井上くんと、ノロちゃんと、井上くんの妹のルミちゃんの三人が、まほうやしきにとじこめられ、ベッドでねむって目をさますと、三人とも、子どものライオンにかわっていました。まほうの力で、ライオンにされたのかとびっくりしましたが、じつは、ねている間に、ライオンの毛皮をかぶせられていたのです。
朝になると、あのせいようあくまがはいってきて、毛皮をぬがせてくれましたが、それから三人は、つぎつぎときみのわるい、ふしぎなものを見せられました。
へやを歩いていると、ゆかのおとしあながぱっと開いて、その下に、すべり台のようなものがあり、三人は、するするとちか室のそこへすべっていきました。
そのうす暗いちか室には、いろいろな形のロボットがたっていて、ぎりぎりとは車の音をさせながら、三人をとりかこむのでした。
そのつぎは、四方のかべも、てんじょうも、ゆかも、ぜんぶかがみをはりつめたへやへ入れられました。
三人のすがたが、かがみからかがみへとはんしゃしあって、なん百、なん千とかさなって見えるのです。
井上くんも、ノロちゃんも、ルミちゃんも、あんなへんな気持になったことはありません。なん百、なん千という自分が、上・下・四方からうじゃうじゃとかたまって、自分をにらみつけているのです。
そのほか、まだいくつもふしぎなおそろしいものを見せられましたが、そのあとで、せいようあくまにつれられて二かいのろうかを歩いていますと、とつぜん、どこからか、みょうなわらい声がきこえてきました。せいようあくまは、びっくりしたようにたちどまって、しばらく考えていましたが……。
あるへやへそっと近づいて、そのドアをぱっと開きました。するとそこに、思いもよらぬひとりのしょうねんがたっていたのです。
「あっ、きさま。しょうねんたんていだんちょうの小林だなっ」
せいようあくまが、ぎょっとしたようにさけびました。
「そのとおり、ぼくは小林だよ。
井上くんとノロちゃんが、てちょうの紙に手紙を書いて、B・Dバッジを重しにしてまどから投げたのを、きんじょの子どもがひろって、ぼくにとどけてくれたんだ。それでぼくは、さっきから、このまほうやしきにしのびこんでいたんだよ。さすがのまほうはかせも、ゆだんをしたものだね」
「えっ、まほうはかせだって」
「そうさ。きみは、そんなせいようあくまにばけているけれども、ちゃんとわかっている。『おうごんのとら』のじけんで、ぼくたちしょうねんたんていだんに負けた、あのまほうはかせだ。こんどは、あのときのしかえしをしようとしたんだろう。だが、ぼくが来たら、もうだめだよ。ちょっと、そのまどから下をのぞいてごらん」
そういわれて、せいようあくまのまほうはかせは、思わずまどの外をのぞいたかと思うと、あっといってたちすくんでしまいました。二十人近くのしょうねんたんていだんいんたちが、まほうやしきのへいの外をぐるっととりまいていたからです。
「きみが、井上くんたちをかえさなければ、あの中のひとりが、すぐ明智先生とけいさつへ知らせるのだよ」
「負けた。わしの負けだよ。きみのいうとおり、ちょっとしかえしをしてやろうと思ったのだが、きみにかかってはかなわない。B・Dバッジのつうしんとは、気がつかなかった。こんどもかぶとをぬいだよ」
まほうはかせは、ざんねんそうににがわらいをするのでした。
そのあとで井上くんやノロちゃんの話を聞いて、小林しょうねんは、まほうやしきのひみつをみごとにときあかしました。
「この家の入口をはいったとき、ちんどん屋のすがたがぼうっときえていって、せいようあくまがあらわれ、それがくびばかりになったのは、一まいガラスのドアをかがみに使ったきじゅつだよ。
ちんどん屋は、きみのぶかだったね。まず、ちんどん屋が、ガラスドアのむこうにたってすがたを見せておいて、そこのでんとうをけすと、まっ暗になって、ちんどん屋は見えなくなる。そのとき、てんじょうにしかけたはこの中に、せいようあくまのきみがたっていて、そのはこのでんとうをつけると、ガラスドアの、ちょうど、ちんどん屋のいたあたりへ、すがたがうつるのだよ。
それから、くびばかりになったのは、でんとうを動かして、かおだけにあてるようにすれば、むねから下は暗くなって、ガラスにうつらなくなるのさ。
もう一つの、へやがぐるぐるまわったのは、ゆうえんちなどにあるびっくりかんのしかけで、三人のたっているゆかは、ゆらゆら動くだけで、ひっくりかえりはしないのだ。
まわりのかべや、てんじょうが、はこのようにできていて、それがくるくるまわるので、自分たちが、てんじょうに上がったようにかんじるのさ」
「うん、えらい。やっぱり小林だんちょうのちえは、たいしたもんだ。では、わしが負けたしるしに、あの三まいの子どもライオンの毛皮は、きみたちのおもちゃにあげることにしようね」
こうしてしょうねんたんていだんは、またしても、おとなのまほうはかせをうち負かしてしまったのでした。