← Library‹ 天空の魔人 大魔術

小林こばやし君くんの説明せつめいはつづきます。

「登のぼり坂ざかが、おわったところに、製材せいざい会社かいしゃの支線しせんがあります。そこで、レールが二ふたまたにわかれているのです。そのそばに、レールをあっちへやったり、こっちへやったりするポイントがあります。ポイントは、ふつう、駅えきの構内こうないにあるのですが、あの支線しせんは駅えきからとおいので、レールのすぐそばにとりつけてありますね。絵えに書かけば、こんなふうです。

この支線しせんとのわかれめのポイントのところに、三さん人にんの犯人はんにんのうちで、いちばんすばやいやつが、待まちかまえています。トラックにのって、さきまわりをしているのです。この役目やくめは、ぼくでしょうね。ぼくが、井上いのうえ君くんやノロちゃんより、すばしっこいかどうかわかりませんけれどね。

そこで、ぼくが、ポイントのところで待まちかまえていますと、むこうから、貨物かもつ列車れっしゃがやってきます。坂さかを登のぼりきったところですから、まだ、そんなに速力そくりょくは出でていません。

ぼくは、ポイントのぼうをにぎって、いつでもたおせるように身みがまえをします。機関きかん車しゃがレールのわかれめを、とおりすぎました。つぎに、一いち号ごう車しゃ二に号ごう車しゃ、その二に号ごう車しゃの車くるまが、レールのわかれめを、とおりすぎたしゅんかんに、ぼくは、パッとポイントをたおします。すると、レールが支線しせんの方ほうにつながるので、三さん号ごう車しゃは、本線ほんせんをはなれて、支線しせんの方ほうへはいっていきます。

そして三さん号ごう車しゃが、わかれめをとおりすぎたしゅんかんに、ぼくはまた、ポイントをパッともとにもどします。そうすると、つぎの四よん号ごう車しゃの車くるまは支線しせんの方ほうへまがらないで、まっすぐに本線ほんせんを進すすんでいくわけです。この絵えのとおりですよ。

ね、わかるでしょう。ほんとうに、いちかばちかの仕事しごとです。だから、この役目やくめは、すばやい人ひとでなくてはつとまらないのですよ。そうして、三さん号ごう車しゃが支線しせんにはいっても、二に号ごう車しゃと四よん号ごう車しゃとは、ワイヤロープでつながれていますから、四よん号ごう車しゃからあとの貨車かしゃも、そのまま進すすんでいくのです。

三さん号ごう車しゃにいた井上いのうえ君くんはどうするかといいますと、支線しせんにはいるまえに、二に号ごう車しゃのうしろに、とりすがっているのです。貨車かしゃのうしろには、列車れっしゃの屋根やねへ登のぼるための鉄てつばしごが、とりつけてありますから、この鉄てつばしごにすがりついているのです。

さて、ここで、ノロちゃんの役目やくめがあります。いやノロちゃんは、からだが小ちいさいし、力ちからもないが、ほんとうの犯人はんにんは、もっと大おおきくて、強つよいやつです。その犯人はんにんを、かりに、ノロちゃんとしますと、ノロちゃんは、支線しせんのわかれめと製材せいざい会社かいしゃとの間あいだにある森もりの中なかに、待まっているのです。ノロちゃんも、ぼくといっしょに、トラックで、さきまわりをしていたわけですよ。そして、そのトラックも、支線しせんの森もりの中なかにかくしてあるのです。

ぼくがポイントをたおして、支線しせんに送おくりこんだ三さん号ごう車しゃは、いきおいがついているので、ぐんぐん進すすみ、ちょうど森もりのへんで、速力そくりょくがにぶってきます。ノロちゃんは、その貨車かしゃへとびついて、ブレーキをふむのです。

