← Library‹ 妖星人R 地底の囚人

お話はなしかわって、こちらは井上いのうえ一郎いちろう君くんです。渋谷しぶや区くのはずれの、神社じんじゃの森もりの中なかで、カニじいさんのために、からだをけされてしまった井上いのうえ君くんは、あれから、R怪人かいじんのすみかに、つれていかれました。R怪人かいじんは、はやくも、東京とうきょうのどこかへ、仮かりのすみかを、つくっていたのです。

「きみはにげだすことができない。からだがきえてしまったのだから、だれも、きみをみとめてくれないからだよ。それよりも、いいところへつれていってやろう。きみにはすこし、用事ようじがあるのだ。だが、しばらく目めをかくすよ。そこへいく道みちをきみにしられたくないのでね。」

カニじいさんは、そういいながら、黒くろいきれで、井上いのうえ君くんに目めかくしをしてしまいました。

井上いのうえ君くんは、もうかくごしています。むこうのいうままになって、R怪人かいじんの秘密ひみつをさぐってやろうと、けっしんしているのです。

目めかくしをされたかとおもうと、スーッと、からだが、宙ちゅうにうきました。カニじいさんに、だきあげられたような気持きもちです。

それから、なにか、いすみたいなものの上うえに、おろされましたが、いすそのものが、フワフワと、宙ちゅうにういているのです。

それから三十さんじゅう分ふんほど、空中くうちゅうをただよっているようなかんじが、つづきましたが、やがて、それがピッタリとまると、またじいさんにだきあげられ、家いえの中なかにはいって、階段かいだんをのぼったり、くだったりしました。

あんなヨボヨボのじいさんが、からだの大おおきい井上いのうえ君くんを、こんなにらくらくと、はこぶのは、へんですが、カニじいさんは、じつはR怪人かいじんがばけているのですから、井上いのうえ君くんをはこぶぐらい、なんでもないことです。

「さあ、もう目めかくしをとるよ。きみには、あとで、ゆっくりはなしたいことがあるんだ。しばらく、ここにまっていなさい。」

そういって、目めかくしをはずすと、カニじいさんは、部屋へやをでて、ドアをしめ、外そとからカチンと、かぎをかけてしまいました。

窓まどのない、みょうな部屋へやです。てんじょうから小ちいさな電球でんきゅうが一ひとつさがっているだけで、うすぐらいのです。

井上いのうえ君くんは、なんだか、めまいがするようなかんじでした。部屋へやぜんたいが、モヤモヤと、ゆれうごいているのです。

部屋へやというよりも、壁かべです。四方しほうの壁かべが、へんなぐあいに波なみうち、うごめいているのです。

R怪人かいじんの魔法まほうにかかっているのでしょうか。

いや、そうではない。壁かべがうごくのに、なにかわけがありそうです。もっと壁かべのそばによって、たしかめてみなければなりません。

井上いのうえ君くんは、右手みぎての壁かべに、近ちかよって、目めをこらして、見みつめました。

ウジャウジャと、うごめいています。なにか小ちいさいものが、かずしれず、ひしめきあっているのです。

「あっ、カニだっ。」

そうです。それは何千なんぜんびきのカニが、四方しほうの壁かべいっぱいにはいまわり、ひしめきあっているのでした。

カニ怪人かいじんがあらわれるときには、かならず、カニの大群たいぐんが、まえぶれをつとめます。あのカニは、みんなここにかってあるのでしょうか。

そのとき、うしろのドアがサッとひらいて、何者なにものかが、はいってきました。

井上いのうえ君くんは、それに気きづきましたが、こわくて、ふりむくことができません。壁かべをはいまわっているカニを、何なん万まん倍ばいにしたような怪物かいぶつがうしろに立たっているにちがいないからです。

「アハハハ……、きみをここへつれてきた、カニじいさんだよ。そのカニじいさんが、もとの姿すがたにかえったまでさ。」

しかたがないので、井上いのうえ君くんは、おそるおそる、ふりむきました。ああ、やっぱりそうです。あのおそろしいカニのおばけが、そこにたちはだかっていたのです。

「きみは少年しょうねん探偵たんてい団だんの井上いのうえ一郎いちろう君くんだね。おれはちゃんとしっている。それで、きみをここにとじこめ、きみをおとりにして、ほかの少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんを、おびきよせようというわけなのさ。ハハハ……なぜかって? これには、ふかいわけがあるんだよ。

きみ、ポケットをさぐってごらん。B・Dバッジがなくなっているだろう。きみたちはいつも、二に―三十さんじゅう個このB・Dバッジをポケットにいれている。それをぜんぶとりだして、このうちの門もんの前まえへ、ばらまいておいた。

わかるかね。そうして、きみのなかまを、ここにおびきよせるのさ。

小林こばやし団長だんちょうがきてくれれば、おれは、じつにうれしいのだがね。ハハハハハハ……。」

ふしぎです。地球ちきゅうへやってきたばかりのR妖星ようせい人にんが、少年しょうねん探偵たんてい団だんのことを、こんなにくわしく、しっているなんて、じつにふしぎです。

そして、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんを、おびきよせるとは、いったい、どういうわけなのでしょう。なんのためなのでしょう。

「わかったかね。きみはもう、おれたちのなかまだ。からだをけされているんだから、うちへかえったって、だれもあいてにしてくれない。ここにいるのが、きみのためだよ。そのうちに、また、もとのからだにしてやるからね。」

井上いのうえ君くんはふしぎでしかたがありません。妖星ようせい人にんが、どうして、こんなにうまく日本にっぽん語ごがしゃべれるのでしょう。地球ちきゅう人にんとは、まったくちがった、知恵ちえや力ちからをもっているにしても、やっぱり、ふしぎというほかはないのです。

それから、井上いのうえ君くんは、この、どこともしれぬあやしい家いえの中なかに、すむことになりました。

カニ怪人かいじんは十じゅう人にんぐらいいるようでした。しょっちゅう、でたりはいったりしているので、はっきりした数かずはわかりませんが、だいたい十じゅう人にんぐらいのようでした。

怪人かいじんたちは、なにをたべているのか、わかりませんが、井上いのうえ君くんには、パンやミルクやコンビーフなどを、たべさせてくれました。そのうえ、やわらかいベッドのある、小ちいさい部屋へやを、あてがってくれましたので、井上いのうえ君くんは、なに不ふ自由じゆうなく、暮くらすことができたのです。

怪人かいじんたちは、なにかいそがしそうに、でたり、はいったりして、ときには、みんなでかけて、井上いのうえ君くんひとりになることもあります。

井上いのうえ君くんは、そういうときを、まちかねて、怪人かいじんのすみかを、しらべました。

この家いえは二に階かいだての西洋せいよう館かんで、地下ちか室しつもあるし、十じゅう五ごほどの部屋へやがあることがわかりました。

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