← Library‹ 電人M ガレージの秘密

もうとっくに、お昼ひるを過すぎていましたので、みんなが、食事しょくじをしてから、四よん台だいの自動じどう車しゃをつらねて、練馬ねりま区くの桜井さくらいさんのガレージに行いくことになりました。二十にじゅう面相めんそうにも、手錠てじょうをはずして食事しょくじをさせ、裏表うらおもての見張みはりに立たっていた六ろく人にんの刑事けいじさんたちにも、弁当べんとうをだしたのです。

いちばん先さきの車くるまには、明智あけち探偵たんていと小林こばやし少年しょうねんと遠藤えんどう博士はかせ、二にばんめには、刑事けいじが三さん人にん、三さんばんめには、中村なかむら警部けいぶとふたりの刑事けいじにかこまれて二十にじゅう面相めんそうが、四よんばんめには、残のこりの刑事けいじ三さん人にん、という順序じゅんじょです。これだけ用心ようじんをしていれば、いくら二十にじゅう面相めんそうでも、逃にげることはできないはずです。

やがて、桜井さくらいさんのガレージの前まえにつきました。さびしい町まちです。そのへんは、いけがきにかこまれた、広ひろい庭にわの家いえが多おおく、木きが青々あおあおと茂しげって、シーンと静しずまりかえっています。人通ひとどおりも、めったにありません。

そこで、みんな車くるまからおりて、八はち人にんの刑事けいじは、手錠てじょうをはめた二十にじゅう面相めんそうのまわりを、ぐるっと、とりかこみました。

小林こばやし少年しょうねんの案内あんないで、明智あけち探偵たんていと、中村なかむら警部けいぶが、桜井さくらいさんの家いえにはいっていって、ガレージを調しらべさせてもらいたいと話はなしました。

桜井さくらいさんは、ガレージの秘密ひみつが、わからないので、困こまっていたところですから、すぐに承知しょうちをしました。そして、自分じぶんも運転うんてん手しゅをつれて、表ひょうにでてきました。

運転うんてん手しゅがガレージのとびらを開ひらきますと、あの青あおい自動じどう車しゃが、ちゃんとおさまっていました。

明智あけち探偵たんていはひとりで、ガレージの中なかにはいって、なにか調しらべていましたが、しばらくすると、ニコニコして出でてきました。

「それじゃ、ひとつ実験じっけんをしてみましょう。きみ、この自動じどう車しゃを、外そとに出だしてくれませんか。そして、ぼくの自動じどう車しゃを入いれてみることにします。」

明智あけち探偵たんていのことばにしたがって、桜井さくらいさんの運転うんてん手しゅが、青あおい車くるまに乗のって、それをガレージの外そとに出だしました。

「みなさん、どんなことが起おこるか、よく見みててください。」

明智あけち探偵たんていはそう言いって、小林こばやし少年しょうねんとふたりで、アケチ一いち号ごうの自動じどう車しゃに乗のると、静しずかにガレージの中なかに車くるまを乗のり入いれました。

「ガレージの戸とをしめてください。そして、中なかでクラクションを鳴ならすまで、あけないように。」

明智あけち探偵たんていがガレージの中なかの車くるまの窓まどから、首くびを出だして、どなりました。桜井さくらいさんの運転うんてん手しゅが、とびらをぴったりしめました。

さあ、なにが起おこるのでしょう。みんなは、ガレージのとびらをみつめたまま、静しずまりかえっていました。

十じゅう分ふんもたったでしょうか。中なかからクラクションの音おとが聞きこえました。運転うんてん手しゅが大急おおいそぎで、とびらを開ひらきました。

アケチ一いち号ごうはもとのままです。

「みなさん、中なかにはいって、調しらべてください。」

車くるまの中なかから、小林こばやし少年しょうねんがさけんでいます。

中村なかむら警部けいぶ、遠藤えんどう博士はかせ、桜井さくらいさんの三さん人にんが、中なかにはいっていきました。

「おやっ、明智あけち君くんはどうしたのだ。」

中村なかむら警部けいぶが、驚おどろいて、たずねました。

「先生せんせいは消きえてしまったんです。」

「ほんとうか。いったい、どうしたんだ。」

それから、中村なかむら警部けいぶは車体しゃたいの下したや、シートの下したや、うしろのトランクの中なかなど、怪あやしいところは残のこらず調しらべましたが、明智あけち探偵たんていの姿すがたは、どこにもありません。

