わたしはベトナムのホーチミン市に住んでいたことがあります。住む前は、ベトナムの食べ物と言えば「フォー(Phở)」だと思っていました。実際、ホーチミンにはたくさんのフォーの店があって、わたしはどの店のフォーもおいしいと思いました。ところがある日、ベトナム人の知り合いが
「ホーチミンのフォーは、本物のフォーじゃない!」
と言いました。その知り合いに聞いたところ、フォーはハノイの名物だそうです。
「ハノイ出身の人はホーチミンのフォーなんて食べない!」
と、その人は言いました(ちょっと大げさ だと思いますが...笑)
その後、ハノイに行く機会があったので、ハノイ出身の友だちにおすすめのお店を聞いて、フォーを食べに行きました。確かに、すごくおいしかったです。すごくおいしかったのですが、わたしにとってはホーチミンのフォーも、すごくおいしいので、正直に言うと、あまり違いがわかりませんでした。
この話を大阪出身の友だちにしたところ、その友だちは
「わかるわー。東京のうどん、よう食べへんもん」
(わかるわー。東京のうどんなんか、食べられないもの)
と言いました。よく言われていることですが、東京のうどんと大阪のうどんは、汁(スープ)の味が違います。一般的に、東京の方が少ししょっぱくて汁の色が濃いです。大阪や京都などの関西地方のうどんは、汁の色がうすくて透明感があります。
ホーチミンのフォーも、ハノイのフォーも、東京のうどんも、大阪のうどんも、わたしにとってはすごくおいしいと思います。そして、ホーチミンにもハノイ風のフォーのお店がありますし、東京にも関西風のうどんのお店がたくさんあります。でも、ハノイの人は「ホーチミンのフォーは本物じゃない」と言い、大阪の人は「東京のうどんは味がうすすぎる」と言います。
わたしは北海道出身なのですが、個人的にはどこかの町と対決しようとは思いません。でも、食べ物だけではなく、いろいろな点で、「大阪の方が元気で明るくていい!」「いや、大阪はうるさすぎる! 東京の方がいい!」などと対決している友だちを見ると、地元への愛が深くて、少しうらやましいなと思います。