← Library‹ 魔法人形 さいごの切り札

黄金おうごんのトラは、ほんとうのトラではなかったのです。トラの毛皮けがわの中なかに、人間にんげんがはいっていたのです。あのうなり声ごえは、毛皮けがわの中なかに、なにかそんな音おとを出だす笛ふえが、しかけてあったのでしょう。口くちがひらくのも、ちょうつがいになっていて、中なかの人間にんげんが、口くちでそれを動うごかしていたのにちがいありません。

すっかり毛皮けがわをぬいでしまったのは、しらがの老人ろうじんでした。どこかに、見みおぼえがあります。ああ、そうだっ! 赤堀あかほり鉄てつ州しゅう老人ろうじんです。小林こばやし君くんが少女しょうじょにばけて、おばけやしきにのりこみ、よろいびつにかくれていると、外そとから釘くぎをうちつけてしまった、あのよっぱらいじいさんです。じいさんは、明智あけち探偵たんていの弟子でしになりたいといっていましたが、いつのまにか、こっそり弟子でし入いりをして、明智あけち探偵たんていの手てだすけをするようになっていたのでしょう。

赤堀あかほりじいさんは、たおれている西洋せいよう悪魔あくまをにらみつけて、どなりはじめました。

「こら、きさま、よもや、おれの顔かおを、わすれやしまい。きさまは、この赤堀あかほり鉄てつ州しゅうの名なまえをかたって、木きの宮みや運送うんそう店てんにルミちゃん人形にんぎょうを、甲野こうのさんのところへとどけさせただろう。西洋せいよう悪魔あくまに姿すがたをかえているが、きさまは、あの人形にんぎょうじいさんにきまっている。わしを焼やき殺ころそうとした、あの人形にんぎょう悪魔あくまだっ。

わしは、そのうらみをはらそうと思おもって、明智あけち先生せんせいに弟子でし入いりした。そして、ここにいるポケット小僧こぞうの手てびきで、明智あけち先生せんせいといっしょに、ここへしのびこんできた。

きさまの計略けいりゃくは、ポケット小僧こぞうが、みんなさぐり出だしていたんだ。だから、きさまの手下てしたがこのトラの毛皮けがわをきて、ここへあらわれるということもちゃんとわかっていた。

そこで、明智あけち先生せんせいが先手せんてをうって、この毛皮けがわの中なかにはいっていたきさまの手下てしたをひっとらえ、しばりあげて穴あなの奥おくにころがし、かわりに、わしが毛皮けがわにはいって、ここへあらわれたのだ。

ワハハハハ……、ざまを見みろ。わしは、とうとううらみをはらしたぞ。ああ、わしはせいせいした。こんな気持きもちのいいことはない。ワハハハハ……、やい人形にんぎょう悪魔あくまめ、おもいしったかっ。」

赤堀あかほり老人ろうじんはそういって、たおれている西洋せいよう悪魔あくまを、思おもいきり、けりとばすのでした。

これで、ポケット小僧こぞうが、へいきな顔かおをしていたわけがわかりました。明智あけち探偵たんていや赤堀あかほり老人ろうじんを、ここへ案内あんないしたのは、ポケット小僧こぞうだったのです。

