← Library‹ 頬よせてホノルル ヒロ発11時58分 4

明あくる日ひは、きれいに晴はれた。気温きおんも上あがった。午後ごご一いち時じに、スーパー・マーケットの正面しょうめんで、ぼくは妹いもうとと待まち合あわせた。昼ひるの休やすみにオフィスを出でた彼女かのじょは、クリスマス・トゥリーを買かうためにスーパー・マーケットにやって来きた。そのトゥリーを乗のせて帰かえるため、隣となりに住すんでいるドイツ人にん夫妻ふさいから、ぼくはピックアップ・トラックを借かりてきた。

約束やくそくの時間じかんに、ヘレンは現あらわれた。ぼくにむけて笑顔えがおで歩あるきながら、バッグからガムのケースを出だしてフラップを開ひらき、ケースの口くちをぼくにむけて差さし出だした。

「ガムはいかが」

笑わらいながら、ぼくは一いち枚まい、抜ぬき出だした。

「このケースは、好評こうひょうなのよ。みんな、びっくりしてるわ」

トゥリーの予約よやくをしておいた人ひとたちに、マーケットの裏側うらがわの駐車ちゅうしゃ場じょうで引ひき渡わたしがおこなわれていた。トゥリーが何なん本ほんもならんでいて、人ひとが大勢おおぜいいた。

「去年きょねんは、おなじく本土ほんどからコンティナー船せんで運はこんできたトゥリーの売うり出だしを、ホノルルで見物けんぶつしたわ。予約よやくではなくて、早はやい者もの勝かちだったので、まだ暗くらいうちから並ならんでいる人ひともたくさんいて、大おおさわぎだったのよ。一いち万まん七千ななせん本ほんのトゥリーが、去年きょねんは売うれたの」

買かった木きをかかえて歩あるいている人ひとがいた。うしろから見みると、その人ひとの姿すがたは完全かんぜんに木きにかくれていて、木きだけが右みぎに左ひだりに交互こうごに傾かたむきつつ歩あるいているように見みえた。

妹いもうとが予約よやくしておいたのは、七ななフィートから八はちフィートの高たかさの木きだった。値段ねだんは五十ごじゅうドルを越こえていて、七ななフィートの木きと八はちフィートの木きとのあいだには、微妙びみょうな価格かかくの差さがあった。

五十ごじゅう二にドル七十ななじゅう八はちセントを支払しはらって、ヘレンは自分じぶんの木きを引ひきとった。かかえようとするぼくを制せいし、彼女かのじょはその木きを自分じぶんで持もち上あげた。自分じぶんよりも高たかい木きを両腕りょううででかかえて歩あるく彼女かのじょを、ぼくは横よこから写真しゃしんに撮とった。カメラにむけた彼女かのじょの笑顔えがおに、明あかるく陽ひが当あたっていた。

その木きをピックアップ・トラックの荷台にだいに乗のせ、ぼくは両親りょうしんの家いえへ帰かえった。父親ちちおやとふたりで木きを降おろし、居間いまに運はこびこんだ。居間いまの中央ちゅうおうに、その木きをとりあえず立たてた。

飾かざりつけをするのは、ヘレンのひとり息子むすこの仕事しごとだと、母ははが説明せつめいした。何なん人にんかの生徒せいとがチームを作つくり、クリスマス・トゥリーの飾かざりつけをおこなう。完成かんせいしたなら、クラスの生徒せいとたちが見みて評価ひょうかするという。クラスの授業じゅぎょうの一部いちぶなのだと、母ははは言いった。

夕方ゆうがた、いろんな人ひとたちがそのトゥリーを見みに来きた。ぼくにとって親類しんるいにあたる人ひとたちが、何なん人にんもいた。ごく幼おさない頃ころのぼくを抱いだいてよく散歩さんぽにいったよ、と懐なつかしそうに言いう老人ろうじんもいた。

アメリカ海軍かいぐんの会計かいけい士しをやっているという、ぼくとおなじ年齢ねんれいの男おとこも、妻つまをともなって来きていた。ぼくの仕事しごとに興味きょうみを示しめした遠縁とおえんの彼かれは、ぼくの年収ねんしゅうや必要ひつよう経費けいひのことなどを、細こまかく聞きいた。ここに住すんで英語えいごでストーリーを書かけ、そのほうが税金ぜいきんの面めんではるかに有利ゆうりだと、彼かれはとりあえずの結論けつろんとしてぼくに言いった。トゥリーを見みに来きた人ひとたち全員ぜんいんに、ヘレンは、ガムのケースを出だしてガムをすすめていた。

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