← Library‹ 電人M 神さまになった電人M

やがて、ふたりは、ふしぎな機械きかいの部屋へやに、運はこびこまれました。

うす暗ぐらい部屋へやですが、いままでのような暗闇くらやみではありませんから、あたりのようすが、よくわかります。

大おおきな機械きかいがならんで、ジーンと腹はらにしみこむような音おとをたてています。

向むこうにすえてあるのは、発電はつでん機きでしょうか、それがジーンと、まわっているのです。茶色ちゃいろのせとものの塔とうのようながいし(電柱でんちゅうなどについている電線でんせんをとめるせともの。碍子がいし)の重かさなったものが、あちらこちらに立たっています。

そのがいしとがいしの間あいだに、太ふとい電線でんせんが、張はりめぐらされ、ところどころで、パチッ、パチッと青あおい火花ひばなを散ちらしています。

ガラス管かんが、あちこちに、とりつけられ、その管くだの中なかを、紫色むらさきいろの火花ひばなが、まるでヘビのように、ぐねぐねよじれながら、走はしっています。

部屋へやじゅうに電気でんきがみちわたり、からだがしびれるような気きがします。

ポケット小僧こぞうは、その部屋へやに、はいるやいなや、パッと、とび起おきて、すばやく、もの陰かげに身みをかくしました。いろいろな機械きかいが、いっぱい置おいてあるので、かくれ場所ばしょは、どこにでもあるのです。

動うごく床ゆかがとまったので、治郎じろう君くんも立たち上あがって、ふしぎな電気でんきの部屋へやを、ぼんやり見みまわしていました。

そのとき、向むこうのドアが開ひらいて、あの恐おそろしい電でん人にんMが、姿すがたをあらわしました。

「治郎じろう君くん、こわがらなくてもいい。きみをどうしようというのではない。ただ、きみには、しばらく、ここにいてもらわなければならないから、退屈たいくつしないように、おもしろいものを見みせてやるのだ。」

電人Mは、歯車はぐるまのきしるような声こえで、ゆっくりと、ものを言いいました。

「これは、おれの発明はつめいした電気でんきの部屋へやだ。電気でんきの力ちからで、どんなことでもできる。人間にんげんや動物どうぶつを、電気でんきでとかすこともできる。また、人間にんげんや動物どうぶつを電気でんきで生うみだすこともできる。おれは動物どうぶつをいくらでも、造つくりだすのだ。

きみはさっき、おそろしくたくさんの火星かせい人にんを見みただろう。あれは、みんなおれが造つくりだしたものだ。これまで、生いき物ものを造つくるのは、神かみさまばかりだと言いわれていた。ところがどうだ、おれは、その生いき物ものを造つくるんだよ。だから、おれは神かみさまなのだ。

では、まず、人間にんげんをとかす方ほうから見みせてやろう。」

電人Mはそう言いって、なにか合図あいずをすると、電人Mの部下ぶからしい、ジャンパーをきた、ひとりの青年せいねんが、はいってきました。

「これから、おまえをとかすのだ。この治郎じろう君くんに見みせてやるのだよ。心配しんぱいすることはない。あとでまた、生いきかえらせてやるからな。」

部屋へやのすみに、大おおきな鉄てつの箱はこのようなものが、立たててありました。そのまんなかが、高たかさ二にメートル、幅はば六十ろくじゅうセンチほどの、ガラス張ばりになっていて、中なかがよく見みえるのです。

部下ぶかの青年せいねんは、うしろの入口いりぐちから、その中なかにはいって、ガラスの向むこうに立たちました。箱はこの中なかに仕掛しかけた、ぼんやりした光ひかりが、青年せいねんのからだ全体ぜんたいを、照てらしています。

「さあ、よく見みているんだよ。」

電人Mは、そう言いって、かべにあるスイッチ盤ばんの中なかの一ひとつのスイッチをカチンといれました。

すると、にわかに、部屋へやの中なかが、地震じしんのようにゆれはじめ、ガラス管かんの中なかの紫色むらさきいろの火花ひばなは、血ちのような赤あかい色いろに変かわり、あちらにも、こちらにも、恐おそろしい火花ひばなが、空中くうちゅうをとびかうのでした。

