← Library‹ 怪人と少年探偵 お面をとれば

ここでまた、地下ちか道どうにもどります。

手足てあしをしばられて、ころがされた怪人かいじんは、へんなことを、どなりつづけています。

「ばかやろう。さっきから、あんなにいっているのが、きこえないのかっ。このお面めんをとってくれ。そうすれば、すっかりわかるんだ。はやく、とってくれ」

怪人かいじんは、ぴったりと、顔かおにくっついた、ビニールのお面めんをかぶっていたのです。怪人かいじんの顔かおが、いつも、人形にんぎょうのように見みえたのは、そのためでした。

お面めんとわかれば、とれといわれなくても、とって、すがおを見みなければなりません。

中村なかむら警部けいぶは、ころがっている怪人かいじんの上うえに、かがみこんで、ビニールのお面めんを、かわをむくように、とりさりました。

「あっ、きみは……」

警部けいぶが、びっくりして、さけんだのです。

お面めんの下したから、あらわれたのは、警部けいぶがつれてきた、部下ぶかのおまわりさんの顔かおだったからです。

「わたしです。まんまとしてやられました。さっきから、あれほど、どなっているのに、だれもきいてくれないものだから……」お面めんをはがれたおまわりさんが、ざんねんそうにいうのです。

中村なかむら警部けいぶには、すぐに、事ことのしだいが、わかりました。

怪人かいじんはこの警官けいかんを、地下ちか道どうの小こべやに、ひっぱりこんで、じぶんの服ふくを着きせ、お面めんをかぶせ、じぶんは警官けいかんの服ふくを着きて、とっくみあいながら、「怪人かいじんをつかまえた」といって、みんなを、よんだのです。そしてみんなが、怪人かいじんの服ふくとお面めんをつけた警官けいかんに、とびかかっているすきに、その場ばをにげだしてしまったのです。

「そうだっ。マンホールから、にげたかもしれないぞっ」

警部けいぶは、そこへ気きがつきました。そばにいたおまわりさんを、ふたりつれて、すぐに、マンホールへ、いってみました。マンホールの鉄てつのふたは、開ひらいたままです。

中村なかむら警部けいぶは、そこから、はい上あがって、見みはりのおまわりさんに、声こえをかけました。

「いま、ここから、警官けいかんがひとり、出でていかなかったかね」

「出でていきました。中村なかむら警部けいぶさんのいいつけだといっていました」

「きみたちの知しらない顔かおだったね」

「はい、わたしたちはパトロール・カーのものですが、出でていったのは警部けいぶさんといっしょにきた人ひとで、顔かお見知みしりではありません」

そこから、まちがいがおこったのです。もし、同おなじ部ぶの警官けいかんばかりが、きていたら、怪人かいじんのばけたおまわりさんは、すぐに見みやぶられたにちがいありません。

「その警官けいかんが、宝石ほうせきどろぼうの怪人かいじんだったのさ」

中村なかむら警部けいぶが、がっかりしたように、つぶやきました。

「えっ、あれが怪人かいじんですって。じゃあ、どうして警官けいかんの服ふくを着きていたのです」

「それはね、こういうわけなんだ。うまい手てだよ」

警部けいぶは、事ことのしだいを話はなしてきかせました。それを聞きくと、見みはりのおまわりさんは、じだんだふんで、くやしがりましたが、もうあとのまつりです。

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