アルミニウム工場と銅山のほかに、僕は○○精機株式会社を見せてもらった。
この会社では、鉄やそのほかの金属を、切ったり、けずったりする旋盤という機械をつくっている。飛行機の発動機なども、この機械がなくてはつくれないのだ。ここでつくっている旋盤はタレット旋盤といって、ふつうの旋盤の四倍五倍の働きをするりっぱな機械だ。
この工場について、航空本部の小父さんは、こんなふうに教えてくださった。
「一太郎君、これは工作機械といって、機械のなかでも、いちばん製造のむずかしいものなんだよ。アメリカ人は、日本では工作機械ができないとあなどっているんだ。今から何年か前までは、ほんとうにつくれなかった。外国の機械を輸入して使っていたのだ。だから、アメリカのやつは、今でもそうだろうと思って安心しているかもしれない。
日本で工作機械ができないとすると、もう新しく外国から輸入する道がないから、古い機械ばかり使っているので、いつかはだめになる。そうすれば日本の飛行機をつくる力がおとろえて来るから、その時を待っていれば、ひとりでに戦争に勝てるのだと、虫のいいことを考えているかもしれない。
ところが、どうだ。今では、国産のこんなりっぱな機械が、いくらでもどしどしできているのだ。アメリカのやつがこれを知ったら、さぞおどろくことだろうよ」
小父さんはそういって、さも愉快そうにお笑いになった。僕もなんだかうれしくて、胸がすーっとした。
こんどの工場見学はほんとうに愉快だった。日本国民全体が戦争をしているのだということが、よくわかった。精機工場で、僕と同じくらいに見えるかわいらしい少年工員が、大きな機械を一人で楽しそうに動かしているのを見た時には、なんだかはずかしいような、うらやましいような気がした。僕はもっと勉強をしなければならない。また運動をしてからだをきたえなければならない。うっかりしていると、あのかわいらしい少年工員に笑われる。