← Library‹ 時差のないふたつの島 25

次つぎの日ひの朝あさ、十じゅう時じをすこし過すぎてから、ぼくは、日本にっぽん人にんの写真しゃしん家かがメッセージのなかで指定していしていた番号ばんごうのところに、電話でんわをかけた。

日系にっけいの三さん世せいだと断言だんげんしていい中年ちゅうねんの女性じょせいが、電話でんわに出でた。

「お店みせに、佐々木ささきという人ひとが来きているはずですけれど、呼よんでいただけますか」

と、ぼくは言いった。

「ちょと待まってください」

独特どくとくの英語えいごで彼女かのじょは言いい、受話じゅわ器きをなにかの台だいの上うえに置おきながら、

「マック、電話でんわよ」

と、すこし離はなれたところにいる相手あいてに、呼よびかけた。彼女かのじょが受話じゅわ器きを置おくときの彼女かのじょの腕うでの動うごきや、彼女かのじょからマックまでの距離きょりなどが、受話じゅわ器きから伝つたわってくる音おとだけで、はっきりとわかった。

男性だんせいの声こえが返事へんじをするのが、かすかに聞きこえた。やがて足音あしおとが受話じゅわ器きにむけて接近せっきんし、人ひとの手てが受話じゅわ器きを持もちあげるのが、気配けはいでわかった。

「マックです」

と、その男性だんせいは言いった。

バーソロミューも、彼かれのことをマックと呼よんでいた。なぜマックなのだろうかとぼんやり思おもいながら、ぼくは自分じぶんの名なを告つげた。

「やあ、こんにちは」

と、彼かれは日本にっぽん語ごにきりかえた。きさくな明あかるさが、彼かれにとって肯定こうてい的てきな力ちからとなっている声こえと抑揚よくようで、マックは、

「待まってました。いま、どこですか」

と、つけ加くわえた。

ぼくは、いま自分じぶんがいる場所ばしょを彼かれに伝つたえた。

「ちょっと遠とおいですね」

マックが言いった。

「もう昼食ちゅうしょくですか」

と、ぼくはきいた。

「いやいや、これは朝あさめしです」

マックがこたえた。

いま彼かれがいる店みせを、ぼくはよく知しっている。南みなみベレタニア・ストリートにある、宮島みやじまという屋号やごうの食堂しょくどうだ。

「そうすると、お昼ひるは、何時頃いつごろに食たべるのですか」

ぼくの質問しつもんに、マックは笑わらった。

「一時いちじ頃ころかな」

「では、その時間じかんに、ぼくはそこへいきますよ」

「ここへ」

「ええ」

「知しっていますか、ここを」

「よく知しってます」

「では、ここでいっしょに、お昼ひるを食たべましょう」

小ちいさな約束やくそくをひとつつくって、ぼくたちは電話でんわを終おわった。

Next chapter →
Click a word · hold for the whole sentence 0%