明くる日は、きれいに晴れた。気温も上がった。午後一時に、スーパー・マーケットの正面で、ぼくは妹と待ち合わせた。昼の休みにオフィスを出た彼女は、クリスマス・トゥリーを買うためにスーパー・マーケットにやって来た。そのトゥリーを乗せて帰るため、隣りに住んでいるドイツ人夫妻から、ぼくはピックアップ・トラックを借りてきた。
約束の時間に、ヘレンは現れた。ぼくにむけて笑顔で歩きながら、バッグからガムのケースを出してフラップを開き、ケースの口をぼくにむけて差し出した。
「ガムはいかが」
笑いながら、ぼくは一枚、抜き出した。
「このケースは、好評なのよ。みんな、びっくりしてるわ」
トゥリーの予約をしておいた人たちに、マーケットの裏側の駐車場で引き渡しがおこなわれていた。トゥリーが何本もならんでいて、人が大勢いた。
「去年は、おなじく本土からコンティナー船で運んできたトゥリーの売り出しを、ホノルルで見物したわ。予約ではなくて、早い者勝ちだったので、まだ暗いうちから並んでいる人もたくさんいて、大さわぎだったのよ。一万七千本のトゥリーが、去年は売れたの」
買った木をかかえて歩いている人がいた。うしろから見ると、その人の姿は完全に木にかくれていて、木だけが右に左に交互に傾きつつ歩いているように見えた。
妹が予約しておいたのは、七フィートから八フィートの高さの木だった。値段は五十ドルを越えていて、七フィートの木と八フィートの木とのあいだには、微妙な価格の差があった。
五十二ドル七十八セントを支払って、ヘレンは自分の木を引きとった。かかえようとするぼくを制し、彼女はその木を自分で持ち上げた。自分よりも高い木を両腕でかかえて歩く彼女を、ぼくは横から写真に撮った。カメラにむけた彼女の笑顔に、明るく陽が当たっていた。
その木をピックアップ・トラックの荷台に乗せ、ぼくは両親の家へ帰った。父親とふたりで木を降ろし、居間に運びこんだ。居間の中央に、その木をとりあえず立てた。
飾りつけをするのは、ヘレンのひとり息子の仕事だと、母が説明した。何人かの生徒がチームを作り、クリスマス・トゥリーの飾りつけをおこなう。完成したなら、クラスの生徒たちが見て評価するという。クラスの授業の一部なのだと、母は言った。
夕方、いろんな人たちがそのトゥリーを見に来た。ぼくにとって親類にあたる人たちが、何人もいた。ごく幼い頃のぼくを抱いてよく散歩にいったよ、と懐かしそうに言う老人もいた。
アメリカ海軍の会計士をやっているという、ぼくとおなじ年齢の男も、妻をともなって来ていた。ぼくの仕事に興味を示した遠縁の彼は、ぼくの年収や必要経費のことなどを、細かく聞いた。ここに住んで英語でストーリーを書け、そのほうが税金の面ではるかに有利だと、彼はとりあえずの結論としてぼくに言った。トゥリーを見に来た人たち全員に、ヘレンは、ガムのケースを出してガムをすすめていた。