毎日おもしろい、めずらしいことが、それからそれとつづいて、あまりりゅう宮がたのしいので、なんということもおもわずに、うかうかあそんでくらすうち、三年の月日がたちました。
三年めの春になったとき、浦島はときどき、ひさしくわすれていたふるさとの夢を見るようになりました。春の日のぽかぽかあたっている水の江の浜べで、りょうしたちがげんきよく舟うたをうたいながら、網をひいたり舟をこいだりしているところを、まざまざと夢に見るようになりました。浦島はいまさらのように、
「おとうさんや、おかあさんは、いまごろどうしておいでになるだろう」
と、こうおもい出すと、もう、いても立ってもいられなくなるような気がしました。なんでも早くうちへ帰りたいとばかりおもうようになりました。ですから、もうこのごろでは、歌をきいても、踊りを見ても、おもしろくない顔をして、ふさぎこんでばかりいました。
その様子を見ると、乙姫さまは心配して、
「浦島さん、ご気分でもおわるいのですか」
とおききになりました。浦島はもじもじしながら、
「いいえ、そうではありません。じつはうちへ帰りたくなったものですから」
といいますと、乙姫さまはきゅうに、たいそうがっかりした様子をなさいました。
「まあ、それはざんねんでございますこと。でもあなたのお顔をはいけんいたしますと、この上おひきとめ申しても、むだのようにおもわれます。ではいたし方ございません、行っていらっしゃいまし」
こうかなしそうにいって、乙姫さまは、奥からきれいな宝石でかざった箱を持っておいでになって、
「これは玉手箱といって、なかには、人間のいちばんだいじなたからがこめてございます。これをおわかれのしるしにさし上げますから、お持ちかえりくださいまし。ですが、あなたがもういちどりゅう宮へ帰ってきたいとおぼしめすなら、どんなことがあっても、けっしてこの箱をあけてごらんになってはいけません」
と、くれぐれもねんをおして、玉手箱をおわたしになりました。浦島は、
「ええ、ええ、けっしてあけません」
といって、玉手箱をこわきにかかえたまま、りゅう宮の門を出ますと、乙姫さまは、またおおぜいの腰元をつれて、門のそとまでお見送りになりました。
もうそこには、れいのかめがきて待っていました。
浦島はうれしいのとかなしいのとで、胸がいっぱいになっていました。そしてかめの背中にのりますと、かめはすぐ波を切って上がって行って、まもなくもとの浜べにつきました。
「では浦島さん、ごきげんよろしゅう」
と、かめはいって、また水のなかにもぐって行きました。浦島はしばらく、かめの行くえを見送っていました。