← Library‹ 妖星人R 小林少年

そのあくる日ひのお昼ひるすぎのことです。

井上いのうえ君くんが、あてがわれた部屋へやのいすに、こしかけていますと、いきなりドアがひらいて、ひとりの少年しょうねんが、ころがりこんできました。だれかが、外そとから、つきとばしたのです。

「あっ、小林こばやしさん。」

井上いのうえ君くんがびっくりして、その少年しょうねんをだきおこそうとしました。

「アハハハ……、井上いのうえ、おまえの団長だんちょうさんを、つれてきてやったぞ。まあ、ゆっくり、ふたりで、話はなしでもするがいい。」

そして、パタンとドアがしまり、カチカチと、かぎをかける音おとが、きこえました。

井上いのうえ君くんひとりのときは、かぎもかけなかったのに、小林こばやし少年しょうねんとふたりになったので、カニ怪人かいじんは、用心ようじんぶかく、かぎをかけて、たちさったのです。

「B・Dバッジだよ。あれをひろって、とどけてくれた人ひとがあったので、ぼくは、こっそりしのびこもうとしたんだが、すぐにみつかってしまった。ひょっとしたら、あのバッジは、敵てきがわざとおとしておいたのじゃないかな。」

小林こばやし少年しょうねんがいいますと、井上いのうえ君くんはうなずいて、

「そうだよ。カニ怪人かいじんのしわざさ。しかし、ね、小林こばやしさん、ぼくは、たいへんなことを発見はっけんしたんだよ。」

井上いのうえ君くんは、そういって、いままでのことを、すっかり、はなしてきかせました。

「ふうん、きみは消けされちゃったのかい。これには、なにか、わけがありそうだね。ぼくには、こうして、ちゃんと、きみの姿すがたが見みえるんだからね。」

「でも、子こどもたちには、ぜんぜん見みえなかったんだがなあ。ぼくにぶっつかって、ころんで、ないた子こがあったくらいだよ。ぼくは、かくれみのをきたようで、ほんとうにおもしろかった。」

「うん、きっと、わけがあるんだ。それから、地下ちか室しつにとじこめられている人ひとのこと、カニ怪人かいじんの衣装いしょうの下したから日本にっぽん人にんがあらわれたこと、みんな明智あけち先生せんせいの考かんがえとあうのだよ。やっぱり先生せんせいはえらいなあ。」

「じゃ、どういうことになるんだい? カニ怪人かいじんは、いったい、何者なにものなんだい?」

「ぼくには、まだわからない。そんなことを、ここで議論ぎろんしているよりも、はやく、このことを、明智あけち先生せんせいにしらせたい。なににしても、ふたりで、ここを、ぬけださなくっちゃあ。いや、ふたりじゃない。できれば地下ちか室しつの人ひとも、いっしょに、つれだしたいね。」

小林こばやし君くんは、そういって、しばらく考かんがえていましたが、にわかに、目めをかがやかせて、

「あっ、いいことがある。三さん人にんでぬけだせるよ。こんばん、それをやってみよう。きっと、うまくいくよ。」

そうして、ふたりは、しきりに、なにかささやきあうのでした。

さて、そのばん、八はち時じごろのことです。

小林こばやし少年しょうねんは、いつもポケットにいれている万能ばんのうかぎで、ドアをひらいて、井上いのうえ君くんといっしょに、部屋へやを出でました。

それから三十さんじゅう分ふんほどたつと、三さん人にんのカニ怪人かいじんが、玄関げんかんから出でていきました。玄関げんかんには、番人ばんにんのカニ怪人かいじんがいましたが、三さん人にんを見みると、はさみのある手てをふって、あいさつしました。三さん人にんづれのほうも、おなじように、手てをふって、それにこたえ、そのまま外そとへ出でていきました。

門もんを出でると、あたりは、いちめんの原はらっぱで、おそろしく、さびしい場所ばしょでした。

「このへんは、北多摩きたたま郡ぐんなんだよ。」

カニ怪人かいじんのひとりが、あとのふたりに、いってきかせました。

怪人かいじんの家いえから二百にひゃくメートルほどへだたった林はやしの中なかに、一いち台だいの自動じどう車しゃが、ライトを消けして、とまっていました。三さん人にんの怪人かいじんは、じゃまになる頭あたまのカニのこうらだけとって、おりたたんで手てにもつと、自動じどう車しゃにのりこみ、ひとりがハンドルをとって、都心としんにむかって、車くるまをすすめました。

車くるまは広ひろい街道かいどうを、まっしぐらに、走はしっていきます。

「へんだな。あの車くるま、さっきから、ずっと、つけてくるよ。おやっ、パトカーじゃないか。ほかに車くるまはいないから、きっとこの車くるまを、おっかけてくるんだよ。」

「ぼくたちの、へんな姿すがたを見みて、あやしんだのかもしれないね。かまわないよ。おっかけさせておくさ。」

ハンドルをにぎっていた怪人かいじんが、こたえました。

「あっ、パトカーが二に台だいになった。二に台だいで、おっかけてくるよ。」

というまに、二に台だいのパトカーは、サイレンをならしはじめました。ねらわれているのは、三さん人にんの怪人かいじんの車くるまにちがいないことが、わかってきました。

しかし、けっして、速度そくどをゆるめません。そのまま、走はしっていますと、あっ、こんどは、前まえのほうから、べつのパトカーが、走はしってくるではありませんか。

はさみうちにされたのです。

こうなっては、車くるまをとめるほかありません。怪人かいじんたちの車くるまは、さびしい、いなか道みちで、ピッタリと、停車ていしゃしました。

前まえとうしろのパトカーも、とまりました。そして、三さん台だいの車くるまから、五ご人にんの警官けいかんがおりてきて、怪人かいじんの車くるまを、とりかこみました。

警官けいかんの懐中かいちゅう電灯でんとうが、パッと、こちらの車内しゃないへ、さしつけられます。

「きみたちは、何者なにものだっ。」

どなり声ごえといっしょに、二に梃ちょうのピストルが、こちらをねらっています。

車内しゃないの三さん人にんは、無言むごんのまま、大おおいそぎで、怪人かいじんの衣装いしょうをぬぎはじめました。

さいしょに、顔かおをあらわしたのは、小林こばやし少年しょうねんでした。

「ぼく、明智あけち探偵たんていの助手じょしゅの小林こばやしです。」

「あっ、小林こばやし君くんか。」

新聞しんぶん写真しゃしんでおなじみの小林こばやし少年しょうねんですから、おまわりさんたちも、よくしっています。

「どうして、そんなへんなふうをしているんだ。カニ怪人かいじんの仮装かそうなんて、ぶっそうじゃないか。」

「これには、わけがあるんです。まずさいしょに明智あけち先生せんせい、それから警視けいし庁ちょうの中村なかむら警部けいぶにはなさなければなりません。それまでは、くわしいことはいえないのです。ここはみのがしてください。けっして、ごめいわくはかけません。では、いそぎますから……。」

そういったかとおもうと、小林こばやし君くんは、いきなり、車くるまを発車はっしゃさせました。

五ご人にんの警官けいかんは、やにわに車くるまが走はしりだしたので、おどろいて、とびのきました。

ふりかえってみると、警官けいかんたちは、しきりに手てをふって、なにかどなっています。しかし、小林こばやし君くんは、かまわず車くるまをとばして、明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょへと、いそぎました。

この三さん人にんは小林こばやし少年しょうねんと、井上いのうえ少年しょうねんと、それから、地下ちかにとじこめられていた、あの紳士しんしです。

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