← Library‹ 妖人ゴング 少年探偵団ばんざい

ああ、妖あやかし人にんゴングが、あの怪人かいじん二十にじゅう面相めんそうだったとは、その場ばにいあわせた中村なかむら警部けいぶも、あっとおどろいたほどですから、だれひとり、そこまで気きづいているものはありません。それをすっかり見みぬいた明智あけちは、さすがに名めい探偵たんていといわなければなりません。

明智あけちは中村なかむら警部けいぶに、二十にじゅう面相めんそうを水みずの中なかから、ひきあげることをたのみました。警部けいぶは、防空ぼうくう壕ごうの土手どての下したにいた警官けいかんたちを呼よびあげて、犯人はんにんを逮捕たいほするように命めいじました。

そのとき、警官けいかんたちにまじって、小ちいさな人影ひとかげが防空ぼうくう壕ごうの上うえにかけあがり、明智あけち探偵たんていのそばによって、なにかささやきました。小林こばやし少年しょうねんです。

明智あけちは小林こばやし君くんの話はなしを聞きくと、ニッコリ笑わらってうなずき、

「それはいい思おもいつきだ。きっと、そういうことがおこるよ。」

と、ささやきかえすのでした。

二十にじゅう面相めんそうは防空ぼうくう壕ごうの穴あなの外そとにひき出だされ、手錠てじょうをはめられ、三さん人にんの警官けいかんにとりかこまれて、グッタリとうずくまっていましたが、やがて顔かおをあげると、明智あけちにむかって、なにかいいはじめました。

「明智あけち君くん、ざんねんだが、おれの負まけだよ。まんまと、きみのしかけのわなにはまってしまった。きみの計画けいかくに、これほど裏うらの裏うらがあろうとは、さすがのおれも気きがつかなかった。こんどもまた、きみにやられたが、このしかえしはきっとするから、そう思おもっているがいい。

だが、明智あけち君くん。たった一ひとつ聞ききたいことがある。マユミと俊一しゅんいちはどこにかくしたのだ。山やまの中なかにかくしたのも、にせものだった。この防空ぼうくう壕ごうへかくしたのも、にせものだった。いったい、ほんもののふたりはどこにいるのだ。おれは手錠てじょうをはめられている。まわりには、おまわりがウジャウジャいる。もう逃にげられっこないよ。秘密ひみつをうちあけても、だいじょうぶだよ。」

明智あけち探偵たんていはにこにこ笑わらって、それを聞きいていましたが、相手あいてのことばがおわると、すぐに答こたえました。

「ふたりは、ここにいるよ。マユミさん、俊一しゅんいち君くん、もういいから、ここへいらっしゃい。」

その声こえにおうじて、まっ暗くらなむこうの茂しげみから、三みつの人影ひとかげがかけ出だしてきました。明智あけちが懐中かいちゅう電灯でんとうをそのほうにむけますと、それは小林こばやし少年しょうねんと、マユミさんと、俊一しゅんいち君くんであることが、わかりました。

「ああ、ここにいたのか。だが、いく日かも庭にわにかくれていたわけじゃなかろう。いままで、いったい、どこにかくれていたのだ。」

二十にじゅう面相めんそうが、くやしそうにどなりました。

「そんなに聞ききたければ、おしえてやろう。ふたりは、ぼくのアパートに、かくまっておいたのだよ。」

明智あけちがいいますと、二十にじゅう面相めんそうは首くびをふって、

「うそをいうな。おれはきみのアパートを、いくどもしらべたが、あすこにはだれもいなかった。」

「ところが、いたのさ。ぼくのアパートには、いろいろのしかけがある。だれにもわからないかくれ場所ばしょも、ちゃんと作つくってあるのだ。いくらきみが探さがしても、あのかくれ場所ばしょはわかるはずはないのだよ。」

明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょは、麹町こうじまちアパートにありましたが、アパートといっても、一室いっしつや二に室しつかりているのではなく、六むいつぐらいも部屋へやがあるのですから、こっそり工事こうじをすれば、そういう秘密ひみつのかくれ場所ばしょを作つくることもできたのです。

