← Library‹ 仮面の恐怖王 大発見

「こいつ、二十にじゅう面相めんそうの部下ぶかかしら。」

ポケット小僧こぞうが、にくにくしそうに、その顔かおを見みおろしていいました。

「そうかもしれない。だが、ひょっとしたら……。」

小林こばやし少年しょうねんが、そういいかけて考かんがえています。

「えっ、ひょっとしたら、なんなの?」

ポケット小僧こぞうは、びっくりして、小林こばやし君くんの顔かおを見みつめました。

「こんな大役たいやくを、部下ぶかにやらせるだろうか。こいつが、きっと二十にじゅう面相めんそうだよ。ぼくたちは、だれも二十にじゅう面相めんそうのほんとうの顔かおを知しらない。いつでも、へんそうしているんだからね。だからきっと、こいつが二十にじゅう面相めんそうだよ。」

ふたりは、しばらく顔かおを見みあわせて、だまりこんでいました。

あのおそろしい二十にじゅう面相めんそうの顔かおを、こんなに近ちかくで見みられようとは、思おもいもよらないことでした。しかし、そいつは、土つちの下したじきになって、うなっているのです。このまま、ほうっておけば、死しんでしまうにきまっているのです。小林こばやし君くんは、いくら悪者わるものでも、ころしてしまうことはできないと思おもいました。たすけてやらなければなりません。そして、警察けいさつにひきわたすのです。それには、まず、こいつが二十にじゅう面相めんそうかどうかを、たしかめなければなりません。

「おい、きみは二十にじゅう面相めんそうだろう。ほんとうのことをいうんだ。」

そうよびかけると、ウーン、ウーンという、うなり声ごえがとまりました。そして、くるしそうな声こえで、かすかに口くちをききました。

「た、たすけて、くれるか?」

「きっと、たすけてやる。そのかわり、ほんとうのことをいいたまえ。きみは二十にじゅう面相めんそうだね。」

「うん、そ、そうだ。」

「よし、わかった。だが、ぼくたちの力ちからでは、どうすることもできない。いま、おとなの人ひとを、よんでくるからね、すこしのあいだ、がまんしているんだ。」

小林こばやし君くんはそういって、あなの外そとへ、ひきかえそうとしました。そのときです。

「わあっ、たいへんだあ。」

ポケット小僧こぞうの、とんきょうなさけび声ごえが、洞どうくつの中なかにひびきわたりました。

「ど、どうしたんだ。ポケット君くん。」

小林こばやし少年しょうねんが、びっくりして、たずねました。

「小判こばんだよ。小判こばんがウジャウジャあるよ。ほら、ここにも、あっちにも……。」

懐中かいちゅう電灯でんとうの光ひかりの中なかに、ピカピカひかっているのは、たしかにむかしの金貨きんかの小判こばんでした。それが落盤らくばんの土つちの中なかにいっぱいまじっているのです。

小林こばやし君くんは、その一いち枚まいを手てにとってみました。たしかに重おもい黄金おうごんの小判こばんです。かぞえてみると、土つちの中なかから頭あたまをだしているのだけでも、百ひゃく枚まい以上いじょうありました。上うえのほうの土つちの中なかに、木きの箱はこのくさってこわれたのが見みえています。小判こばんをつめた箱はこが、こわれて、小判こばんがちらばったのでしょう。

「ああ、わかった。このあなのてんじょうの上うえに、小判こばんの箱はこがうずめてあったんだ。それが、落盤らくばんでここへおちてきたのだ。この上うえには、まだどれだけ小判こばんの箱はこが、うずまっているかしれないぞ。」

じつに大だい発見はっけんでした。むかし、お金持かねもちの人ひとが、これだけ大おおじかけなあなをほっても見みつけることのできなかった、幕府ばくふのご用金ようきんが、落盤らくばんのおかげで、小林こばやし少年しょうねんとポケット小僧こぞうによって発見はっけんされたのです。

