← Library‹ 電人M 秘密の箱

明智あけちは事務じむ所しょを出でる前まえに、警視けいし庁ちょうに電話でんわをかけ、親友しんゆうの中村なかむら警部けいぶを呼よびだして、なにか打うちあわせをしました。そして、遠藤えんどう博士はかせにも、これから、おじゃますると電話でんわをしてから、アケチ一いち号ごうの自動じどう車しゃに乗のって、博士はかせ邸ていへ急いそいだのです。

博士はかせは待まちうけていて、ふたりを応接おうせつ室しつに通とおし、今いままでのことを、くわしく話はなして、名めい探偵たんていの力ちからを借かりたいと、頼たのみました。

「それでは、これから、家いえの中なかを調しらべさせていただきましょう。ところで、助手じょしゅの木村きむらさんという方かたは、おいでになるでしょうね。」

「ええ、自分じぶんの部屋へやにおります。その部屋へやは研究けんきゅう室しつのすぐ前まえにあるのです。」

「そうですか。では、あちらで、木村きむらさんにもお会あいしましょう。」

そして、遠藤えんどう博士はかせの案内あんないで、明智あけちと小林こばやし少年しょうねんは、まず、研究けんきゅう室しつにはいって、すみずみまでも、くわしく調しらべ、はしごを持もってきて、天井てんじょうまでも調しらべたのです。

それから、みんなは木村きむら助手じょしゅの部屋へやに、はいっていきました。

木村きむら助手じょしゅは椅子いすから立たち上あがって、びっくりしたような顔かおで、みんなを迎むかえました。博士はかせは木村きむら助手じょしゅを明智あけち探偵たんていにひき合あわせました。

「木村きむらさん、きょうは、家いえじゅうを、全部ぜんぶ調しらべるのです。いま研究けんきゅう室しつを調しらべたところです。ちょうど、すぐ前まえなので、こんどは、あなたの部屋へやを調しらべさせてもらいますよ。」

明智あけち探偵たんていはそう言いって、部屋へやの中なかを、あちこち歩あるきまわって、調しらべはじめました。

「このなぞを解とくかぎは、四角しかくな窓まどと、秘密ひみつの箱はこです。窓まどから、お化ばけがとびだす。箱はこからもお化ばけが出でてくる。ぼくは、その窓まどと箱はこを捜さがしているのです。」

明智あけち探偵たんていがみょうなことを言いいました。

「窓まどですって。研究けんきゅう室しつも、この部屋へやも、窓まどには、みんな鉄てつ格子こうしがはまっていますが……。」

博士はかせがふしぎそうに、聞ききかえします。

「いや、その窓まどではありません。もっと別べつの窓まどがあるのです。いまに、わかりますよ。それから、秘密ひみつの箱はこです。ぼくは、それを、この部屋へやから捜さがしだしたいと思おもっているのです。箱根細工はこねざいくの秘密ひみつ箱はこのようなものが、この部屋へやにあるにちがいないのです。」

いよいよ、へんなことを言いいます。

「え、この部屋へやに? ここには、ベッドと机つくえのほかには、なにもありません。戸棚とだながありますが、ごらんください、中なかには、がらくたばかりです。」

木村きむら助手じょしゅが、その戸棚とだなの戸とを開ひらいて見みせました。

「いや、そんな、すぐにわかるような場所ばしょではありません。箱根はこね細工さいくですよ。その箱はこはとんでもないところに、かくしてあるのです。お見みせしましょう。ここですよ。」

明智あけち探偵たんていは、つかつかと、ベッドのそばへ、近ちかよりました。そして、いきなりベッド・カバーをめくり、毛布もうふをめくり、敷布しきふ団だんまで、はねのけてしまいました。