二十にじゅう面相めんそうはそれを聞きくと、まただまってしまいました。マユミさんと俊一しゅんいち君くんは、その問答もんどうのあいだに土手どてをおりて、そこにむらがっている少年しょうねんたちのうしろに、姿すがたをかくしました。

「おい、二十にじゅう面相めんそう、立たつんだ。警視けいし庁ちょうの特別とくべつ室しつが、きみを待まっている。さあ、案内あんないしてやるから、きたまえ。」

中村なかむら警部けいぶがどなりました。二十にじゅう面相めんそうは三さん人にんの警官けいかんにひったてられて、防空ぼうくう壕ごうの土手どてをおりるのでした。中村なかむら警部けいぶと残のこりの警官けいかんは、懐中かいちゅう電灯でんとうを照てらして、厳重げんじゅうにその前後ぜんごを見みはっています。

ところが、二十にじゅう面相めんそうが土手どてをおりきったときに、なんだか、わけのわからないことが、起おこりました。

あっというまに、三さん人にんの警官けいかんがつきとばされ、二十にじゅう面相めんそうが走はしりだしていたのです。見みると手錠てじょうはいつのまにかはずされて、地面じめんにほうりだされていました。

そしてやみの中なかから、二十にじゅう面相めんそうの爆発ばくはつするような笑わらい声ごえが、ひびいてきたではありませんか。

「ワハハハハ……、おれは魔法まほうつかいだ。手錠てじょうをはずすなんて、朝あさめしまえだよ。マユミはどこにいる。俊一しゅんいちはどこにいる。いまこそ、きみたちを、ひっとらえてくれるぞっ!」

二十にじゅう面相めんそうはそう叫さけびながら、まっ暗くらな庭にわの中なかを、あちこちとかけまわり、マユミさんと俊一しゅんいち君くんを探さがしもとめました。

少年しょうねん探偵たんてい団だんとチンピラ隊たいの少年しょうねんたちは、「ワーッ、ワーッ。」と叫さけんで、ひとかたまりになって逃にげまわっています。マユミさんと俊一しゅんいち君くんは、その中なかにまぎれこんでいるのか、どこにも姿すがたが見みえません。まるで、暗くらやみの中なかの鬼おにごっこみたいです。逃にげる少年しょうねんたちの一団いちだん、それを追おいかける二十にじゅう面相めんそう、そのまた二十にじゅう面相めんそうを追おいかける警官けいかんたち。なにしろまっ暗くらな中なかですから、懐中かいちゅう電灯でんとうが三みつや四よんつあったって、なにがなんだかわけがわかりません。

「やい、マユミ、俊一しゅんいち、どこにいるんだ。いまに思おもいしらせてくれるぞっ。」

二十にじゅう面相めんそうが、恐おそろしい声こえでどなりました。

「ワーッ、ワーッ……。」少年しょうねんたちは、ひとかたまりになって逃にげていきます。そのとき、ひとりの少年しょうねんが逃にげおくれて、地面じめんにうずくまっているのが見みえました。

「あっ、俊一しゅんいちだな!」

二十にじゅう面相めんそうはそう叫さけんで、その少年しょうねんにとびかかっていきました。そしてたちまち、少年しょうねんをこわきにかかえると、くるっと追手おってのほうをふりむいて、仁王におうだちになりました。

「さあ、人ひとじちができたっ。おれに手てだしをしてみろ、こいつをしめ殺ころしてしまうぞ。さあ、どうだ。明智あけちはいるか。おれの底力そこぢからがわかったか。ワハハハ……、いいか、この俊一しゅんいちの命いのちがおしかったら、みんな向むこうに行いけっ! おれがここをでていくのを追おいかけるな。」

二十にじゅう面相めんそうは、気きちがいのようにわめくのでした。すると、暗くらやみの中なかから、ひとりの小ちいさい人影ひとかげが近ちかづいて、懐中かいちゅう電灯でんとうの光ひかりを、パッと二十にじゅう面相めんそうのほうに向むけました。

「おい、二十にじゅう面相めんそう。この光ひかりで、よく見みたまえ。きみがだいているのは、人間にんげんにしては軽けいすぎやしないかい? それは俊一しゅんいち君くんじゃないよ。俊一しゅんいち君くんによくにた人形にんぎょうだよ。」

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