「だけど、これはぼくたちのものには、ならないね。」

「むろんだよ。このあなをほらせた人ひとの子こどもか孫まごが、きっとまだ権利けんりを持もっているよ。とにかく、はやく、このことを警察けいさつに知しらせなければ……。」

小林こばやし君くんはポケット小僧こぞうの手てをひっぱって、その場ばを立たちさろうとしました。すると、土つちにうずまっている二十にじゅう面相めんそうが、

「おい、こ、こばやし君くん。お、おれをはやく、た、たすけてくれ……。」

と、くるしそうな声こえでよびかけました。このまま、ほうっておかれては、たいへんだとおもったのでしょう。

「よし、わかっているよ。じきに、たすけだしてやるから、しばらくがまんしているんだ。」

そういいすてて、ふたりは、あなの入口いりぐちのほうへいそぎました。ながい道みちですが、前まえに一いち度どとおったところですから、もう、しんぱいはありません。

まもなく、はるかむこうに、パッとあかるいあなの入口いりぐちが、小ちいさく見みえてきました。やっと太陽たいようの光ひかりを見みて、いきかえった気持きもちです。おいしい空気くうきが、そよそよとながれてきました。

その小ちいさな、あかるいあなが、すすむにつれて、だんだん大おおきくなり、ふたりは、とうとう、さわやかな夜よあけの光ひかりの中なかに出でました。ゆうべおそくから、ひとばんあなの中なかでくらしたのです。時計とけいを見みると午前ごぜん五ご時じでした。

「西洋せいよう館かんの門もんの中なかに、二十にじゅう面相めんそうの自動じどう車しゃがおいてあるはずだよ。あれをとばして、ちかくの町まちの警察けいさつへ知しらせよう。ついでに医者いしゃもつれてくるんだよ。二十にじゅう面相めんそうはひどくやられているから、手てあてをしてもらわなくちゃ。」

小林こばやし君くんがいいますと、ポケット小僧こぞうは、しんぱいそうな顔かおをしました。

「このままいっちゃって、だいじょうぶかい。西洋せいよう館かんの中なかには二十にじゅう面相めんそうの部下ぶかがいるよ。あいつらが、あなの中なかにはいって、二十にじゅう面相めんそうをたすけだし、小判こばんを持もって逃にげちゃったら、たいへんだぜ。」

「だいじょうぶだよ。あいつたち、まだグウグウねているよ。それに、たとえ、あの洞どうくつに気きがついたところで、二十にじゅう面相めんそうのうずまってるところまでいくのが、たいへんだよ、そこへいったとしても、よういに、たすけだせやしないよ。

部下ぶかのやつが二十にじゅう面相めんそうを見みすてて、小判こばんをぬすむ気きになったとしても、あのあなのてんじょうをほって、たくさんの小判こばんの箱はこを取とりだすだけでも、三さん時間じかんや四よん時間じかんはかかるからね。だいいち、ぼくらが自動じどう車しゃにのっていってしまえば、やつら、どうすることもできやしないよ。この山やまを歩あるいて逃にげだしたら、うろうろしてるうちに、つかまってしまうよ。」

小林こばやし君くんの説明せつめいをきいて、ポケット小僧こぞうも安心あんしんしました。

小林こばやし君くんは自動じどう車しゃの運転うんてんがじょうずでした。ふたりは、二十にじゅう面相めんそうの自動じどう車しゃにのると、しずかにスタートさせて山やまをくだっていくのでした。

それから四よん時間じかんほどたったときには、山やまの西洋せいよう館かんは十じゅう八はち人にんという人数にんずうで、ごったがえしていました。ちかくの町まちの警察けいさつから八はち名めいの警官けいかんと、その町まちの医師いし、それから電話でんわれんらくによって、明智あけち探偵たんていと警視けいし庁ちょうの中村なかむら警部けいぶ、その部下ぶかの刑事けいじが五ご名めいもやってきました。それに小林こばやし少年しょうねんとポケット小僧こぞうです。西洋せいよう館かんの門もんの前まえには五ご台だいの自動じどう車しゃがとまっていました。

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