「あっ、なにをなさるのです。それはぼくの寝ねているベッドです。なにもあやしいことはありません。」

木村きむら助手じょしゅが、驚おどろいて、明智あけちの手てを止とめようとしました。

「ところが、このベッドに秘密ひみつがあるのです。きみは知しらなかったかもしれないが、これが、箱根はこね細工さいくの秘密ひみつ箱はこですよ。」

明智あけち探偵たんていは布団ふとんをみんなはねのけてしまって、そこにあらわれた板いたのようなものをグッと持もち上あげました。すると、その板いたが蓋ふたになっていて、下したに大おおきな箱はこのような空洞くうどうがあることがわかりました。つまり、クッションの中なかに、大おおきな箱はこがつくりつけてあったのです。

その長ながさ一いちメートル二十にじゅうセンチもある箱はこの中なかに、みょうなものがはいっていたのを、明智あけち探偵たんていがとりだして、みんなの前まえにひろげました。

「あっ、電人Mだっ!」

小林こばやし少年しょうねんが、さけびました。

そうです。それは電人Mのぬけがらだったのです。セミのぬけがらのように、電人Mの外そとがわだけが、そこに丸まるめてあったのです。プラスチックの大おおきな顔かお、黒くろくてうすい鉄てつでできたロボットの着物きもののようなもの。やっぱりそうでした。これを人間にんげんが着きて、ロボットに化ばけていたのです。それが木村きむら助手じょしゅのベッドの中なかから、あらわれたのは、いったい、どういう意味いみなのでしょうか。

みんながあっけにとられていると、ちょうどそのとき、コツコツと、ドアにノックの音おとが聞きこえました。

ドアの近ちかくに立たっていた遠藤えんどう博士はかせが、ドアを開ひらきますと、外そとに三さん人にんの背広せびろ姿すがたの人ひとが立たっていました。

「あ、中村なかむら君くん、いいところにきてくれた。いま、秘密ひみつをひとつ発見はっけんしたところだよ。」

明智あけち探偵たんていが、にこやかに、呼よびかけました。

「おお、明智あけち君くん、さっきの電話でんわでやってきた。きみの指図さしずのとおり、この家いえの表ひょうと裏うらに、三さん人にんずつ見張みはりの刑事けいじを立たたせてある。ここにいるふたりも、ぼくの課かの刑事けいじだ。」

「うん、よくやってくれた。きみたちは、ここにいてくれたまえ。犯人はんにんはこの家いえの中なかにいるんだ。」

「えっ、この家いえの中なかに?」

「うん、いまにわかる。部屋へやにはいって、ドアのところに、がんばっていてくれたまえ。」

明智あけち探偵たんていは、中村なかむら警部けいぶたちのために、電人Mのぬけがらを、発見はっけんしたことを話はなしたあとで、ベッドの箱はこの中なかにおいてある、もうひとつのものを、指ゆびさしました。

「これはテープ・レコーダーだ。コードが箱はこのすみからベッドの下したに出でている。そして、床板ゆかいたの隙間すきまをつたって、むこうの柱はしらの横よこから、天井てんじょうの空気くうき穴あなまで、つづいている。コードが、柱はしらとかべのすきまに、うまくかくしてあるから、ちょっと見みたのではわからない。

遠藤えんどうさん、さっきぼくが四角しかくな窓まどといったのは、この天井てんじょうの空気くうきぬきの穴あなですよ。この部屋へやばかりではありません。研究けんきゅう室しつやあなたの寝室しんしつにも、おなじ空気くうき穴あながあります。そして、このテープ・レコーダーのコードは、その両方りょうほうの部屋へやの空気くうき穴あなの上うえまで、ひっぱってあるのです。少年しょうねん探偵たんてい団だんのポケット小僧こぞうが、今朝けさ、天井てんじょう裏うらにしのびこんで、すっかり調しらべたのですよ。」

「あっ、そうだったのか。じゃ、わたしの寝室しんしつで聞きこえた声こえも、研究けんきゅう室しつで電人Mと治郎じろうが争あらそっていた声こえも、このテープ・レコーダーから出でていたのですね。空気くうきぬきの穴あなの上うえに、スピーカーが仕掛しかけてあるのですね。」

博士はかせが、すっかりわかったというように、うなずきながら、いうのでした。

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