← Library‹ 奇面城の秘密 秘密会議

チンピラ隊たいのポケット小僧こぞうは、まっ暗くらな街道かいどうを、一いち時間じかんあまりもてくてく歩あるいて、やっと大おおきな町まちにたどりつきました。それは埼玉さいたま県けんのT町ちょうだったのです。

ポケット小僧こぞうは、T町ちょうの駅えきの長ながいすの上うえで一夜いちやをあかし、あくる朝あさの汽車きしゃで東京とうきょうに帰かえりました。三百さんびゃく円えんほどもっていたので、やっと汽車きしゃのきっぷが買かえたのです。

東京とうきょうにつくと、すぐに明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょへいって、明智あけち先生せんせいと小林こばやし団長だんちょうにあい、くわしく報告ほうこくしました。

「わあ、えらいぞ、ポケット小僧こぞう。たいへんなてがらをたてたねえ。」

小林こばやし少年しょうねんが、おもわず歓声かんせいをあげました。

明智あけち探偵たんていも、ポケット小僧こぞうの頭あたまをなでながら、

「どんなおとなもおよばない大おおてがらだよ。四十よんじゅう面相めんそうのほんとうのかくれ家が、奇き面めん城じょうなんて、長ながいあいだだれも知しらなかった。ぼくも、まったく気きづかないでいた。それをきみが、ひとりの力ちからで、発見はっけんしたんだからね。きっと警視けいし総監そうかんからごほうびが出でるよ。

よし、これからすぐに警視けいし庁ちょうへいこう。そして、総監そうかんにこのことを報告ほうこくして、どうして奇き面めん城じょうをせめるか、その方法ほうほうを相談そうだんしよう。」

明智あけち探偵たんていはそういって、卓上たくじょう電話でんわの受話じゅわ機きをとると、警視けいし庁ちょうの中村なかむら警部けいぶをよび出だし、総監そうかんにこのことをつたえてくれるようにたのみました。すると、総監そうかんも捜査そうさ課か長ちょうも待まっているからという返事へんじがあったので、そのまま自動じどう車しゃをよんで、ポケット小僧こぞうをつれて、警視けいし庁ちょうへいそぎました。

それから二十にじゅう分ふんほどして、警視けいし庁ちょうの総監そうかん室しつには、大机おおつくえの正面しょうめんに山本やまもと警視けいし総監そうかん、その前まえに明智あけち小五郎こごろう、堀口ほりぐち捜査そうさ一いち課か長ちょう、中村なかむら警部けいぶが席せきにつき、ポケット小僧こぞうも、明智あけち探偵たんていのとなりの大おおきないすに、ちょこんとこしかけて、しかつめらしい顔かおをしていました。

山本やまもと総監そうかんは、四十よんじゅう面相めんそうがじぶんに化ばけて、警視けいし庁ちょうをばかにしたことを、ひじょうにおこっていましたので、この事件じけんにかぎって、総監そうかん室しつで秘密ひみつ会議かいぎをひらくことにしたのです。

「きみがポケット小僧こぞうか。よくやってくれた。あとで、どっさりほうびをあげるよ。で、きみは、その奇き面めん城じょうがどこにあるのか、わかっているんだろうね。」

総監そうかんが、ポケット小僧こぞうにたずねました。

「はい、それは奇き面めん城じょうにかくれているあいだに、四十よんじゅう面相めんそうの部下ぶかたちの話はなしを立たちぎきしてわかりました。それはこぶし岳だけという山やまです。その山やまの北きたがわの深ふかい森もりの中なかに、あの恐おそろしい顔かおの岩いわがあるのです。」

それをひきとって、明智あけち探偵たんていが説明せつめいしました。

「甲武信岳こぶしだけというのは、埼玉さいたま県けんと長野ながの県けんの境さかいにそびえている山やまです。そこから食料しょくりょうなどを仕入しいれるのに、いちばん近ちかい町まちは埼玉さいたま県けんのT町ちょうです。奇き面めん城じょうからT町ちょうへは、二ふた日かか三み日かにいちど、四十よんじゅう面相めんそうのヘリコプターが、かよっているらしいのです。ポケット小僧こぞうは、そのヘリコプターにかくれて逃にげ出だしてきたのです。」

すると、堀口ほりぐち捜査そうさ課か長ちょうが、こともなげにいうのでした。

「武装ぶそうした警官けいかんを一いち小隊しょうたいほどやって奇き面めん城じょうをかこませるんですな。奇き面めん城じょうの中なかには、四十よんじゅう面相めんそうも入いれて十じゅう一いち人にんしかいないというから、武装ぶそう警官けいかん一いち小隊しょうたいでじゅうぶんでしょう。自動じどう車しゃのいけるところまでいって、それからは歩あるいてのぼるんですな。」

それを聞きくと、明智あけち探偵たんていはかぶりをふって、

「いや、それはあぶないですよ。奇き面めん城じょうのまわりには、見みはりのものがいるにちがいない。警官けいかん隊たいが山やまをのぼっていったら、すぐに気きづいて、じゅうぶん用意よういをする。あいつらはピストルや銃じゅうを持もっているでしょうし、そのほか、どんな武器ぶきがあるかわからない。それと正面しょうめんからたたかっては、こちらにも、けが人にんを出だします。正面しょうめんしょうとつは、さけたほうがいいと思おもいます。」

と反対はんたいをとなえました。

「ふん、なにか計略けいりゃくをもちいるというんだね。明智あけち君くん、きみには、うまい計略けいりゃくが、あるのだろうね。」

山本やまもと総監そうかんがたずねました。

すると明智あけち探偵たんていは、いすを前まえにのり出だし、大机おおづくえにひじをついて、ひくい声こえで話はなしはじめるのでした。

「じつは、こういう計略けいりゃくを考かんがえたのです。四十よんじゅう面相めんそうのヘリコプターが、たえずT町ちょうへやってくる。それをうまく利用りようするのですよ……。」

明智あけち探偵たんていは、そこでいっそう声こえをひくくしましたので、総監そうかんをはじめ、捜査そうさ課か長ちょうも中村なかむら警部けいぶも、ぐっと顔かおを前まえに出だし、四よん人にんが頭あたまをくっつけるようにして明智あけちのないしょ話はなしをききとりました。

「うん、おもしろい。明智あけち君くんらしいやりかただ。ひじょうにむずかしいけれども、きみならできるかもしれない。やってみるだけのねうちはあるね。」

総監そうかんは明智あけちの話はなしを聞きいて、にこにこしながら賛成さんせいしました。

「それについて、中村なかむら君くん、きみの部下ぶかの三浦みうら刑事けいじをかしてもらいたいんだがね。あの男おとこは、警視けいし庁ちょう第だい一いちの変装へんそうの名人めいじんだからね。」

明智あけちが中村なかむら警部けいぶにたのみますと、警部けいぶはこころよく承知しょうちしました。

「いいとも、三浦みうらはたしかに変装へんそうがうまい。四十よんじゅう面相めんそうまでいかなくても、十じゅう面相めんそうくらいのうでまえはあるよ。あの男おとこがやくにたつなら、どうかつかってくれたまえ。」

それから三十さんじゅう分ふんほど、こまかいうちあわせをしたあとで、この総監そうかん室しつの秘密ひみつ会議かいぎはおわりました。山本やまもと警視けいし総監そうかんはいすから立たって、

「では明智あけち君くん、きみからの、よい知しらせを待まつことにします。よろしくたのみますよ。」といって、明智あけち探偵たんていの手てをにぎるのでした。

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