真夏まなつの宿場しゅくばは空虚くうきょであった。ただ眼めの大おおきな一疋いっぴきの蠅はえだけは、薄暗うすぐらい厩うまやの隅すみの蜘蛛くもの巣すにひっかかると、後肢あとあしで網あみを跳はねつつ暫しばらくぶらぶらと揺ゆれていた。と、豆まめのようにぼたりと落おちた。そうして、馬糞ばふんの重おもみに斜ななめに突つき立たっている藁わらの端はしから、裸体らたいにされた馬うまの背中せなかまで這はい上あがった。