国鉄こくてつの列車れっしゃは、みんな、圧縮あっしゅく空気くうきのブレーキですが、いなかには、まだ足あしぶみブレーキの貨車かしゃがのこっています。美術びじゅつ品ひんのつんであったのは、その旧式きゅうしきの貨車かしゃだったのです。こんなふうに、貨車かしゃの横よこに、長ながい鉄てつのぼうがあって、人間にんげんが、その上うえにのって、ぐいぐいふめば、ブレーキがかかるようになっているのです。ノロちゃんは、そのブレーキをふんで、貨車かしゃを、森もりの中なかでとめる役やくです。

そこへ、ぼくもかけつけて、ふたりで、貨車かしゃの中なかの、めぼしい美術びじゅつ品ひんをはこびだし、待またせておいたトラックにつみこみ、すぐに東京とうきょうの方ほうへ、出発しゅっぱつするというわけです。

これで、目的もくてきをはたしたのですが、本線ほんせんを進すすんでいる列車れっしゃのほうに、まだ仕事しごとが、のこっています。井上いのうえ君くんは、それをやらなければなりません。

井上いのうえ君くんは、二に号ごう車しゃのうしろの鉄てつばしごにとりすがったまま、矢倉やくら駅えきの近ちかくまでいきます。そして、機関きかん車しゃがブレーキをかけて速度そくどをゆるめるのを待まっています。長ながい貨物かもつ列車れっしゃは、駅えきのずっとてまえから、ブレーキをかけるのです。で、機関きかん車しゃがブレーキをかけますと、二に号ごう車しゃまでは速度そくどがおそくなります。ところが四よん号ごう車しゃからあとは、ロープにひかれているのですから、いきおいがついていて、ぐんぐん進すすみますから、前まえの貨車かしゃにドシンとぶっつかるわけです。

井上いのうえ君くんは、それを待まっているのです。そして、二に号ごう車しゃと四よん号ごう車しゃとが、ぶつかってくっついたときに、二ふたつの貨車かしゃの連結れんけつ器きを、ガチャンとはめて、両方りょうほうの連結れんけつ器きにくくりつけてあったロープをとくのです。ほそい針金はりがねで巻まいてあるのを、ペンチで、切きりはなしてしまうのです。そして、ロープをレールの横よこへなげだしておいて、自分じぶんも列車れっしゃからとびおり、ロープをエッチラオッチラと引ひっぱって、近ちかくの木きのしげみの中なかへかくれてしまうのです。

こうすれば、長ながい列車れっしゃのまん中なかの貨車かしゃを一両いちりょうだけ盗ぬすみだせるわけですよ……。

ああ、くたびれた。ぼくの説明せつめいは、これでおしまいです。話はなすと、ひどくややっこしいけれど、やってみれば、わりにかんたんかもしれませんよ。でも、ぼくらの力ちからでは、とてもできません。あの容疑ようぎ者しゃのような、大男おおおとこたちでなくっちゃあ。」

やっと、小林こばやし君くんの長話ながばなしがおわりました。

波野なみのさんも井上いのうえ君くんのおじさんも、しばらくの間あいだだまりこんでいました。ものもいえないほど感かんじいってしまったのです。しばらくして波野なみの分署ぶんしょ長ちょうが、ためいきまじりに、口くちを開ひらきました。

「ああ、わしゃ、はずかしくなったよ。こんな子こどもが、これほどの推理すいりをしようなんて。……ああ、明智あけち先生せんせいはえらい。こんなりっぱな少年しょうねん助手じょしゅを、そだてなすったのだからなあ。」

それにつづいて、井上いのうえ君くんのおじさんも、

「うん、わしは、じつは、少年しょうねん探偵たんてい団だんなんて子こどものあそびごとだと、けいべつしていたが、こういう、えらい団長だんちょうといっしょにはたらいているのなら、一郎いちろうも、しあわせというもんだ。一郎いちろう、しっかりやるんだぞ。」

と、ほめそやすのでした。一郎いちろうというのは、井上いのうえ君くんの名なです。

さて、そのあくる日ひの夕ゆうがたのことです。波野なみの分署ぶんしょ長ちょうが、こおどりするようなかっこうで、トキワ館かんへとびこんできました。

「おい、小林こばやし君くん、小林こばやし君くんはいないか。犯人はんにんがつかまったぞ。」

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