← Library‹ 赤いカブトムシ 9

少年しょうねんたんていだんの小林こばやしだんちょうと、だんいんの木村きむらくんと、ユウ子こちゃんと、井上いのうえくんと、ノロちゃんの五ご人にんが、まほうはかせのあんごうをといて、世田谷せたがや区くのはずれのさびしい原はらっぱにあるほらあなへはいっていくと、コンクリートのまるいへやにとじこめられ、上うえからおもい鉄てつのふたが、じりじりとさがってきました。鉄てつのふたにはすきまがないから、そのままさがってきたらたいへんです。

みんな、おしつぶされてしんでしまうにきまっているのです。おくびょうもののノロちゃんや、女おんなの子このユウ子こちゃんは、わあわあとなきだしてしまいました。

しかし、だんちょうの小林こばやしくんは、しっかりしていました。いそがしくあたまをはたらかせて、どうしたらみんながたすかるかということを、いっしょうけんめいに考かんがえました。

「まほうはかせは、人ひとごろしなんかするはずがない。こんなおそろしい目めにあわせて、ぼくたちのゆうきとちえをためしているんだ。」

それなら、ちえをはたらかせたら、どこかににげ道みちがあるのかもしれません。

そこで小林こばやしくんは、かいちゅうでんとうをもったまま、まるいへやのまわりを、ぐるっとはいまわり、コンクリートのかべをしらべてみました。

すると、コンクリートのかべに、六十ろくじゅうセンチ四方しほうほどの、四よんかくな切きれ目めがついているのを見みつけました。

「これが、ひみつのかくし戸とかもしれないぞっ。」

力ちからいっぱいおしてみましたが、びくともしません。

「どこかに、これをひらくしかけがあるにちがいない。」

小林こばやしくんはすばやく、そのへんを見みまわしました。

四よんかくな切きれ目めから、すこしはなれたかべの上うえの方ほうに、コンクリートが小ちいさくふくらんだところがあります。よくしらべてみると、そのぼっちは、コンクリート色いろにぬった金物かなものであることがわかりました。

「ああ、そうだ。鉄てつのふたが下したまでおりたら、ぼくたちがしんでしまうから、下したまでおりないうちに、にげ出だせるしかけになっているのだ。」

「鉄てつのふたが、このぼっちのところをとおると、ぼっちがおされる。そうすると、ひみつの戸とが外そとへひらくようになっているのだ。」

小林こばやしくんは、とっさに、そこへ気きがつきました。

「それなら、手てでおしたって、ひらくかもしれないぞ。」

そこで、ぼっちにおやゆびをあて、その上うえに、もう一方いっぽうの手てをかさねて、力ちからいっぱいおしてみました。

ぼっちは、なかなか動うごきません。たいへんな力ちからがいるのです。小林こばやしくんは、からだじゅう、あせびっしょりになりました。でも、がまんをして、うんうんおしつづけていますと、カタンという音おとがして、四よんかくな切きれ目めが、すうっとむこうへひらきました。小林こばやしくんのちえとゆうきが、せいこうしたのです。

そこは、にんげんひとりがやっとはってとおれるほどのまっくらなあなでした。小林こばやしくんは、みんなをよんで、そのあなへはいこみました。きみがわるいけれども、じっとしていたら、鉄てつのふたにおしつぶされてしまうだけですから、このあなへにげるほかはないのです。

そのまっくらできゅうくつなあなは、十じゅうメートルもつづいていました。

やがて、あたりがきゅうにひろくなりました。外そとへ出でたのでしょうか。いや、そうではありません。まだまっくらです。やはり、地ちのそこの一室いっしつなのです。

たち上あがって、かいちゅうでんとうでてらしてみますと、それは、二十にじゅうじょうもあるような、コンクリートのへやでした。みんなが、そのへやにはいったとき、どこからか、ぎょっとするような声こえがひびいてきました。

「わははは……。かんしん、かんしん。とうとう、あぶないところをぬけ出だしたね。だが、まだこれでおしまいじゃないよ。わしの手紙てがみには、『おそろしい番人ばんにんに注意ちゅういせよ。』と書かいてあった。だい一いちは大おおトラ、だい二には鉄てつのふた、さて、だい三さんの番人ばんにんはなんだろうね。おしまいほどおそろしいやつがひかえているからね。ようじんするがいいよ。」

まほうはかせの声こえです。どこから聞きこえてくるのかわかりません。きっとてんじょうのすみに、ラウド=スピーカーでもしかけてあるのでしょう。

五ご人にんは一ひとかたまりになって、おたがいのからだをだきあってじっとしていました。ノロちゃんのからだが、がたがたふるえているのがよくわかります。

「あれっ、なんだろう。なにか動うごいているよ。」

木村きむらくんが、むこうのゆかをゆびさしてさけびました。かいちゅうでんとうの光ひかりが、さっとその方ほうをてらします。

するとそこに、なんだかきみのわるいことがおこっていました。

地ちのそこから、みょうなものがむくむくとあらわれてきたのです。

まるいあたまのようなものが出でてきました。

それが、見みる見みる大おおきくなります。あなもなにもないコンクリートのゆかから、むくむくと上あがってくるのです。子こどもくらいの大おおきさになりました。おとなくらいになりました。おとなのばいになりました。おとなの三さんばいになりました。大おおきなあたまの、まっさおなからだの、のっぺらぼうなかいぶつです。それが、きりもなく大おおきくなっていくのです。

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