智恵子さん。貴女に最後のお手紙を上げますわ。
あたしこのお手紙を出した後で、何処かへ行って自殺しますの。死骸は誰にも見せないようにしたいのですから、どうぞ探さないで下さい。
すみませんけど新高さんと妾の写真も、着物も、貯金の帳面も、印形も、世帯道具や何やかやも、みんな一纏めにして、貴女のアテ名で送り出して置きました。
どうぞ貧しい人達に分けて上げて下さい。
小学校に寄付して下すってもいいわ。小さなオルガンぐらい買うだけあるでしょう。
あの色の黒い骸骨みたいな刑事さんの言葉はやっぱりホントウだったのです。今やっとわかりました。
妾は新高さんと夫婦心中をしてみたかったのです。そうして出来るなら自分だけ生き残ってみたかったのです。
そうして、それがその通りになったのです。
ですから妾はホントウを言うと夫殺しだったのです。けれども新高はツヤ子さんの怨みの一念に取り殺されたと思って死んだのでしょう。妾のシワザとは夢にも思わないままだったのでしょう。新高はやっぱり妾を心から愛していたのでしょう。
そう気が付いた妾はモウいても立ってもいられません。
そればかりじゃないのです。妾のお腹に新高の赤ちゃんが出来ていたのです。それがこの頃になって、新高さんの事を思い出すタンビに心臓の下の方でビクリビクリと躍り出すのです。この児が生まれたら妾どうしましょう。
妾は、妾と一緒に呪咀われたこの児も殺してしまいます。
妾は夫殺しの吾児殺しです。
貴女にだけ白状して死にますわ。許して下さい。ミジメなトミ子の一生涯のお願いです。
女車掌なんかになってはいけません。――さよなら――