← Library‹ 猿かに合戦 二

かには柿かきの種たねをさっそくお庭にわにまきました。そして、

「早はやく芽めを出だせ、柿かきの種たね。

出ださぬと、はさみでちょん切ぎるぞ。」

と言いいました。すると間まもなく、かわいらしい芽めがにょきんと出でました。

かにはその芽めに向むかって毎日まいにち、

「早はやく木きになれ、柿かきの芽めよ。

ならぬと、はさみでちょん切ぎるぞ。」

と言いいました。すると柿かきの芽めはずんずんのびて、大おおきな木きになって、枝えだが出でて、葉はが茂しげって、やがて花はなが咲さきました。

かにはこんどはその木きに向むかって毎日まいにち、

「早はやく実みがなれ、柿かきの木きよ。

ならぬと、はさみでちょん切ぎるぞ。」

と言いいました。すると間まもなく柿かきの木きにはたくさん実みがなって、ずんずん赤あかくなりました。それを下したからかには見上みあげて、

「うまそうだなあ。早はやく一ひとつ食たべてみたい。」

といって、手てをのばしましたが、背せいがひくくってとどきません。こんどは木きの上うえに登のぼろうとしましたが、横よこばいですからいくら登のぼっても登のぼっても落おちてしまいます。とうとうかにもあきらめて、それでも毎日まいにち、くやしそうに下したからながめていました。

するとある日ひ猿さるが来きて、鈴すずなりになっている柿かきを見上みあげてよだれをたらしました。そしてこんなにりっぱな実みがなるなら、おむすびと取とりかえっこをするのではなかったと思おもいました。それを見みてかには、

「猿さるさん、ながめていないで、登のぼって取とってくれないか。お礼れいには柿かきを少すこし上あげるよ。」

と言いいました。猿さるは、

「しめた。」

と言いわないばかりの顔かおをして、

「よしよし、取とって上あげるから待まっておいで。」

と言いいながら、するする木きの上うえに登のぼっていきました。そして枝えだと枝えだとの間あいだにゆっくり腰こしをかけて、まず一ひとつ、うまそうな赤あかい柿かきをもいで、わざと、「どうもおいしい柿かきだ。」と言いい言いい、むしゃむしゃ食たべはじめました。かにはうらやましそうに下したでながめていましたが、

「おい、おい、自分じぶんばかり食たべないで、早はやくここへもほうっておくれよ。」

と言いいますと、猿さるは、「よし、よし。」と言いいながら、わざと青あおい柿かきをもいでほうり出だしました。かにはあわてて拾ひろって食たべてみますと、それはしぶくって口くちがまがりそうでした。かにが、

「これこれ、こんなしぶいのはだめだよ。もっとあまいのをおくれよ。」

と言いいますと、猿さるは「よし、よし。」と言いいながら、もっと青あおいのをもいで、ほうりました。かにが、

「こんどもやっぱりしぶくってだめだ。ほんとうにあまいのをおくれよ。」

と言いいますと、猿さるはうるさそうに、

「よし、そんならこれをやる。」

と言いいながら、いちばん青あおい硬かたいのをもいで、あおむいて待まっているかにの頭あたまをめがけて力ちからいっぱい投なげつけますと、かには、「あっ。」と言いったなり、ひどく甲羅こうらをうたれて、目めをまわして、死しんでしまいました。猿さるは、「ざまをみろ。」と言いいながら、こんどこそあまい柿かきを一人ひとりじめにして、おなかのやぶれるほどたくさん食たべて、その上うえ両手りょうてにかかえきれないほど持もって、あとをも見みずにどんどん逃にげて行いってしまいました。

猿さるが行いってしまったあとへ、そのときちょうど裏うらの小川おがわへ友ともだちと遊あそびに行いっていた子こがにが帰かえって来きました。見みると柿かきの木きの下したに親おやがにが甲羅こうらをくだかれて死しんでいます。子こがにはびっくりしておいおい泣なき出だしました。泣なきながら、「いったいだれがこんなひどいことをしたのだろう。」と思おもってよく見みますと、さっきまであれほどみごとになっていた柿かきがきれいになくなって、青あおい青あおいしぶ柿がきばかりが残のこっていました。

「じゃあ、猿さるのやつが殺ころして、柿かきを取とっていったのだな。」

とかにはくやしがって、またおいおい泣なき出だしました。

するとそこへ栗くりがぽんとはねて来きて、

「かにさん、かにさん、なぜ泣なくの。」

と聞ききました。子こがには、猿さるが親おやがにを殺ころしたから、かたきを討うちたいと言いいますと、栗くりは、

「にくい猿さるだ。よしよし、おじさんがかたきをとってやるから、お泣なきでない。」

と言いいました。

それでも子こがには泣ないていますと、こんどは蜂はちがぶんとうなって来きて、

「かにさん、かにさん、なぜ泣なくの。」

と聞ききました。

子こがには猿さるが親おやがにを殺ころしたから、かたきを討うちたいと言いいました。すると蜂はちも、

「にくい猿さるだ。よしよし、おじさんがかたきをとってやるから、お泣なきでない。」

と言いいました。

それでも子こがにがまだ泣ないていますと、こんどは昆布こんぶがのろのろすべって来きて、

「かにさん、かにさん、なぜ泣なくの。」

と聞ききました。

子こがには猿さるが親おやがにを殺ころしたから、かたきを討うちたいと言いいました。すると昆布こんぶも、

「にくい猿さるだ。よしよし、おじさんがかたきをとってやるから、お泣なきでない。」

と言いいました。

それでも子こがにがまだ泣ないていますと、こんどは臼うすがころころころがって来きて、

「かにさん、かにさん、なぜ泣なくの。」

と聞ききました。

子こがには猿さるが親おやがにを殺ころしたから、かたきを討うちたいと言いいました。すると臼うすも、

「にくい猿さるだ。よしよし、おじさんがかたきをとってやるから、お泣なきでない。」

と言いいました。

子こがにはこれですっかり泣なきやみました。栗くりと蜂はちと昆布こんぶと臼うすとは、みんなよって、かたき討うちの相談そうだんをはじめました。

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