あるものは太ふとい火ひの棒ぼうとなって、あるものは、箒ほうきのように先さきが開ひらいて、あるものは、ネジのように、グルグル回まわりながら、白しろく、青あおく、黄色きいろく、パチッ、パチッ、パチッと、いなびかりのように火花ひばなを散ちらすのです。

すると、おお、ごらんなさい。ガラスの向むこうに立たっていた青年せいねんのからだが、みるみるとけていくではありませんか。顔かおも、胸むねも、手ても、足あしも、まるでロウがとけたように、形かたちを失うしない、あっと思おもう間まに、肉にくはすっかりとけさって、あとには、骸骨がいこつだけが、残のこったのです。ガラスの向むこうに、骸骨がいこつがじっと立たっているのです。

「アハハハ……、びっくりしているね。だが安心あんしんしたまえ、おれは人殺ひとごろしは大嫌だいきらいだ。あの男おとこは、またもとのように、生いかしてやるのだよ。」

電人Mは、手早てばやく、スイッチのいれかえをしました。

すると、部屋へやじゅうの電気でんきの火花ひばなの色いろが変かわってきました。青あおはオレンジ色いろとなり、赤あかはもも色いろとなり、全部ぜんぶの色いろが変かわって、めまぐるしく、火花ひばなを散ちらすのです。

すると、また、ガラスの向むこうに変化へんかが起おこり、見みる間あいだに骸骨がいこつに肉にくがつき、肉にくが固かたまって、たちまち、もとの青年せいねんに、もどってしまったではありませんか。やがて、青年せいねんは箱はこのうしろからでてきて、ニコニコしながら、ちょっと頭あたまをさげると、そのまま、外そとへ出でて行いってしまいました。

「さあ、こんどは、生うみ出だす方ほうだ。こっちの機械きかいを見みるんだよ。」

電人Mはそう言いって、部屋へやの別べつのすみへ、歩あるいて行いきました。

そこには、新聞しんぶん社しゃの輪転機りんてんきのような、歯車はぐるまのいっぱいついた、大おおきな機械きかいがすえつけてありました。

「これは、生いき物ものの形かたちをつくる機械きかいだ。いまは火星かせい人にんの型かたがとりつけてあるから、それを見みせてあげよう。ここからは火星かせい人にんの形かたちのものが出でてくるだけで、まだ生いきてはいない。それに命いのちを吹ふき込こむのは、あちらの電気でんきの力ちからだ。さあ、動うごかすよ。よく見みているんだ。」

電人Mは、またスイッチ盤ばんの前まえに立たって、いくつかのスイッチを入いれました。

ガラガラと歯車はぐるまの回まわる音おと、ガチャンと、なにかのぶっつかる音おと、部屋へやの中なかは、にわかに、さわがしくなってきました。

機械きかいの上うえに、大おおきな鉄てつのじょうごのようなものがついていて、そこに、別べつの鉄てつの箱はこから、黄色きいろい粉こなのようなものが、ザーッと流ながれこむ。これが生いき物もの製造せいぞうの原料げんりょうなのでしょう。

その粉こなが、機械きかいの中なかをくぐっていくうちに、だんだん、形かたちができ、最後さいごに、下したの方ほうの口くちから、はきだされるときには、ちゃんと火星かせい人にんの姿すがたになっているのです。人間にんげんぐらいの大おおきさの、あのタコのような怪物かいぶつです。

電人Mは、それを、両手りょうてで抱だき上あげて、治郎じろう君くんに見みせました。

「ほら、これはゴムのようなものでできた人形にんぎょうだよ。まだ生いきちゃいない。いいかね。こんどは、電気でんきの力ちからで、こいつに、息いきを吹ふきこむのだ。」

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