← Library‹ 魔法博士 黄金怪人

青あおくすきとおったロウのような顔かおのやつは、けっして人間にんげんではありません。機械きかいでできている人造じんぞう人間にんげんです。顔かおは、ロウ人形にんぎょうの顔かおなのです。声こえも、こいつの声こえではなく、からだのなかに拡声器かくせいきがとりつけてあって、どこか遠とおくのほうで、だれかが、マイクロフォンの前まえでしゃべっている声こえが、こいつのからだの拡声かくせい器きから出でてくるのでしょう。

ロウ人形にんぎょうは、あの機械きかいのような歩あるきかたで、コツコツと、廊下ろうかを進すすんでいきます。ひどくうす暗ぐらい廊下ろうかです。そこを、右みぎにまがったり、左ひだりにまがったりして、奥おくのほうへはいっていくのです。

そのうちに、廊下ろうかがまっ暗くらになってしまいました。電灯でんとうが、ひとつもついていないのです。角かどをまがったので、うしろのほうの電灯でんとうの光ひかりも、ここまではとどきません。

そのやみの中なかで、ロウ人形にんぎょうは、ひとつのドアをひらきました。しかし、その部屋へやの中なかもまっ暗くらです。黒くろビロードのように、まっ暗くらです。

井上いのうえ君くんとノロちゃんは、ドアのところで、立たちどまりました。あまり暗くらくて、ロウ人形にんぎょうの姿すがたも、見みえなくなってしまったからです。

どうしようかと、考かんがえながら立たちすくんでいますと、暗くらやみのむこうのほうに、ボーッと、金色きんいろに光ひかるものが見みえてきました。

見みていると、その金色きんいろのものが、だんだんはっきりしてくるのです。どこからか、そこだけに、光ひかりをあてているのでしょう。

黒くろビロードのやみの中なかに、ごこうがさすほど、ピカピカ光ひかる黄金おうごんの人ひとの姿すがたがあらわれたのです。

京都きょうとの三十さんじゅう三さん間けん堂どうには、金色こんじきまばゆい仏像ぶつぞうが、何百なんびゃくとなく並ならんでいます。あの仏像ぶつぞうのひとつがぬけだしてきて、いま、この暗くらやみの中なかに、姿すがたをあらわしたのかと思おもわれるばかりです。

しかし、それは、ほとけさまではなくて、人間にんげんの姿すがたをしていました。からだは、西洋せいようのよろいのように、肩かたや手足てあしのまがるところが、ちょうつがいになっていました。

顔かおは黄金おうごん仮面かめんです。ほそい目め、三日月みかつきがたに、くちびるの両方りょうほうのすみが、キューッと上うえにあがった、黒くろい口くち。つまり、笑わらっているのです。どんなに、おこったときでも、口くちだけは三日月みかつきがたに、笑わらっているのです。

髪かみの毛けも金色きんいろでした。それが大仏だいぶつの頭あたまのように、たくさんの玉たまになって、ちぢれているのです。

その黄金おうごん怪人かいじんは、やっぱり機械きかいのような歩あるきかたで、ジリジリと、こちらへ近ちかづいてきました。まっ暗くらな中なかに黄金おうごんの姿すがただけが、キラキラとかがやいているのです。そして、三日月みかつきがたの口くちの中なかから、やっぱり、歯車はぐるまのきしるような、あのぶきみな声こえが聞きこえてきました。

「井上いのうえと野呂のろだね。よくきた。わしは魔法まほう博士はかせだ。やみの国くにの王おうさまだ。」

三日月みかつきの口くちが、うすきみ悪わるく笑わらっていました。

井上いのうえ君くんとノロちゃんは、あまりの恐おそろしさに、口くちをきく力ちからもありません。ふたりはだきあって、立たちすくんだまま、石いしにでもなったように、身みうごきもできないのです。魔法まほう博士はかせの黄金おうごん怪人かいじんは、さらに、ぐっとふたりの前まえに近ちかづいてきました。そのぶきみな黄金おうごんの顔かおが、目めの前まえいっぱいの大おおうつしになって、ほそいまぶたのおくから、恐おそろしい目めがのぞいているのです。

「わしは大だいどろぼうじゃ。魔法まほうつかいの大だいどろぼうじゃ。だが、お金かねや宝石ほうせきを盗ぬすむのではない。そんなありふれたどろぼうではない。わしは人間にんげんを盗ぬすむのじゃ。ウフフフ……、それもただの人間にんげんではない。日本にっぽんじゅうのどろぼうが、ひじょうに恐おそれている、えらい人間にんげんを盗ぬすむのじゃ。わかるかね。名めい探偵たんてい明智あけち小五郎こごろうを、盗ぬすみだすのじゃ。」

黄金おうごん怪人かいじんは、そこで、ことばをきって、ヘラヘラと笑わらいました。やっぱり歯車はぐるまのきしむような、いやらしい笑わらい声ごえです。

ふたりの少年しょうねんは、それをきくと、心こころのそこからびっくりしてしまいました。明智あけち先生せんせいを盗ぬすみだすなんて、じつに、とほうもない話はなしではありませんか。

「明智あけち探偵たんていばかりじゃない。まず、手てはじめに、少年しょうねん助手じょしゅの小林こばやしというやつを、盗ぬすんでやる。小林こばやしは、きみたち少年しょうねん探偵たんてい団だんの団長だんちょうだね。だから、最初さいしょにきみたちをここへつれてきたのだ。べつに、人ひとじちというわけじゃない。わしの魔法まほうの種しゅにつかうためだ。どんな魔法まほうだか、それはいえない。わしのだいじな秘密ひみつだからな。まあ、このうちで遊あそんでいるがいい。このうちには、きみたちがびっくりするようなものが、山やまほどある。人造じんぞう人間にんげんの部屋へやなんて、ほんの、そのひとつにすぎない。もっともっと恐おそろしい部屋へやが、いくつとなくできているんだ。わしは魔法まほうの国くにの王おうさまだからな。」

そういったかとおもうと、黄金おうごん怪人かいじんは、スーッとあとずさりをして、向むこうのほうへ遠とおざかり、だんだん小ちいさくなって、やがて、かき消けすように見みえなくなってしまいました。あとは、まっ暗くらなビロードのやみです。二に少年しょうねんは、おたがいの顔かおも見みることのできない、真しんのやみの中なかにとりのこされました。

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