← Library‹ 妖星人R 怪人の正体

ふたりの少年しょうねんが、壁かべぎわの長ながいすに、ならんでこしかけるのをまって、明智あけちが声こえをかけました。

「井上いのうえ君くん、きみのであったふしぎについて、はなしてごらん。カニじいさんに、きみが消けされた話はなしだよ。」

「はい。」といって、井上いのうえ君くんは、その話はなしをしました。カニじいさんに出であったこと、じいさんに森もりの中なかへつれこまれ、じいさんがカニ怪人かいじんの姿すがたになって、消きえてみせたこと、そして、井上いのうえ君くんも消けされてしまったこと、おおぜいのこどもに自分じぶんの姿すがたが見みえず、自分じぶんにぶつかって、ころんだこどもがあったことなどを、かいつまんではなしました。

「それで、きみはいまでも、自分じぶんが消けされたとおもっているのかね。」

「いいえ、ぼくは、いっぱいくわされたらしいのです。ぼくが見みえなかったのは、子こどもたちばかりで、そのあとであった人ひとには、ぼくの姿すがたは、よく見みえたのですから。しかし、どうして子こどもたちに見みえなかったのか、ふしぎでしかたありません。」

「まず、森もりの中なかでカニ怪人かいじんが、消きえてみせた。そして、姿すがたを消けす力ちからをもっていることを、きみに信しんじこませた。そのとき、怪人かいじんは、ほんとうに消きえたのだとおもうかね。」

「わかりません。しかし、消きえたように見みえました。」

「カニ怪人かいじんは星ほしの生いきものではなくて、地球ちきゅうの人間にんげんなのだから、消きえられるはずはない。それも、あいつの手品てじなだよ。そのとき、怪人かいじんは大おおきな木きの下したにいたんだね。おそらく、その木きの上うえのほうの、葉はのしげった中なかに、なかまがかくれていたんだよ。

そいつが、車くるまにまきつけた、黒くろいナイロンのひもを、上うえからさげる。そのひものさきには、かぎがついていて、怪人かいじんがそのかぎを、自分じぶんの背中せなかにひっかけるようなしかけになっていたにちがいない。うすぐらい森もりの中なかだから、ナイロンのほそいひもは見みえはしない。

かぎをひっかけると、木きの上うえのなかまは、木きの枝えだにとりつけた車くるまをまわす。怪人かいじんは上うえにひきあげられ、葉はのしげみの中なかに、かくれてしまうというわけだよ。

しかし、ただひきあげたのでは、すぐわかってしまうから、煙けむりをはきだして、自分じぶんのからだを、煙けむりにつつんでしまった。からだのどこかに、こい煙けむりが出でるしかけを、よういしておいたんだね。

それから、きみが消けされた。それをたしかめるために、またカニじいさんがあらわれて、子こどもたちをよんだ。その子こどもたちは、みんなカニじいさんの味方みかただったのさ。みんなにカニをやるからという約束やくそくで、おしばいをさせたんだよ。

子こどもたちは、きみの姿すがたがすこしも見みえないような、おしばいをやってみせた、きみにぶつかって、たおれて、なきだした子こどもさえある。子こどもは、やる気きになれば、うまいおしばいができるものだ。カニじいさんは、子こどもの心こころを、よくつかんでいたのだよ。

まさか、子こどもたちが、そろっておしばいをしているなんて、おもいもよらないものだから、つい、信しんじてしまう。井上いのうえ君くんは、自分じぶんのからだが消きえてしまったと、信しんじたわけだよ。」

そのとき、中村なかむら警部けいぶが、首くびをかしげながら、口くちをだしました。

「井上いのうえ君くんに、自分じぶんが消きえたとおもいこませるために、ずいぶん手数てすうをかけたものだね。どうして、そんな必要ひつようがあったのかね。」

「必要ひつようなんかないさ。いたずらだよ。カニ怪人かいじんにばけたやつは、とほうもないいたずらずきなんだ。どんな手数てすうをかけても、いたずらがやってみたかったのさ。だいいち、妖星ようせい人にんRとなのって、カニ怪人かいじんにばけたことだって、世界せかいをあいての大おおいたずらだからね。

それから、もうひとつは、カニ怪人かいじんは、少年しょうねん探偵たんてい団だんをやっつけようとしたんだ。幹部かんぶの井上いのうえ君くんを、まず、とりこにして、B・Dバッジを道みちにまいて、小林こばやし団長だんちょうを、よびよせようとした。小林こばやし君くんは、その手てにのって、怪人かいじんのとりこになってしまった。しかし、ふたりの少年しょうねんは、じつにうまいやりかたでそこをにげだした。ぼくは、ふたりの話はなしをきいて、カニ怪人かいじんの秘密ひみつを、すっかり、さとることができたのだよ。」

「なるほど、そんなことがあったんだね。しかし、もっとふしぎなことがある。これは、どうにも、ときようがない。カニ怪人かいじんの出入でいりをした地面じめんに、穴あなもなにもなかった。コンクリートの床ゆかや壁かべから、自由じゆうにあらわれたり、また、そこへ消きえたりした。それは、この美術びじゅつ館かんの庭にわと地下ちか室しつでおこったことだ。カニ怪人かいじんが地球ちきゅうの人間にんげんだとすると、このなぞが、どうしても、とけないことになる。」

「それはなんでもないことだ。わけなくとけるのだよ。」

明智あけち探偵たんていが、こともなげに、こたえました。

「じゃあ、といてくれたまえ。ぼくには、どうしても、わからない。」

中村なかむら警部けいぶは、かぶとをぬぎました。

「正面しょうめんから考かんがえると、わけがわからないのだよ。しかし、きみは、それを自分じぶんの目めで見みたかね。」

「見みたわけではない。古山ふるやま博士はかせからきいたのだ。しかし、博士はかせとその話はなしをしているときに、窓まどの外そとからカニ怪人かいじんがのぞいていたので、みんなで、おっかけたのだが、怪人かいじんは、庭にわのヒマラヤスギのねもとで消きえてしまった。そして、地面じめんには、なんのあとものこっていなかった。」

「それは、さっきはなしたように、なかまが木きの上うえにいて、車くるまにまいたナイロンのひもで、ひきあげたんだよ。夜よるのことだから、よくわからなかった。それに博士はかせから、地面じめんにすいこまれるように消きえるという話はなしを、きいていたので、つい、そう信しんじてしまったのだよ。」

「すると、博士はかせは、つくり話ばなしをしていたのか。」

「そうとしか考かんがえられないね。」

それをきくと、古山ふるやま博士はかせが、ぐっと、こちらをにらみつけて、どなるようにいいました。

「明智あけちさん、あなたをおよびしたのは、この美術びじゅつ館かんの盗難とうなん事件じけんのなぞをといてもらいたかったからです。よぶんな話はなしはどうでもよろしい。どうして、美術びじゅつ品ひんがねこそぎぬすまれたか、その犯人はんにんはどこにいるのか、それがしりたいのです。」

明智あけち探偵たんていは、ニッコリとわらいました。

「ほんとうにしりたいのですか。」

「もちろんです。」

「では、いいましょう。その犯人はんにんは……。」

「その犯人はんにんは……。」

明智あけちと古山ふるやま博士はかせとは、おたがいの目めを、のぞきこむようにして、むかいあってました。

「その犯人はんにんは、ここにいます。」

明智あけちが、ピシリとむちをならすように、いいきりました。

「こことは?」

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