← Library‹ 探偵少年 海底から空へ

お話はなしかわって、こちらは今井いまい君くん兄弟きょうだいです。いくら川岸かわぎしをさがしても、白しろひげのじいさんが見みつからないので、もとのバラック小屋こやのそばへ、もどってきました。そのときは、もう、博士はかせのランチが出発しゅっぱつしたあとでした。さっき、小林こばやし団長だんちょうは今井いまい君くんに、

「あとで、バラックのよこの大おおきな石いしの上うえを見みてくれ。」

と、ささやいていったので……、その石いしをさがしますと、すぐに見みつかりました。石いしの上うえに、手紙てがみがのせてあったからです。

その手紙てがみには、さっきのランチのかたちや、色いろをくわしくしるしたあとに、

「両国橋りょうごくばしのそばの、ミナトヤという貸かしボート屋やへ、いそげ。そこの主人しゅじんは、明智あけち先生せんせいを知しっているから、モーターボートを貸かしてくれる。いちばん早はやいボートを出ださせて、ランチのあとを、追跡ついせきせよ。」

今井いまい君くんたちが、隅田すみだ川かわの下流かりゅうをながめますと、はるかむこうに、手紙てがみに書かいてある白しろいランチが、小ちいさく見みえていました。

「あれだっ。あれが魔法まほう博士はかせのランチだよ。」

「よしっ、ランチと自動じどう車しゃのきょうそうだっ。」

今井いまい君くんのにいさんが、はりきってさけびました。そして、ふたりは、橋はしのたもとにもどり、自動じどう車しゃにとびのって、全ぜん速力そくりょくで走はしらせました。

今井いまい君くんたちの自動じどう車しゃは、二百にひゃくメートルも川かわしもの白しろいランチを追おって、川岸かわぎしを走はしりましたが、じきに、道みちが行いきどまりになってしまいました。川かわっぷちに家いえがならんでいるので、まわり道みちをしなければならないのです。ランチのほうは一いち直線ちょくせんに走はしるのに、こちらは、町まちかどをグルグルまわっていくのですから、おくれるばかりです。

でも、やっと両国りょうこく橋きょうのミナトヤにつきました。川かわしもを見みると、白しろいランチは、やっぱり二百にひゃくメートルもむこうを走はしっています。

すぐに明智あけち先生せんせいに電話でんわをかけ、ミナトヤの主人しゅじんに、快速かいそく力りょくのモーターボートを借かりることにしました。それには、ミナトヤで、いちばんうでききの青年せいねん運転うんてん士しが、のりこんでいるのです。

今井いまい君くんたちも、そのボートにのりました。

「むこうに、小ちいさく見みえる白しろいランチです。」

「見みなれないランチだが、ずいぶん速力そくりょくがありますね。しかし、このカモメ号ごうは、隅田すみだ川かわ第だい一いちの快速かいそく艇ていですから、すぐに追おいついてみせますよ。」

カモメ号ごうは出発しゅっぱつしました。へさきに滝たきのような白波しらなみをたてて、グングン速力そくりょくをまし、ランチとのあいだが、みるみる、せばまっていきます。

こちらは、白しろいランチのなかです。労働ろうどう者しゃの変装へんそうをといて、ピッタリ身みについた黒くろいシャツとズボンをつけ、顔かおも、あのピンとはねたひげのある、西洋せいよう悪魔あくまの顔かおになっていました。

「先生せんせい、へんなモーターボートが近ちかづいてきますよ。おそろしい速力そくりょくだ。このランチを、追おっかけているようですぜ。」

船員せんいんのひとりが、双眼そうがん鏡きょうを魔法まほう博士はかせに渡わたしました。博士はかせはそれを目めにあてて、

「うん、子こどもがひとりと、青年せいねんがふたりのっている。ああ、そうだ。あの子こどもは今井いまいというセトモノ屋やの子こだ。わしのあとを追おっているんだ。しかし、へんだな。小林こばやし君くんの姿すがたが見みえないぞ。……おい、もっと速力そくりょくが出だせないか。これじゃ、じきに追おっつかれるぞ!」

