← Library‹ 瓶詰地獄 ◇第一の瓶の内容

ああ………この離はなれ島じまに、救すくいの舟ふねがとうとう来きました。

大おおきな二に本ほんのエントツの舟ふねから、ボートが二に艘そう、荒浪あらなみの上うえにおろされました。舟ふねの上うえから、それを見送みおくっている人々ひとびとの中なかにまじって、私わたくしたちのお父ちちさまや、お母ははさまと思おもわれる、なつかしいお姿すがたが見みえます。そうして……おお……私わたくしたちの方ほうに向むかって、白しろいハンカチを振ふって下くださるのが、ここからよくわかります。

お父ちちさまや、お母ははさまたちはきっと、私わたくしたちが一番いちばんはじめに出だした、ビール瓶びんの手紙てがみを御覧ごらんになって、助たすけに来きて下くだすったに違ちがいありませぬ。

大おおきな船ふねから真白まっしろい煙けむりが出でて、今いま助たすけに行いくぞ……というように、高たかい高たかい笛ふえの音おとが聞きこえて来きました。その音おとが、この小ちいさな島しまの中なかの、禽鳥とりや昆虫むしを一いち時じに飛とび立たたせて、遠とおい海中わだなかに消きえて行いきました。

けれども、それは、私わたくしたち二人ふたりにとって、最後さいごの審判しんぱんの日ひの箛らっぱよりも怖おそろしい響ひびきで御座ございました。私わたくしたちの前まえで天てんと地ちが裂さけて、神かみ様さまのお眼めの光ひかりと、地獄じごくの火焔ほのおが一時いっときに閃ひらめき出でたように思おもわれました。

ああ。手てが慄ふるえて、心こころが倉皇あわてて書かかれませぬ。涙なみだで眼めが見みえなくなります。

私わたくしたち二人ふたりは、今いまから、あの大おおきな船ふねの真ま正面しょうめんに在ある高たかい崖がけの上うえに登のぼって、お父ちち様さまや、お母はは様さまや、救すくいに来きて下くださる水夫すいふさん達たちによく見みえるように、シッカリと抱だき合あったまま、深ふかい淵ふちの中なかに身みを投なげて死しにます。そうしたら、いつも、あそこに泳およいでいるフカが、間まもなく、私わたくしたちを喰たべてしまってくれるでしょう。そうして、あとには、この手紙てがみを詰つめたビール瓶びんが一いち本ほん浮ういているのを、ボートに乗のっている人々ひとびとが見みつけて、拾ひろい上あげて下くださるでしょう。

ああ。お父ちち様さま。お母はは様さま。すみません。すみません、すみません、すみません。私わたくしたちは初はじめから、あなた方かたの愛子いとしごでなかったと思おもって諦たいらめて下くださいませ。

又また、せっかく、遠とおい故郷ふるさとから、私わたくしたち二人ふたりを、わざわざ助たすけに来きて下くだすった皆みな様さまの御ご親切しんせつに対たいしても、こんなことをする私わたくしたち二人ふたりはホントにホントに済すみません。どうぞどうぞお赦ゆるし下ください。そうして、お父ちち様さまと、お母はは様さまに懐いだかれて、人間にんげんの世界せかいへ帰かえる、喜よろこびの時ときが来くると同時どうじに、死しんで行いかねばならぬ、不倖ふしあわせな私わたくしたちの運命うんめいを、お矜恤あわれみ下くださいませ。

私わたくしたちは、こうして私わたくしたちの肉体にくたいと霊魂たましいを罰ばっせねば、犯おかした罪つみの報償つぐのいが出来できないのです。この離はなれ島じまの中なかで、私わたくしたち二人ふたりが犯おかした、それはそれは恐おそろしい悖戻よこしまの報責むくいなのです。

どうぞ、これより以上うえに懺悔ざんげすることを、おゆるし下ください。私わたくしたち二人ふたりはフカの餌食えじきになる価打ねうちしか無ない、狂妄しれものだったのですから……。

ああ。さようなら。

神かみ様さまからも人間にんげんからも救すくわれ得えぬ

哀かなしき二人ふたりより

お父ちち様さま

お母はは様さま

皆々みなみな様さま

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