「ちくしょうめ!」

西洋せいよう悪魔あくまは、むくむくと起おきあがり、恐おそろしい顔かおで、ポケット小僧こぞうにつかみかかろうとしました。

それを見みると、明智あけち探偵たんていがつかつかと前まえに出でて、西洋せいよう悪魔あくまをつきとばしました。

「おい、じたばたしないで、もう、かんねんするがいい。きみの秘密ひみつは、なにもかも、みんなわかってしまったのだ。」

西洋せいよう悪魔あくまは、ほら穴あなの壁かべに背中せなかをくっつけて、明智あけちをにらみかえしながら、

「なに、おれの秘密ひみつだと。ワハハハハ……、きさまに、それがみんなわかってたまるものか。おれのほうには、奥おくの手てがあるんだぞっ。」

「その奥おくの手ても、わかっている。もう運うんのつきだと思おもうがいい。」

明智あけちはしずかに、いってきかせるのでした。

「地ちの底そこに、これだけのしかけをつくったのは、さすがに人形にんぎょう悪魔あくまだ。しかし、種しゅをわってみれば、みんな子こどもだましにすぎない。あのジャングルは、ひじょうに広ひろいように見みえるが、あれはパノラマ館かんのしかけで、ほんとうの木きは、わずかしかないのだ。あとはみんな、壁かべにあぶら絵えがかいてあるのだ。光線こうせんのぐあいで、その絵えとほんものとのさかいめが、わからないようにしてあるので、あんなに広ひろく感かんじられるのだ。きみのとくいの奇術きじゅつにすぎない。

大おおワシや大おおトカゲも、てんじょうから、目めに見みえないような細ほそいじょうぶなひもで、つってあったのだ。それを、あやつり人形にんぎょうのように動うごかして、さも、生いきているように見みせかけたのだ。木きのみきが怪物かいぶつの顔かおに見みえたのも、木きそのものが、はりこの作つくりものだから、わけのないことだ。声こえは、みんなテープレコーダーだよ。ハハハハ……、種しゅをあかせば、子こどもだましじゃないか。

きみが人形にんぎょうじいさんになって、いろいろな人形にんぎょうや動物どうぶつをつくり、世間せけんをおどろかそうとしたのは、なんのためだ。それは、金かねや宝石ほうせきをぬすむためにもつかわれたが、もっとほかに、目的もくてきがある。」

「フフン、それをきさまが、知しっているのか。」

西洋せいよう悪魔あくまは、にくにくしくいいはなちました。

「きみの目的もくてきは、世間せけんをあっといわせたかったのだ。世間せけんの中なかでも、このぼくを、あっといわせたかったのだ。なぜかというと、きみはぼくに、たびたび、ひどいめにあっている。そのうらみが、はらしたかったのさ。それほどぼくをうらんでいる男おとこ、また、世間せけんをあっといわせてよろこぶ男おとこは、ほかにはない。え、きみ、きみのほんとうの名なをいってやろうか。」

明智あけちは、そこでことばをきって、にこにこと笑わらいました。すると、西洋せいよう悪魔あくまは、まるで神かみさまの前まえに出でたほんとうの悪魔あくまのように、両手りょうてで顔かおをかくして、逃にげだそうとしました。

「待まてっ、きみのほんとうの名なは、怪人かいじん二十にじゅう面相めんそうだっ!」

ピシッと、むちでうつような名めい探偵たんていの声こえでした。西洋せいよう悪魔あくまは、顔かおをおさえたまま、ギョッとしたようにたちすくみました。しかし、すぐに気きをとりなおして、顔かおから手てをはなすと、血ちばしった目めをカッとひらいて、明智あけち探偵たんていをにらみつけるのでした。

「きさま、またしてもおれを、ひどいめにあわせやがったなっ。よし、もうこうなれば、さいごの切きり札ふだだっ。いまに見みろっ。」

と叫さけぶやいなや、パッと走はしりだしました。ほら穴あなの奥おくにむかって、矢やのようにかけ出だしたのです。

「それっ」というので、明智あけち探偵たんていも、中村なかむら警部けいぶも、ふたりの警官けいかんも、小林こばやし少年しょうねんも、そのあとを追おいました。ところが、ポケット小僧こぞうだけは、みんなとはんたいの方角ほうがくに走はしりだしたではありませんか。ポケット小僧こぞうは、いつでも、いがいなことばかりやる少年しょうねんです。はんたいの方角ほうがくというのは、つまり、ほら穴あなの入口いりぐちのほうへもどっていくわけです。いったい、なにをしにいくのでしょうか。

こちらでは、明智あけち探偵たんていたち五ご人にんが一生いっしょうけんめいに追おっかけましたが、西洋せいよう悪魔あくまの二十にじゅう面相めんそうは、もう死しにものぐるいですから、その早はやいこと。なかなか追おっつけるものではありません。

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