← Library‹ 鉄人Q ひとりと四人

小林こばやし君くんとポケット小僧こぞうが、はいってくるのを見みて、中井なかい、北見きたみの二に少年しょうねんは、びっくりしましたが、おたがいに、顔かおを知しっているので、きっと、助たすけにきてくれたのだと、すぐ安心あんしんしました。

小林こばやし君くんは、ふたりの少年しょうねんを、いまはいってきた裏口うらぐちから逃にがすつもりでした。その裏口うらぐちの外そとには三さん人にんの刑事けいじが、待まちかまえていて、二に少年しょうねんを守まもってくれるはずです。

小林こばやし君くんが、そのことを話はなしますと、中井なかい少年しょうねんが、うれしそうに答こたえようとしましたが、はっとしたように口くちをとじました。そして、口くちの前まえに、指ゆびを立たててみんなをだまらせ、心配しんぱいそうに耳みみをすますではありませんか。

廊下ろうかに、遠とおくの方ほうから、パタン、パタンという足音あしおとが聞きこえてきます。

「鉄人てつじんQの部下ぶかのやつが、御飯ごはんを、運はこんでくるのですよ。ちょうどいまごろ、晩御飯ばんごはんを持もってくるんです。」

中井なかい君くんが、ささやきごえでいいました。

さあ、たいへんです。せっかく苦心くしんして、ここまで運はこんだのに、そいつが来くれば、なにもかもだめになってしまいます。

「ぼくたち、どっかへ、かくれようか。」

ポケット小僧こぞうが、ささやきます。

「だめだよ、この部屋へやには、かくれるところなんてないよ。」

中井なかい君くんが答こたえました。

「よし、そいつを、やっつけちゃおう。こっちは四よん人にんだ。相手あいては、いくら力ちからが強つよくても、たったひとりだよ。それにはいいことがある。」

小林こばやし君くんはそういいながら、シャツの下したにまきつけていた、絹糸けんしのなわばしごを、大おおいそぎでひっぱりだすと、ポケットからナイフを出だして、それを三みつに切きりました。

それから、そこにあった二ふたつのいすを、ドアのすぐ内うちがわの、両方りょうほうのかべぎわにおき、一いち本ほんの絹糸きぬいとを二ふたつのいすのあしからあしへわたして、しばりつけました。つまり、床ゆかから十じゅうセンチぐらいのところに絹糸きぬいとが、はりわたされたわけです。

それを、手早てばやくやったので、やっとまにあいました。部下ぶかのやつは、もうドアの外そとまできていたのです。

小林こばやし君くんは、残のこる二に本ほんの絹糸きぬいとの一いち本ほんを、じぶんが持もち、残のこる一いち本ほんを、中井なかい君くんにわたし、それから、みんなの持もっているハンカチを出ださせて、それをポケット小僧こぞうにわたしました。

みんな、かしこい少年しょうねんたちですから、なにもいわなくても、その意味いみがちゃんとわかったのです。そして、小林こばやし君くんとポケット小僧こぞうは、すばやくベッドの下したへもぐりこみました。

部下ぶかのやつはもうはずれているかぎあなへ、かぎをいれて、ガチャガチャやっていましたが、

「おや、へんだぞ。おれは、さっき、かぎをかけるのを、わすれたのかな。」

と、ふしぎそうに、つぶやきながら、ドアを開ひらいて、ヌッと、はいってきました。手てには、大おおきなおぼんに、晩御飯ばんごはんをのせて、持もっています。

ガチャンと、おそろしい音おとがしました。部下ぶかのやつは、あの絹糸けんしに足あしをとられて、ころんだのです。おぼんが投なげだされ、御飯ごはんや、おつゆが、あたりにとびちりました。

「そらっ。」

小林こばやし君くんのかけ声ごえで、四よん人にんの少年しょうねんは、一いち度どに、倒たおれている部下ぶかに、とびかかっていきました。

部下ぶかのやつは、ころんだとき、どこかを打うったらしく、起おきあがる力ちからもなく、たちまち、両手りょうて、両足りょうあしを、しばられてしまいました。助たすけを呼よぼうにも、ポケット小僧こぞうが、さっきの四よんつのハンカチをまるめて、口くちの中なかへ押おしこんだので、声こえを出だすことができません。

