← Library‹ 妖星人R カニじいさん

妖星ようせい人にんR、カニ怪人かいじんといわれる怪物かいぶつは、古山ふるやま博士はかせの書庫しょこにしのびこんで、たいせつな美術びじゅつ品ひん、推古すいこ仏ふつをぬすみさってしまいました。

コンクリートだてで、窓まどには鉄棒てつぼうのはまった書庫しょこの中なかで、小ちいさい仏像ぶつぞうといっしょに、きえてしまったのです。えたいのしれぬ星ほしのいきものですから、どんな力ちからをもっているか、わかりません。コンクリートの壁かべでも、スーッと、つきぬけてしまうかもしれません。それとも、じぶんの姿すがたを、おもうままにけすという、ふしぎな力ちからをもっているのでしょうか。

空そらには夜よるごとに、あのあやしいRすい星せいが、ぶきみな赤あかちゃけた光ひかりをはなっていました。新聞しんぶんなどでは、仮かりにRすい星せいとよんでいましたが、これまでのどのすい星せいともちがった、ふしぎな天体てんたいなので、天文てんもん学がく者しゃのあいだに、大だい議論ぎろんがおこっていました。それが毎日まいにち、毎日まいにち、新聞しんぶんに大おおきくのせられるのです。

海うみからあらわれたカニ怪人かいじんが、千葉ちばの別所べっしょ少年しょうねんに、へんなかたことで、しゃべったところによりますと、Rすい星せいは、怪かい星せい人にんが宇宙うちゅうをとびまわる巨大きょだいなのりものだというのですが、それはほんとうなのでしょうか。

古山ふるやま博士はかせ邸ていの盗難とうなん事件じけんも、むろん、デカデカと新聞しんぶんにのりましたので、日本にっぽんじゅうがそのうわさで、もちきりでした。

もし、あの妖星ようせいが、大おおきなのりものだとすれば、それには何百なんびゃくぴき、何千なんぜんびきのカニ怪人かいじんがのっているかもしれない。東京とうきょうにあらわれたのは、まだ一いちぴきだけれど、やがて、日本にっぽん全国ぜんこくに、あのいやらしいカニ怪人かいじんが、ウジャウジャとおりてきて、われわれは、みんな、ほろぼされてしまうのではないかと、日本にっぽんじゅうの人ひとがふるえあがってしまいました。

そんなある日ひのことです。明智あけち探偵たんてい事務じむ所しょでは、明智あけち探偵たんていと助手じょしゅの小林こばやし少年しょうねんとが、テーブルにむかいあって、はなしこんでいました。

「古山ふるやま博士はかせのこどもの忠雄ただお君くんは、少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんなのです。ですから、ぼくは忠雄ただお君くんから、くわしい話はなしを聞ききました。カニ怪人かいじんというやつは、人間にんげんわざではできないことをやったのです。地球ちきゅうの人間にんげんにはしられていない、おそろしい力ちからをもっているのでしょうか。」

小林こばやし君くんがいいますと、明智あけち探偵たんていは、じっと小林こばやし君くんの顔かおをみつめていましたが、やがて、みょうな笑わらいをうかべて、

「わたしは信しんじない。」

と、ぽつりといいました。

小林こばやし君くんは、ふしぎそうに、先生せんせいの顔かおを見みかえします。

「ネジネジのしっぽをもったすい星せいが、あらわれたのは、だれもうたがうことのできない事実じじつだ。これは天文てんもん学がく者しゃにまかせておけばいい。だが、カニ怪人かいじんとかいうやつが、ロケットみたいなものにのって、地球ちきゅうへおりてきたということは、ぼくは信しんじない。怪かいすい星せいとカニ怪人かいじんとは、なんのかんけいもない、べつのできごとだとおもう。」

