おおきな草原に、一匹のオオカミとひつじの兄弟が住んでいました。
オオカミは、ときどきひつじの家族を襲っては、ひつじの子供を食べていました。
ある日のことです。長男のひつじが、兄弟に言いました。
「今日も、オオカミにぼくらの兄弟がひとり食べられてしまった。このままでは毎日びくびくしながら暮らさなければならない。ぼくたちはこんなに数が多いんだ。みんなで協力してオオカミを懲らしめようじゃないか。」
そこでひつじの兄弟は、オオカミを捕まえるための檻を作って木に吊るしました。
「よし! ぼくがオオカミを誘い出してくるから、オオカミがこの木の下に来たときに、檻を落とすんだ。」
ひつじの兄弟の作戦はうまくいきました。檻に閉じ込められたオオカミは、ひつじの兄弟に手も足もでません。ひつじの長男は言いました。
「オオカミさん。これからは、ぼくたちを襲わないように約束してください。約束してくれるなら、出してあげますよ。」
「そんな約束ができるわけがないだろう。お腹がすいて死んでしまう。」
「お腹がすいたら草を食べればいいんです。ぼくたちも、こぶたさんも、うさぎさんもみんなおいしそうに食べていますよ。」
オオカミは悲しそうにいいました。
「オレは草を食べられない。早く出してくれ。」
「約束できないのなら、出せません。ごきげんよう。」
ひつじの長男はそう言うと、兄弟と一緒に嬉しそうにうちに帰りました。
オオカミが檻に入ってから、ひつじの兄弟はのびのびと暮らしました。
もうオオカミに食べられてしまうことはありません。ひつじの兄弟は朝から晩までごろごろと横になって、草ばかり食べています。
一ヶ月ほどすると、ひつじの兄弟があんまり草を食べ過ぎたので、おおきな草原の草はほとんどなくなってしまいました。
「困ったことになった。このままだと、ぼくたちは飢え死にしてしまう。神様に頼んで草をのばしてもらおう。」
ひつじの長男は草原の真中に立って神様を呼びました。
「神様。もう草原にはほとんど草がありません。もっといっぱい草をのばしてもらえないでしょうか。」
雲の間から、神様は答えました。
「無理を言ってはいけないよ。草はすぐにのびるものじゃない。少し待てば、もとの草原に戻るじゃろう。」
「それでは、ぼくたちは飢え死にしてしまいます。」
「お腹がすいたら土を食べるといい。ミミズはおいしそうに食べているぞ。」
「ぼくたちは、土なんて食べられません。」
「それなら我慢するしかないのう。」
草原の草はすっかりなくなってしました。ひつじの兄弟はお腹がすいてたまりません。
ひつじの長男はふらふらになりながら、オオカミの檻がある木の下にやってきました。
「おお、ひつじ君。俺は腹が減って死にそうだ。君達を食べないと約束するから、ここから出しておくれ。」
やせ細ったオオカミは消えそうな声でそう言いました。
「いいえ、そんな約束はしなくていいんです。自分がはらぺこになってやっとわかりました。いま檻から出してあげます。」
一週間たつと、草原はすっかり元に戻りました。草ものびてきました。
ひつじの兄弟もいつものように、オオカミが来ると一目散に隠れました。
オオカミもやっぱりいつものように、ひつじを追っかけ草原を走りまわっています。