すべりおりてきたものがあります。あの恐おそろしい黒人こくじんです。かた手てで大だいダンビラをにぎり、かた手てだけで、すべってきたのです。ギラギラ光ひかる大だいダンビラには、まっかに血ちがついています。

「小林こばやしさん、あの血ちをごらん。やっぱり、ほんとうに殺ころされたんだよ。ね、あいつを、とっつかまえよう!」

小林こばやし君くんは、かけだしそうにする井上いのうえ君くんの手てを、ぐっとつかんで、ひきとめました。

「いまにわかるよ。じっとしていたまえ。」

すると、そのとき、とっぴょうしもない笑わらい声ごえが、聞きこえてきました。

「ワハハハハハ……。」

地上ちじょうにおりた大だいダンビラの男おとこが、三さん少年しょうねんのほうを向むいて、さもおかしそうに笑わらっているのです。

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