← Library‹ 探偵少年 知恵の勝利

「えっ、なんだって?」

「ぼくが勝かったのですよ。黄金おうごんのトラを盗ぬすみだしてしまったのですよ。」

「おい、おい、でたらめも、いいかげんにしたまえ。きみは、このろうやから、一いち歩ほも出でられなかったじゃないか。ろうやにいて、どうして、トラが盗ぬすみだせるんだ?」

「それじゃ、おじさんが、かくした場所ばしょをあらためてごらんなさい。黄金おうごんのトラがあるか、ないか。」

小林こばやし君くんの自信じしんたっぷりな口くちぶりに、魔法まほう博士はかせも心配しんぱいになってきました。そこで、いそいで二に階かいの書斎しょさいへいって、百科ひゃっか辞典じてんのトの部ぶをぬき出だして、ひらいてみました。

「あっ!」

ページの穴あなのなかは、からっぽでした。

博士はかせは、そのままろうやにかけもどって、小林こばやし君くんをにらみつけました。

「小林こばやし君くん、きみはじつにふしぎな子こどもだ。いったい、どうして、あれを盗ぬすみだしたんだ。」

すると小林こばやし君くんは、すまして、こたえました。

「ネズミですよ。」

「えっ? ネズミとは?」

さすがの博士はかせも、あっけにとられるばかりです。

小林こばやし君くんは、にこにこして説明せつめいしました。

「このろうやの床ゆかのすみに、レンガのこわれたところがあって、そこからネズミがはいってくるのです。その穴あなのおくへ手てをいれて、さぐって見みますと、地面じめんの下したのほうに、いまは使つかわれなくなっている下水げすいの土管どかんがのこっていて、そのわれめから、ネズミが出でてくることがわかりました。

ぼくは、昼間ひるま、その穴あなへ耳みみをあててみました。すると、へいの外そとの子こどもたちの声こえが、はっきり聞きこえてくるのです。そこで、地面じめんの下したのふるい土管どかんは、へいの外そとの空地くうちまでつづいて、そこに口くちをひらいているにちがいないと、考かんがえたのです。

それから、ぼくは、ひまにまかせて、ネズミを手てなずけることを、はじめました。

パンをたべのこしておいて、それをえさにして、手てなずけたのです。三み日かめには、ネズミがぼくになれて、ひざにはいあがったり、手てをなめたりするようになりました。なぜそんなことをしたかというと、ネズミを使つかって、へいの外そとと通信つうしんをするためなのです。ぼくはじぶんの毛糸けいとのシャツをほぐして、ながい糸いとを取とりだし、それをネズミの足あしにまきつけて、穴あなのなかへ、おいやったのです。」

小林こばやし君くんは、持もっていた手帳てちょうの紙かみに鉛筆えんぴつで手紙てがみを書かき、それをおりたたんで、おもてに「これをひろった人ひとは、すぐ麹町こうじまち六ろく番町ばんちょう十じゅう二に番地ばんちの木村正雄きむらまさお君くんに届とどけてください。そうすれば木村きむら君くんが、たくさんおれいをくれます。」と書かいて、毛糸けいとのはじにくくりつけ、それをネズミの足あしに、グルグルまきつけて、はなしてやったのです。ネズミは土管どかんをつたって、へいの外そとへ出でます。

そして、ひろっぱのどこかで、足あしにまいた毛糸けいとがとけて、手紙てがみが地面じめんに落おちるわけです。二に度どほど、しっぱいしましたが、三さん度どめに、うまくいきました。ひろっぱで遊あそんでいる子こどもが、その手紙てがみを見みつけて、木村きむら君くんに届とどけてくれたのです。木村きむら君くんというのは、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんのなかで、いちばんかしこい子こどもです。木村きむら君くんはすぐに、このへいの外そとへ来きてくれました。

木村きむら君くんへの手紙てがみには、「へいの外そとへ来きて、毛糸けいとのはじをさがせ。見みつかったら、それに、じょうぶな長ながいひもを結むすびつけて、ピン、ピン、ピンと、三さん度どひっぱれ。」と書かいてあったのです。木村きむら君くんは、そのとおりにしました。それをあいずに、ろうやのなかの小林こばやし君くんは、毛糸けいとをたぐりよせ、それにつづいている、じょうぶなひもをにぎると、両方りょうほうで、そのはじをもって、通信つうしんをはじめたのです。

少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんは、みんな電信でんしんのモールス信号しんごうのうちかたを知しっていました。それで、ろうやのなかの小林こばやし君くんと、へいの外そとの木村きむら君くんとは、そのひもをモールス信号しんごうでひっぱって、話はなしあったのです。そして、小林こばやし君くんのさしずにしたがって、木村きむら君くんが博士はかせの西洋せいよう館かんにしのびこみ、書斎しょさいの百科ひゃっか辞典じてんのなかから、黄金おうごんのトラを盗ぬすみだしたのです。

小林こばやし君くんが、説明せつめいをおわりますと、魔法まほう博士はかせは、ひざをたたいて感心かんしんしました。

「えらいっ! おとなもおよばぬ知恵ちえだっ。わしの負まけだよ。黄金おうごんのトラは、少年しょうねん探偵たんてい団だんのものだ。なお、ねんのために、わしから明智あけち探偵たんていに電話でんわをかけることにしよう。少年しょうねん探偵たんてい団だんが勝かちました。おめでとうと、いっておくよ。」

それから数すう時間じかんののち、明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょの前まえに、にこにこ顔かおの明智あけち探偵たんていと、十じゅう数すう名めいの少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんが立たちならんで待まちかまえていました。そこへ、もとの学生がくせい服ふくにかえった小林こばやし少年しょうねんと、木村きむら少年しょうねんとが、手てをひきあって、もどってきました。

「少年しょうねん探偵たんてい団だんばんざーい、小林こばやし団長だんちょうばんざーい。」

少年しょうねんたちは、いっせいに、両手りょうてをあげて、声こえをかぎりにさけぶのでした。

Click a word · hold for the whole sentence 0%