「よし、このまに、きみたちふたりを、裏口うらぐちにいるおまわりさんに、わたすことにしよう。さあ、来きたまえ。はやく、はやく。」

小林こばやし君くんは、中井なかい、北見きたみの二に少年しょうねんを、せきたてながら、部屋へやを出でて、廊下ろうかを裏口うらぐちへといそぎました。

ポケット小僧こぞうも、そのあとからついていきます。

裏口うらぐちを出でると、そこに、さっきの三さん人にんのおまわりさんが、待まちかまえていました。

「さ、これが中井なかい君くんと北見きたみ君くんです。外そとへ連つれだしてください。ぼくたちふたりは、中なかへもどって、鉄人てつじんQを捜さがします。見みつけたら、知しらせますから、それまで、ゆだんなく、このうちのまわりを見みはっているように、みなさんにいってください。」

小林こばやし君くんとポケット小僧こぞうは、二に少年しょうねんをおまわりさんたちに、あずけておいて、そのままおばけやしきの中なかへ、引ひきかえしました。

さっきの部屋へやへ、はいってみると、部下ぶかの男おとこは、しばられたまま、倒たおれていました。鉄人てつじんQは、まだこのことを気きづかないようです。

「おい、ポケット君くん、おばけに変装へんそうしよう。ほら、この一ひとつ目め小僧こぞうの仮面かめんをかぶるんだよ。そうすれば、顔かおがわからないから、もし、だれかに見みつかっても、ぼくたちを中井なかい君くんや北見きたみ君くんだと思おもうかもしれないね。ね、そうしよう。」

そこで、ふたりは、テーブルの上うえにおいてあった、青あおい服ふくを着きました。そして、あの一ひとつ目め小僧こぞうの仮面かめんを、頭あたまからスッポリとかぶったのです。中なかぐらいのと、小ちいさいのと、ふたりのおばけが、できあがりました。

「さあ、このうちの中なかを、しらべよう。そして、もし鉄人てつじんQを見みつけたら、すぐおまわりさんに知しらせるのだ。」

ふたりは部屋へやの外そとへ出でて、ドアをピッタリしめ、万能ばんのうかぎで、外そとからドアのしまりをしました。

そして、うす暗ぐらい廊下ろうかを、奥おくの方ほうへと、歩あるきだしたのですが、まもなく、廊下ろうかは、行いきどまりになってしまいました。

「へんだなあ。この廊下ろうかには、ひとつもドアがないよ。しかたがない、引ひきかえそう。」

ふたりは、もと来きたほうへ、もどろうとしましたが、ひょいと、ふりかえってみると、いままで、裏口うらぐちの方ほうへ、つづいていた廊下ろうかが、すっかり、壁かべになってしまって、どこにも出口でぐちがないことが、わかりました。

「おやっ、どうしたんだろう。向むこうに、壁かべができちゃったぞ。」

「ウフフフ……、小林こばやしさん、だから、ここはおばけやしきなんだよ。おれたちは、おばけの魔法まほうにかかっちゃったのさ。」

大胆だいたんなポケット小僧こぞうは、へいきで、笑わらっています。

廊下ろうかは長ながさ十じゅうメートルほどの、細長ほそながい箱はこのようになって、ふたりは、そこに、とじこめられてしまったのです。そして、そこにはドアがひとつもないのです。

おばけやしきのことですから、なにかのしかけで、いつのまにか、廊下ろうかを、箱はこのように、かえてしまったのでしょう。

小林こばやし君くんは、その細長ほそながい箱はこの中なかを、グルグルまわって、どこかに出口でぐちはないかと、捜さがしまわりました。

すると、つきあたりの板壁いたかべのすみに、押おしボタンのように、出でっぱったものがあることに気きがつきました。

ためしに、指ゆびでぐっと押おしてみますと、そこの壁かべの一部いちぶが、ドアのように、スーッと、音おともなく開ひらきました。

中なかは、せまいトンネルのように、まっくらです。

「はいってみようか。」

「うん、ほかに出口でぐちがないから、しかたがないよ。」

ふたりは、おずおずと、そのくらやみの中なかへ、はいっていきました。

トンネルのようなところを、五ごメートルほど進すすみますと、つきあたりに、またドアがあって、それがひとりでに開ひらきました。

ふたりは、その中なかへはいりましたが、すると、いきなり、あたりがパッと明あかるくなって、目めがくらみそうになりました。

「あっ、いけない。あとにもどるんだっ。」

小林こばやし君くんが、叫さけんで、うしろへ引ひきかえそうとしましたが、いつのまにか、ドアはピッタリしまって、押おせども引ひけども動うごきません。

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