← Library‹ 時差のないふたつの島 4

あくる日ひの朝あさ、まだ早はやい時間じかんに、ぼくはアパートメントを出でた。三さんブロック歩あるいておもての大通おおどおりへ出でていき、朝刊ちょうかんを買かった。

ウールワースのレストランでその朝刊ちょうかんを読よみながら、ぼくは朝食ちょうしょくをとった。つまらないことばかり書かいてある朝刊ちょうかんだった。一面いちめんに出でている本日ほんじつのジョークさえ、つまらなかった。

朝食ちょうしょくを終おわる頃ころには、その新聞しんぶんにうんざりしてしまった。なんでもいいから、夢中むちゅうになって読よむことの出来できるような文章ぶんしょうを読よみたい、とぼくは思おもった。

ウールワースを出でたぼくは、ザ・バスに乗のり、ショッピング・センターへいった。巨大きょだいなショッピング・センターのなかでスーパー・マーケットを二、三にさん軒けんまわり、それからブックストアへいくと、自分じぶんの気持きもちのなかのリズムは、急速きゅうそくにその町まちの持もつリズムに同調どうちょうしていった。

一いち階かいにある大おおきなブックストアで、ぼくは時間じかんをかけて本ほんをさがした。ハード・カヴァーの本ほんを一いち冊さつと、きわめて文芸ぶんげい的てきな同人どうにん雑誌ざっしを一いち冊さつ、ぼくは買かった。ハード・カヴァーの本ほんは、この島しまで昔むかしから肉体にくたい労働ろうどうを続つづけてきた人ひとたちを何なん人にんもインタヴューし、彼かれらの生活せいかつを彼かれら自身じしんの言葉ことばによって語かたらせ、そのまま文章ぶんしょうにして収録しゅうろくした、面白おもしろそうな本ほんだった。

同人どうにん雑誌ざっしには、詩しやエッセイ、そして短編たんぺん小説しょうせつが、おさめてあった。ワード・プロセサーで打うったものをそのまま印刷いんさつ原稿げんこうにした、なんの愛想あいそもない、簡潔かんけつなつくりの小ちいさな雑誌ざっしだった。

ぼくは、公園こうえんまで歩あるいた。今日きょうのように空そらがまっ青さおで陽ひざしが強つよく、風かぜがさわやかな日ひに、公園こうえんにむかって歩あるいていると、公園こうえんにつくまではなんだかとてもきまり悪わるいことをしているような気きになる。いまごろになって、のこのこと公園こうえんへ歩あるいていくとは。もっと早はやくに、とっくに、公園こうえんで草くさの上うえに横よこたわっていなくてはいけない。

大おおきな樹きが草くさの上うえにつくる影かげのなかに横よこたわり、ぼくは買かってきたばかりの同人どうにん雑誌ざっしを読よんだ。三さん編へんある小説しょうせつのうち、いちばんはじめのひとつを、ぼくは読よんだ。その物語ものがたりには、『王子おうじたちのための美うつくしい波なみ』という意味いみのタイトルが、ハワイ語ごでつけてあった。

ぼくがその物語ものがたりを読よんでいるあいだずっと、雑誌ざっしのページは、風かぜを受うけて小ちいさくはためき続つづけた。物語ものがたりは、たいへんに面白おもしろかった。的確てきかくな言葉ことばづかいがいずれ必かならず生うみ出だす良質りょうしつの叙情じょじょうが、端正たんせいにくっきりと展開てんかいしていくストーリーに、美うつくしくよりそっていた。

島しまのなかにある山やまの描写びょうしゃから、物語ものがたりはスタートしていた。描写びょうしゃはやがてその山やまのなかにある巨大きょだいな岩いわへと移うつり、その岩いわの側面そくめんに簡潔かんけつな線せんで描えがかれた壁画へきがを、作者さくしゃは自分じぶんの文章ぶんしょうによって浮うき立たたせた。サーフボードで大波おおなみに乗のっている若わかい男性だんせいを描えがいた壁画へきがだった。

まだこの島しまに人ひとが定住ていじゅうしていなかった大昔おおむかしに描えがかれた壁画へきがであることが科学かがく的てきに判定はんていされていくプロセスが、その物語ものがたりにとっての助走じょそう路ろとなっていた。そしてそこから、小説しょうせつ的てきな想像そうぞう力りょくによって、まるで神話しんわのように面白おもしろいストーリーが、展開てんかいしてあった。

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