ここは東京にある公園です。近くにはたくさんの会社があって、昼休みにはこの公園のベンチに座って、昼ごはんを食べる人も多いです。
その中に、二人の女性がいます。一人は長い髪を後ろでまとめて、眼鏡をかけている、真面目そうな人です。でも、眼鏡越しに見える目はキラキラしていて、笑っています。隣の女性は、その人よりは少し若い印象です。髪は明るい茶色で、柔らかなウェーブのある髪をゆったりと下ろしています。
ちょっと二人の会話を聞いてみましょう。
「ねえねえ、先輩」
「なに、リカちゃん」
若く見える女性の名前はリカ、もう一人はリカさんの先輩のようです。
「うちの課の山田さん、ちょっとひどくないですか」
「え、そう? なんか、言われたの?」
「ええ、いつも私がやってることに、いちいち文句言ってくるんですよね」
「そうなんだ。でも、それはリカちゃんが新人だからだよ。文句じゃなくて、指導だね」
先輩の目元は涼しげで、優しい印象です。一方、リカちゃんは笑顔ではありますが、口元をとがらせています。
「指導かもしれませんけど・・・。なんか、言い方がきついっていうか」
「ああ、山田さん、けっこう体育会系だからね」
「そうなんですよ。ここは大学の運動サークルじゃないんだから、もっと声のボリューム落とせって思いますよね」
「ああ、わかる! 山田さん、たしかに声が大きいよね」
「そうそう、あの人、飲み会のときとか、めっちゃくちゃ声が大きいんですよ。この間なんて、隣の席の人から注意されたんですから。超はずかしかったです」
「あはは! なんか、わかる」
二人は大きな笑い声をあげました。
「で、リカちゃん。どんなことを注意されるの」
「ああ、例えば、この間部長に頼まれて書類を作ったんですけどね。『リカちゃん、ここは普通、改行するでしょ』とか『普通に考えて、こんな言葉使わないでしょ』とか、細かいことを言われて、めんどうくさかったですよ」
「そういえば、リカちゃん、書類作成、下手だよね」
「えー、ひどい、先輩!」
また、二人は大きな笑い声をあげました。
「山田さん、いっつも『普通はさあ』とか『普通に考えて』って言うんですよね。あれ、けっこううざいです」
「ああ、なんか、わかる」
「ですよね」
「うん、あなたの普通は私の普通じゃありません、って言いたくなるよね」
「そうなんですよ! あなたが勝手に普通と思ってることが、どこに行っても普通だって思うなよって言いたくなります」
そこで、先輩は少しリカさんの目を見つめました。
「まあ、仕事ってお互いの普通をすり合わせて、共通の普通を作っていく作業でもあるよね」
「あ! 先輩、いいこと言いますね!」
「でしょ? たまには、ね」
先輩はニカっと大きく口を開けて、笑顔を見せました。
「じゃあ、先輩、会社に戻る前に、コンビニで何か甘いもの、買ってくださいよ」
「えー、なんで私がリカちゃんにおごるのよ」
「そりゃ、先輩ですもん。さ、行きましょ」
昼休みはもうすぐ終わります。二人は時々笑い声を上げながら、公園を出ていきました。