兵隊のような服を着て、鉄砲を持った二人の若い男がいます。二人は、2匹の大きな白い犬といっしょに山に来ました。猟をするためです。
「この山は、よくないね。鳥や動物が一匹もいない。何でもいいから、早く鉄砲で撃ってみたいよ」と、一人の男が言いました。
「そうだな。鹿のお腹に鉄砲を撃ったら、気持ちがいいだろうね。鹿はくるくる回って、どさっと倒れるだろうな」と、もう一人の男が言いました。
二人は、山の奥の奥に来ていました。案内していた猟師も途中で帰ってしまいました。それに、大きな白い犬も途中で目をクルクルさせて、どさっと倒れてしまいました。
「この犬は高かったのに」と、男が言いました。
「そうだな。僕の犬も高かったのに」と、もう一人の男も言いました。
男は、もう一人の男に
「そろそろ帰ったほうがいいんじゃないか」と、言いました。
男の顔は少し青いです。もう一人の男も、
「そうだな。お腹もすいてきたし、そろそろ戻ろう」と、言いました。
二人は戻ることにしました。しかし、山の奥の奥まで来たので、帰る道がわからなくなってしまいました。二人は迷子になってしまいました。
急に、風がどうと吹いて、草がざわざわ、木の葉がかさかさ、木がごとんごとんと鳴りました。
「お腹がへったなぁ」
「そうだな。もう歩きたくないよ」
「歩きたくないし、何か食べたいなぁ」
「そうだな。何でもいいから食べたいなぁ」
と、二人の男は言いました。風が吹いて、ススキの葉がざわざわとなっています。
そのとき、ふっと後ろを見ると、洋風の立派な建物が見えました。その入り口には、看板がありました。
RESTAURANT WILDCAT HOUSE
レストラン 山猫軒
「おい、こんなところにレストランがあるぞ。開いているみたいだ。入ってみよう」
「そうだな。でも、どうしてこんなところにレストランがあるんだろう。ふしぎだな。食事ができるのかな」
「もちろんできるよ。レストランって、書いてるじゃないか」
「そうだな。入ってみよう。お腹が減って、死にそうだ」
二人はとびらの前に立ちました。立派なとびらです。そして、とびらには金色の字でこう書いてありました。
遠慮しないで、どうぞ、ご自由にお入りください。
二人はとても喜びました。
「今日はずっと運が悪かったけれど、最後にいいことがあるなぁ。このレストランは、無料でごちそうしてくれるみたいだ」
「そうだな。『遠慮しないで』って書いてあるから、無料で料理を食べさせてくれるはずだ」
二人はとびらを開けて、中へ入りました。中に入ると、すぐに廊下がありました。とびらの裏には、金色の字でこう書いてありました。
太った人や若い人は、大歓迎。
「大歓迎」と書いてあるので、二人は大喜びです。なぜなら、二人は若くて太っていたからです。
二人は廊下を進みました。すると、今度は青色のとびらがありました。
「変な家だな。どうしてこんなにたくさんとびらがあるんだろう」
「そうだな。たぶん、これはロシア風の家だ。寒いところや、山の中の家にはとびらがたくさんあるんだよ」
二人は、青色のとびらを開けようとしました。そこには、黄色の字で何か書いてありました。
このレストランは、注文の多いレストランです。ご注意ください。
「注文の多いレストランだって。こんな山奥なのに、人気があるんだな」
「そうだな。東京で人気のレストランも、人があまり来ない場所にあるだろう」
二人はそう言いながら、とびらを開けました。すると、そのとびらの裏にまた何か書いてありました。
本当に注文が多いですが、がまんしてください。
「これはどういう意味だ?」と、一人の男が不思議そうに言いました。
「そうだな。これは、注文が多くて料理に時間がかかるけれど、ごめんなさいって意味だ」と、もう一人の男が言いました。
「なるほど、そういうことか。じゃ、早くどこかの席に座りたいな」
「そうだな」
と、二人は言いました。
ところが、また一つとびらがありました。そして、とびらのそばには鏡がかかっていて、その下にブラシが置いてありました。とびらには、赤い字で
お客さま、ここで髪をきれいにして、靴の泥を落としてください。
と、書いてありました。
「なるほど。僕たちはずっと山の中を歩いていて、髪も靴も汚れている」
「そうだな。でも、ルールが厳しいレストランだ。すごく偉い人が来るんじゃないか」
と、二人は言いました。そして、髪をきれいにして、靴の泥も落としました。すると、どうでしょう。台の上にブラシを置くと、ブラシも台もぼうっと消えて、風がどうっと部屋の中に入ってきました。
二人はびっくりして、急いでとびらを開けて、次の部屋に入りました。早く何か温かいものを食べたいなと思いました。早く温かいものを食べて元気にならないと、また変なことが起こるんじゃないかと、二人は思いました。
とびらの裏には、また変なことが書いてありました。
鉄砲と弾をここに置いてください。
とびらのすぐ横に黒い台がありました。
「なるほど。鉄砲を持って料理を食べるのは、マナーが悪い」
「そうだな。このレストランには、偉い人がよく来るんだろう」
二人は鉄砲を台の上に置きました。また、黒いとびらがありました。
どうか、ぼうしとコートと靴を脱いでください。
「どうする?脱ぐか?」
「そうだな。しかたがない。脱ごう。でも、本当に偉い人が奥の部屋に来ているんだな」
二人は、ぼうしとコートを脱いで、壁にかけました。そして、靴を脱いでぺたぺた歩いてとびらを開けました。とびらの裏には、
ネクタイのピンやメガネ、さいふなどの金属、特にとがったものは、ここに置いてください。
と、書いてありました。そして、とびらの横には黒い立派な金庫もありました。かぎもありました。
「なるほど。何かの料理に電気を使うんだろう。だから、金属は危ない。とがったものは、特に危ない」
「そうだな。じゃあ、お金は帰りにここで払うのかな」
「たぶんそうだろう」
「そうだな」
二人はメガネをはずしたり、ポケットからさいふを出したりして、全部金庫の中に入れました。そしてかぎをかけました。