先日、友だちと映画を見にいった。映画を見たあと、その映画について友だちと話した。
「映画、どうだった?」
「普通におもしろかった」
「うん、普通におもしろかったよね。最後、感動して泣いちゃった」
「うん、うん」
そう、その映画は普通におもしろかった。
その夜、夕ごはんを食べたあと、母は私にこう聞いた。
「どう? おいしかった?」
私は答えた。
「うん、普通においしかったよ」
すると、母は少し残念そうな顔をして
「普通に、ってどういうこと? あまりおいしくなかった?」
と言った。
いや、普通においしかった。「すごくおいしい」わけじゃないけど、「けっこうおいしい」というか、「ちゃんとおいしい」というか、「まあまあおいしい」というか……。あ、「まあまあおいしい」は、「普通においしい」より下かな? よく考えると、よくわからなくなってくる。
そんなことを考えていたら、父がスマホの使い方を聞いてきた。
「このビデオ、ダウンロードしたいんだけど、どうすればいいの?」
私は答える。
「普通に、ここ押して、で、普通に『ダウンロード』ってのを選べばできるよ」
父は笑いながら言う。
「普通に押す、って(笑)。じゃあ、普通じゃなく押すこともあるの? 踊りながら押すとか、歌いながら押すとか?」
「いや、普通に。なんて言ったらいいのかな……、普通に押すんだよ、普通に」
考えれば考えるほど、わからなくなってくる。
映画は普通におもしろかった。感動して泣いちゃったし。母のごはんは普通においしかった。母の作るものはいつもおいしくて、今日もいつも通りおいしかった。スマホは普通に押せばいい。簡単なことだ。押すだけでいい。
あー、普通、こんなに難しいこと考えないから、普通に疲れた。もう普通にゲームして普通に寝よう。