「それは、どういういみですか。」

小林こばやし君くんが、びっくりしてたずねました。

「いまにわかるときがくる。しかし、これは、ぼくらにとっては、大だい事件じけんだよ。命いのちがけのはたらきをしなければならない。きみもじゅうぶん、かくごしておくがいい。妖星ようせい人にんRとなのるカニ怪人かいじんは、われわれ人間にんげんが、いままで、一いち度どもであったことのない、おそろしいやつだからね。そのいみでは、あいつは妖星ようせい人にんにちがいないのだよ。」

小林こばやし君くんには、まだよくわかりませんが、いくらたずねても、先生せんせいは、それ以上いじょう、なにもおしえてくれないのです。でも小林こばやし君くんは、なんだかボンヤリと、わかったような気きがしました。すると、あの、みにくい姿すがたをした、カニのおばけみたいな怪物かいぶつが、目めのまえいっぱいのまぼろしとなって、ボーッと、みえてくるようです。

しかし、小林こばやし少年しょうねんがカニ怪人かいじんに対面たいめんするのは、もっとあとのお話はなしです。古山ふるやま忠雄ただお少年しょうねんのつぎに、カニ怪人かいじんにぶつかったのは、おなじ少年しょうねん探偵たんてい団だん員いんの井上一郎いのうえいちろう君くんでした。

井上いのうえ君くんは、もとボクサーのおとうさんから、ボクシングをならって、うでにおぼえのある、強つよい少年しょうねんです。

ある日ひの午後ごご、井上いのうえ君くんは、渋谷しぶや区くのはずれのさびしい町まちをあるいていました。ふと気きがつくと、道みちのわきに、草くさのはえた空地あきちがあって、そこに人ひとだかりがしているのです。

あつまっているのは、中学ちゅうがく生せいや小学しょうがく生せいのこどもばかりでした。十じゅう五ご―六ろく人にんが、なにかをとりまいて、みているのです。

井上いのうえ君くんは、なんだろうと思おもって、そのほうへ、ちかよっていき、こどもたちの肩かたのすきまから、中なかをのぞいてみました。

少年しょうねんたちにかこまれて、こじきのようなじいさんが、地面じめんにしゃがんでいます。そのまえに、二ふたつのたらいのようなブリキのおけが、おいてあり、そばに、一いち本ほんの棒ぼうが、よこたわっていました。

じいさんは、二ふたつのおけを、その棒ぼうの両りょうはしに、縄なわでさげて、ここまでかついできたのでしょう。

ブリキおけの中なかには、大おおきいのや小ちいさいのや、何百なんびゃくぴきというカニが、ウジャウジャと、うごめいていました。このじいさんは、カニを売うっているのです。

しかし、少年しょうねんたちは、だれも、カニをかおうというものはありません。ただ目めをみはって、じっと、じいさんの顔かおをみつめているばかりです。

それほど、このじいさんは、気味きみのわるい顔かおをしていました。

腰こしが二ふたつにおれたように、まがった、もう七十ななじゅうぐらいのおじいさんです。ネズミ色いろのダブダブのズボンに、シャツの上うえから、赤あかいチャンチャンコのようなものをきて、頭あたまには赤あかい大黒だいこくずきんをかぶっています。

チャンチャンコにずきんというと、なんだか、ふくぶくしい、じいさんのようですが、そうではありません。そのチャンチャンコも、ずきんも、おそろしくよごれてしまって、赤あかだか、黒くろだか、わからないほどになっているのです。

それに、このじいさんの顔かおときたら、おもわず身みぶるいするほど気味きみのわるいものでした。

かぞえきれないほど、横よこじわのあるひたい、ギョロリとした目め、ひらべったい鼻はな、歯はがないのか、ぺっちゃんこになった口くち、その口くちの上うえにも下したにも、また、いっぱい、横よこじわが、きざまれています。そして、顔かおぜんたいが、日ひにやけて、茶色ちゃいろになっているのです。

「だれもかわねえのか。いくじのねえガキどもだな。かわなきゃあ、おら、もう、いっちまうぞ。」

じいさんはジロジロと、少年しょうねんたちをみまわしながら、しわだらけの顔かおで、にくまれ口くちをききました。

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