以前、私はタイのチェンマイ(タイ北部の町)で日本語教師をしていました。その時のお話です。
学生Aさん:「先生、こんにちは~ご飯食べましたか?」
私:「あっ……はい、食べましたよ。クィッティアオ(タイのラーメン)を食べたから、もっとあつくなりました。」
タイでは上のような会話が普通です。タイ人はご飯を食べたかどうか、よく聞きます。私は何度もこの質問をされて、いつも不思議に思っていました。私がご飯を食べたかどうか、本当に興味があるのだろうか?ご飯を食べたかどうかを聞いて、私をご飯に誘っているのだろうか?
そこで、タイ人の日本語の先生に聞いてみました。
私:「さっきも、学生から≪ご飯食べましたか?≫と聞かれました。どうして、タイ人はいつもご飯を食べたかどうか聞くんですか? 学生に会ったとき、3時でした。3時のご飯って、何ご飯のことですか? お昼ごはん食べてから、もう何時間もたっているし、夜ご飯は早すぎるし。タイの屋台のご飯は少なめなので、みんなすぐお腹がすいちゃうから、タイ人は3時のおやつのようなご飯を食べるんですか?」
先生Bさん:「そんな真剣に考えなくていいよ~別にご飯を食べたかどうかは、気にしてないから(※)。ただの挨拶。会話を始めるためのただの質問だよ。」
私:「あ~、そんな簡単なことですか。」
先生Bさん:「日本人もそうでしょ。いつも天気の話をしてる。≪今年の夏は本当に暑いね。≫とか、≪毎日、雨で嫌だね。洗濯物が乾かない。≫とか。日本は四季があって、温度や気候の変化が大きいから、天気の挨拶をするのかな。これと同じことだよ。タイはお米、野菜、果物がたくさんあるから、あまり食べることに困らない。だから、ご飯の挨拶をするんだよ。」
この話を聞いてから、私はご飯についての会話が楽しくなりました。
この時から、私は学生から≪ご飯食べましたか?≫と聞かれたとき、≪いいえ、まだです。≫と答えるようにしました。
タイでは、何かを食べながら歩いている人が多いです。≪いいえ、まだです。≫と答えると、学生が自分が持っている小さく切った果物やルクチン(肉や魚の団子)をくれるようになりました。
(※)タイなど東南アジアでは、挨拶のとき、ご飯を食べたかどうかを聞くことは、相手の体や健康を気づかう優しさの意味もあるそうです。