こちらは、おばけやしきの中です。中村警部は、警視庁に電話をかけて、ヘリコプターを飛ばすようにたのんでおいてから、三人の刑事や、小林少年や、ポケット小僧といっしょに、家の中をさがしまわって、五人の鉄人Qの部下をとらえました。その中には、あの四角なロボットにばけて、北見、中井の二少年をおどしたやつも、まじっていたのです。
小林少年たちが、しばっておいた、あの食事を運んできた部下も、刑事がその部屋へいって、あらためて手錠をかけました。
おばけやしきには、三千代ちゃんのほかに、ふたりの少女がとじこめられ、赤い服をきせられ、一つ目小僧の仮面を、かぶせられていましたが、そのふたりも、たすけだすことができました。
ところが、かならずいるにちがいない、あの怪老人の姿が、どこにも見えないのです。鉄人Qをつくった白ひげの怪老人です。
鉄人Qが、ほんとうにロボットだとすれば、こんな悪いことをするロボットをつくったあの老人は、ばつをうけなければなりません。
また、もし、鉄人Qがロボットでなくて、中に人間がはいっているのだとしたら、怪老人はその親分みたいなものですから、いっそう、罪が深いのです。
Qを逃がしてしまったからには、あの老人だけは、どうしても、つかまえなければなりません。その老人が、いくら捜してもみつからないのですから、中村警部も小林君も、残念でしかたがありません。
そのとき、はるか家の外から、ピリピリピリ……という、よびこの笛の音が、聞こえてきました。
「おや、あれはよびこだね。しかし警官の持っているよびことは、音がちがうようだが……。」
中村警部が、ふしんらしくつぶやきますと、小林少年が、にこにこ笑いながら、答えました。
「少年探偵団のよびこです。ぼくたちの七つ道具の一つのよびこです。わざと、音をちがえてあるのですよ。ぼく、さっき、北見君たちをたすけだしたとき刑事さんに、明智探偵事務所へ電話をかけてもらいました。ぼくはここへくるまえに、五人の少年団員が、事務所へ集まって、待っているようにしておいたのです。刑事さんはその団員たちに、この家の外を見はるように、つたえてくれたのです。いまのよびこは、きっとその団員たちですよ。家の外で、だれか、悪者を見つけたのです。さあ、すぐにいってみましょう。」
中村警部と小林少年は、三人の刑事をQの部下たちの見はりに残しておいて、家の外へかけだし、よびこの音のした方へいそぎました。
そのすこしまえ、おばけやしきの裏手のへいの外では、こんなことがおこっていたのです。
事務所から、いそいで、ここへやってきた団員は、中学一―二年の力の強い少年ばかりでした。
少年たちは、外を見はっていた刑事たちと相談したうえ、裏手の、原っぱの番をすることになりました。
それは、草ぼうぼうの原っぱでしたから、五人は、その草の中に、身をふせて、じっと待っていました。
しばらくすると、すぐ向こうの、へいの上に、黒い影が、動いているのに気づきました。悪者が、逃げだすのにちがいありません。
少年たちは、たがいに手をつなぎあって、とびだす用意をしました。
そのとき、へいの上の黒いやつは、パッと、原っぱへとびおりたのです。
それを見た少年たちは、いきなり、草の中から立ちあがり、かけだしていって、相手にとびつきました。
やみの中で、おそろしいとっくみあいがつづきました。
「あっ、こいつ、白ひげのじいさんだっ。」
だれかが叫びました。とうとう、五人の少年の力で、老人をくみふせてしまったのです。その中のひとりが、七つ道具の一つの万年筆型懐中電灯で、老人の顔をてらしたのです。
ひとりの少年がポケットから、よびこの笛をとりだして、吹きならしました。
さっき家の中で、中村警部や小林少年が聞いたよびこの音は、これだったのです。
やがて、中村警部たちが、かけつけてきました。そして怪老人は、なんなく、手錠を、はめられてしまいました。
「きみたち、ありがとう。このじいさんだけが、見つからなかったのだ。よく、つかまえてくれたねえ。」
小林少年が、おれいをいいますと、中村警部も、それにつづいて、少年たちを、ほめたたえるのでした。そして、
「うちでしんぱいしているといけないから、きみたちは、早く帰りなさい。いずれ今夜のごほうびを、あげるからね。」
と、やさしくいうのでした。
そこで、五人の少年と、小林君とポケット小僧とは、中村警部にタクシーをおごってもらって、それぞれのうちへ帰ることになりました。
つかまった悪者たちは、警視庁から、さしむけられた、窓のない、箱のような自動車につめこまれて、留置場へ、おくられたのです。
その途中で、たいへんなことがおこりました。
夜ふけのことですから、あまり自動車も通っていないので、安心して走っていきますと、向こうから、一台の黒い自動車がやってきて、こちらのよけるほうへ向かってくるので、とうとう、正面から衝突してしまいました。
いそいで、ブレーキをかけたので、車がこわれるほどではなく、けが人もありませんでしたが、衝突のひょうしに、箱形の自動車のうしろのドアが開いて、そのそばに腰かけていた怪老人が、いきなり、逃げだしたではありませんか。
怪老人は魔法使いみたいなやつで、ゆだんがならないので、この老人だけは、手錠をかけたうえに、からだを、ほそびきでしばって、そのはじを、ひとりの刑事がにぎっていたのです。
ですから、老人が逃げだすと、刑事も、ほそびきにひっぱられて、いっしょに、車の外へころがりだしてしまいました。
しかし、さすがは中村警部の部下の刑事です。ころがっても、けっして、ほそびきは、はなしません。すぐに起きなおって、怪老人を、ひきもどそうとしました。
怪老人は、おそろしい力で、そのまま、ズルズルと刑事をひっぱって、そばにあった公衆電話の箱の中へ、とびこんで、パタンとドアをしめてしまいました。
それでも刑事は、ほそびきを、はなしません。すぐに電話の箱のドアにとびついていきましたが、そのとき、ガチャンと音がして、箱の中がまっくらになりました。怪老人が電球を割って、あかりをけしたのです。