警官たちがかけつけてきました。
「ここです。この部屋にはいってかぎをかけました。」
小林君がそういいますと、警官のひとりが、かぎあなをのぞきましたが、かぎがさしたままになっていて、なにも見えません。
そのとき部屋の中で、なにかさけぶ声がきこえました。どうも、ふたりの声のようです。するとこの部屋には人がいて、ロボットとあらそっているのでしょうか。
「たすけてくれえ……。」
その人は、ロボットにひどいめにあわされているようです。
「よし、このドアをやぶるんだっ。」
警官はそうさけんで、ドシン、ドシンと、からだをドアにぶっつけはじめました。しかし、ドアは、なかなかこわれません。なんども、なんども体あたりをしているうちに、やっとドアのちょうつがいがはずれたので、人びとはドアをおしたおして、中へとびこんでいきました。
ひとりの背広の男が、開いた窓から、そとをのぞいています。
「どうしたのです。ロボットはどこへいったのです。」
警官がたずねますと、その男はふりむいて、
「この窓から、中庭へとびおりました。ふしぎです。やつは、たおれもしないでそのまま、あの入口から一階へはいっていきました。」
空へ風船のようにとびあがるほどのロボットですから、六階からとびおりるくらいへいきなのでしょう。
それをきくと、ひとりの警官がさけびました。
「よし、ぼくはエレベーターでおっかける。きみはこの電話で、パトカーの応援をたのんでくれ。」
そしてへやをとびだすと、エレベーターのほうへはしりました。おおぜいのMビルの会社の人たちも、おなじようにエレベーターへいそぎました。
あとにのこった警官は、電話をかけおわると、これもエレベーターのほうへ、かけだしていきます。
あたりの部屋からあつまった人たちも、それぞれひきあげてしまい、長い廊下に、人かげが見えなくなりました。
すると、やぶれたドアからさっきの男が、大きな四角のズックのかばんをさげて、出てきたのです。あたりを見まわして、階段のほうへいそいでいきます。
小林少年は、廊下のまがりかどに身をかくして、男がでてくるのをまっていました。
この男があやしいとかんがえたのです。警官がドアをやぶっているあいだに、ロボットの変装をぬいで、ふつうの人間にもどっていたのかもしれないからです。
いま、その男が大きなかばんをもって出てきたのを見ると、もう、それにちがいないとおもいました。ロボットのからだは、うすい金属でこしらえてあって、それがこまかくおりたためるようにできているとすれば、あのかばんの中におさまってしまうでしょう。プラスチックの頭だって、いくつにも、われるようになっているのかもしれません。
それに、ロボットの背の高さは二メートルにちかいのですから、プラスチックの頭の下に、人間がはいっていることもできるわけです。
小林君は、そのあやしい男のあとを、ソッと尾行しました。
男は、エレベーターでは、だれがのっているのかわからないので、あぶないとおもったのでしょう、階段をトコトコおりていきます。小林君にとっては、そのほうがつごうがいいのです。いちども見うしなわずに、Mビルのそとまで尾行することができました。
男は、そこにならんでいる一台の自動車にのりこみました。運転手はいないようですから、じぶんで運転するのでしょう。
それを見とどけると小林君も、じぶんの車のほうへはしっていって、のりこみました。
そして、自動車の追跡がはじまったのです。
男の車は池袋から豊島園をすぎて、練馬区の畑の中へはいっていきました。もうそのころは、日がくれて、あたりはまっくらでした。
広い畑の中の道をしばらくいくと、どこかの会社の建築用地なのでしょう、長い板べいのつづいているところにでました。
男の車は、その板べいのきわでとまり、男はへいについている戸をひらいて、中へはいっていったようです。
小林君も、五十メートルほどへだたったところで車をおりると、ソッと、男の車のほうへちかづいていきました。
男の車は、ヘッドライトをけしてしまいましたし、そのへんには電灯もないので、あたりはまっくらでしたが、星空のうすあかりで、長いへいがぼんやりと見えています。
男のはいったへいの戸のそとまでいって、じっと耳をすましていますと、スーッと、音もなく戸がひらき、そこに、男がつったっていました。
小林君はびっくりして、身をかくそうとしましたが、もうまにあいません。
「ハハハ……、まっていたんだよ。きみが車で尾行していることも、ちゃんとしっていたのさ。きみは、やっぱりうまくちえをはたらかせたね。おまわりさんより頭がいいぞ。」
もう、こうなっては、しかたがありません。小林君もどきょうをすえました。
「じゃあ、きみがロボットにばけていたんだね。」
「そうだよ、ロボットの衣しょうはこまかくおりたたんで、このかばんの中にいれてある。まさか、あんなに早くロボットが人間にかわるなんて、おもいもよらないものだから、おまわりさんたちも、すっかりだまされてしまったのさ。それを、きみだけが見やぶったのは、さすがに明智探偵の弟子だよ。」
こんなやつにほめられても、いっこうにうれしくありません。
「じゃあ、きみが、さっき電話をかけてきた電人Mなのかい。」
「いや、そうじゃない、電人Mというのは、おれたちのおかしらだ、おれはその部下なのさ、電人Mがどんなにおそろしいおかただか、いまに、きみにもわかるときがくるだろうよ。」
「それにしても、きみは、ぼくがつけてくるのをしりながら、なぜにげなかったの。ぼくをここへおびきよせたのは、なんのためなんだい。」
「それは、おもしろいものを見せてやろうとおもったからさ。つまり、宣伝のためだよ。」
「えっ、宣伝のためだって。」
「そうさ、宣伝さ。そのために、おれたちは電光ニュースや、広告塔にいたずらをしたり、印刷した紙をばらまいたり、火星人のような怪物をあらわしたり、ロボットを空へとばしたりしているんだ。」
「ロボットといえば、きょうのきみのロボットと、あの空へとんだロボットとは、つくりかたがちがうんだね。」