「おれは、人ごろしはきらいなんだ。だから、きみをころしはしない。足をうつんだ。そして、にげ出すんだ」
そういったかと思うと、いきなり、ピストルの引き金を引きました。――カチッと、音がしました。しかし、たまはとび出しません。また、引き金を引きました。けれど、またカチッと音がするばかりです。
「あははは……。そのピストルには、たまがはいっていないんだよ。ポケットくんが、おどかしに使っただけだよ」
明智たんていが、さもおかしそうにわらいました。
「しまった」
とさけんで、二十めんそうは、ピストルをなげつけました。さっき、からのピストルに手をあげたのかと思うと、くやしくてたまらないのです。
かれは、いきなり、明智たんていにとびかかっていきました。
またしても、大かくとうが始まりました。二十めんそうも強いが、明智たんていも、じゅうどうの名人です。おそろしい組みうちがつづきました。
ちょうど、そこへ、五人のけいじがかけつけてきました。そして、二十めんそうは、とうとう手じょうをはめられてしまったのです。
二十めんそうがつかまったと聞いて、木村さんは、たけしくんときみ子ちゃんをつれて、そこへやって来ました。
小林くんは、しばられているポケット小ぞうのなわをとき、さるぐつわをはずしてやりました。口がきけるようになると、ポケット小ぞうはすぐに、二十めんそうをどなりつけました。
「ざまあ見ろ、とうとうつかまっちゃったじゃないか。明智先生は、えらいだろう。おまえなんか、かないっこないよ」
ポケット小ぞうは、もと、ちんぴらですから、ことばづかいが悪いのです。
そのとき、たけしくんが、明智たんていを見上げてたずねました。
「先生、ぼく、わからないことがあるんです。おとといのばんは、まどのカーテンに、大きな顔がうつったでしょう。ゆうべは、かいだんのかべに、おそろしい手がうつったでしょう。そして、どこをさがしても、だれもいなかったのです。どういうわけですか」
すると、明智たんていは、にこにこして答えました。
「あれは、げんとうだよ。きかいを、にわのしげみの中にかくして、あんなかげをうつしたのさ。そのげんとうきは、ずっと遠くからうつせるから、だれもいないように見えたのだよ。ね、そうだろう、二十めんそうくん」
二十めんそうは、苦い顔をして、うなずきました。
「それから、もう一つわからないことがあるんです。二十めんそうは、どうして空をとぶんですか」
「それは、二十めんそうがフランスの発明家から買った、せなかへとりつけることのできる、すごく小さなヘリコプターなんだよ。二十めんそうは、木の上なんかにそのきかいをかくしておいて、さいごには、いつも、それでにげ出していたのだ」
明智たんていは、なにもかも知っていたのでした。こうして、さすがのかいじん二十めんそうもつかまってしまったのです。木村さんは、ほうせきをぬすまれないですんだのでした。
「明智先生、ありがとう。小林くん、ポケット小ぞうくん、みんなありがとう」
木村さんは、にこにこして、みんなにお礼をいうのでした。