ガレージのかべや、床ゆかの鉄板てっぱんをたたきまわってみましたが、どこにも、かくし戸とはありません。

「ふしぎだなあ。小林こばやし君くんきみにはわかっているんだろう。早はやく、種明たねあかしをしたまえ。」

中村なかむら警部けいぶが言いいますと、小林こばやし少年しょうねんは、

「それじゃあ、種明たねあかしをしますから、みなさん車しゃに乗のってください。そして、外そとから、ガレージの戸とをしめさせてください。」

と言いいますので、警部けいぶと博士はかせと桜井さくらいさんは、外そとから戸とをしめさせておいて、車くるまに乗のりこみました。

すると、小林こばやし君くんは、一いち度ど車しゃからでて、ガレージのすみにうずくまって、なにか、やっていましたが、カチッと、音おとがしたかと思おもうと、どこからか、かすかに、モーターのうなりのような、ひびきが、聞きこえてきました。

「おやっ、この車くるまは、下したへ沈しずんでいくじゃないか。」

エレベーターがおりるように、自動じどう車しゃが下したへさがって行いくのです。床ゆかの鉄板てっぱんも、いっしょに、さがって行いくのです。

グングンさがって行いきます。ガレージの天井てんじょうと自動じどう車しゃの間あいだが、みるみる、へだたっていくのです。

やがて、ガレージの下したには、ガレージよりも広ひろい、コンクリートの部屋へやがあることがわかってきました。

右手みぎての方ほうが、いちばん広ひろくなっています。そこに明智あけち探偵たんていのニコニコした顔かおがあらわれ、首くびから胸むね、腹はらから腰こしと、だんだん、全身ぜんしんが見みえてきました。ガレージの天井てんじょうには電灯でんとうがついているので、その光ひかりが、ここまでとどくのです。

「おお、明智あけち君くん。ここにいたのか。それにしても、なんという大おお仕掛しかけだ。ガレージの、床ゆかぜんたいが、モーターで、あがったりさがったりするんだね。桜井さくらいさん、あなたは、この仕掛しかけをごぞんじなかったのですか。」

中村なかむら警部けいぶがたずねますと、桜井さくらいさんは、目めをまんまるにして答こたえました。

「いや、知しるもんですか。わたしは、この家いえを前まえの持もち主ぬしから、ガレージつきで買かったのですよ。こんな仕掛しかけをしたのは、前まえの持もち主ぬしでしょうか。」

「前まえの持もち主ぬしというのが、じつは二十にじゅう面相めんそうか、かれの部下ぶかだったかもしれませんよ。そして、なにくわぬ顔かおで、あなたに売うりつけ、いざというときに、このガレージをかくれ場所ばしょにするつもりだったのでしょう。」

明智あけち探偵たんていが言いいました。

「で、治郎じろうは……治郎じろうはどこにいます。」

遠藤えんどう博士はかせが、待まちきれないで、車くるまのドアを開ひらきながら、あわただしくたずねました。

「ぼくも治郎じろう君くんはここにかくされているのではないかと、疑うたがったのです。しかし、ここにはいません。ここは、からっぽです。ただ、このすみに、こんなものが置おいてあったばかりです。」

明智あけち探偵たんていの指ゆびさすところに、大おおきな丸まるいガラスのようなものが見みえました。そのそばに、うすい鉄てつのよろいのようなものが、まるまっています。

「あっ、さっき木村きむらのベッドの秘密ひみつ箱はこの中なかにあったのと同おなじものだ。電人Mの変装へんそう衣装いしょうだなっ。」

中村なかむら警部けいぶがさけびました。

「そうだよ。あいつは、方ほうぼうに、これを用意よういしておくのだ。いつでも使つかえるようにね。」

「それにしても、どうして、この鉄板てっぱんの床ゆかをあげ下さげするんだ。どっかに、スイッチでもあるのかね。」

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