サーッ、サーッ、滝たきのように白波しらなみをたてて、矢やのように走はしる二にせきの快速かいそく艇てい。あたりの船ふねの人ひとたちはあっけにとられて、見みおくっています。

「先生せんせい、だめです。もう、これいじょう速力そくりょくは出でません。モーターボートは、グングンせまってきます。三さん分ふんもしたら、追おっつかれますよ。」

「よし、心配しんぱいするな。こっちには、まだ、おくの手てがあるんだ。いまにあっといわせてやるぞ。

島しまが見みえたら、五十ごじゅうメートルぐらいまで近ちかづいて、左ひだりへまがるんだ。そして、おきのほうへ、逃にげるんだ。」

魔法まほう博士はかせはおなじことを二に度どくりかえして、ねんをおしてから、船室せんしつのドアを開ひらくと、となりの荷物にもつのおいてあるうす暗ぐらい小こ部屋へやへ、とびこんでいきました。そして、そこにある大おおきな箱はこのふたを、開ひらくのでした。

箱はこのなかから、へんなものを取とりだし、博士はかせは、それを黒くろシャツの上うえにきました。

きゅうくつなほど、ピッタリ身みについたビニールの服ふくです。頭あたまから足あしのさきまで、ひとつになった、けいべん潜水せんすい服ふくです。顔かおのまえはガラスばりになっていて、手足てあしのさきには大おおきな水みずかきがつき、背中せなかには、酸素さんそのボンベ(鉄てつのくだ)が、二ふたつならんでついています。

そのボンベから、細ほそいくだが、ガラスばりの顔かおの内うちがわにつづいていて、それを口くちにあてれば、水みずのなかでも、息いきができるのです。

この、けいべん潜水せんすい服ふくをきた魔法まほう博士はかせは、荷物にもつ部屋へやの小ちいさな戸とを開ひらいて、ソッと、うしろのほうをながめました。モーターボートは、もう三十さんじゅうメートルにせまっています。前まえのほうには、品川しながわのお台場だいばが大おおきく見みえてきました。

魔法まほう博士はかせはさっき、ランチをお台場だいばに近ちかづけてから、左ひだりのほう、つまり、おきのほうへ、まがるように命めいじておきました。運転うんてん手しゅは、そのとおりにランチを進すすめて、お台場だいばから五十ごじゅうメートルほどのところで、きゅうに方向ほうこうをかえ、おきのほうへ、つきすすみます。

「よしっ、いまだっ!」

ランチが方向ほうこうをかえたので、博士はかせののぞいているドアは、うしろのモーターボートからは、見みえなくなったのです。それを待まちかまえていた博士はかせは、いきなりドアの外そとに出でて、海うみへとびこみました。

ビニールの潜水せんすい服ふくをきていますから、からだは、すこしも、ぬれません。酸素さんそのボンベで、息いきはらくにできます。また、大おおきな水みずかきで、じゆうに泳およげるのです。

博士はかせは海うみの底そこを、お台場だいばのほうへ泳およいでいきます。そのとき、もし、博士はかせがうしろをふりかえって見みたら、なんだか大おおきなサメのような怪物かいぶつが、あとを追おってくるのに気きづいたでしょうが、博士はかせは、一いち度ども、うしろを見みなかったのです。

いや、サメではありません。やっぱりビニールの潜水せんすい服ふくをきた、博士はかせよりは、すこし小こがらな人間にんげんでした。これは、いったい、なにものでしょう?

博士はかせは海うみの底そこを、お台場だいばの岸きしに近ちかづき、石いしがきをはいあがると、そこの草くさむらに身みをふせて、首くびをもたげ、夕ゆうやみのせまった、おきのほうをながめました。

「ウフフフ……、わしが、逃にげだしたともしらないで、モーターボートはランチを追おっかけていく。おい、もっと速力そくりょくを出だせ。そして、どこまでも逃にげるんだ。」

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