ここにゴミ箱の形をしたロボットがあります。ロボットは、ゴミを見つけて近づいてきます。でも、ゴミを拾うことができません。そのロボットはゴミの周りで、小さく体を動かしています。そして、少し困っているような弱い鳴き声を出しています。近くにいる人に、ごみがあることを教えているようです。近くにいた人が、ゴミを拾ってロボットの中に入れると、そのロボットは、おじぎをするように、少し体を倒しました。
また、別のロボットは、子どもたちに「ももたろう」の話をしています。「ももたろう」は、日本の子どもならみんな知っている有名な昔話です。大きな桃から生まれた男の子の話です。このお話は、川に大きな桃が流れてくるところから始まります。
ロボットが話しはじめました。
「今からね、『ももたろう』をね、話すよ。大きな……えーっと、何が流れてきたんだっけ……?」
子どもたちがうれしそうにロボットに教えてあげます。
「桃!」
「桃だよー。」
ロボットが答えます。
「そうだ、桃だった。」
子どもたちが声をあげて笑います。みんな楽しそうです。
ゴミを拾えない「ゴミ箱ロボット」、お話を忘れてしまう「お話ロボット」。豊橋技術科学大学の岡田美智男さんの研究室では、このような「弱いロボット」を開発しています。
一般的なロボットは、どのくらいすごいことができるかを強調します。人間が寝ている間に、部屋をきれいに掃除したり、人間が何もしなくても車を運転してくれたりします。ロボットが「できること」はどんどん増えています。でも、「弱いロボット」は、あえて、「できないこと」を人間に見せます。それは、人間のやさしさを引き出すためです。
ロボットに全てを頼ってしまうと、人間は「もっと早く!」とか「もっと上手に!」と考えてしまいます。また、ロボットが何かに失敗したり、人間の思う通りに動かないと、イライラしたりします。「弱いロボット」を開発している岡田さんは、「ロボットと人間が、お互いの強さと弱さを理解して協力することが大切だ」と考えています。相手の弱さを理解して助けてあげることや、相手の強さを理解して助けてもらうことは、人間と人間のコミュニケーションでも大切だと岡田さんは言っています。