← Library‹ 時差のないふたつの島 5

現在げんざいのタヒチ、あるいは位置いち的てきにタヒチのごく近ちかくに設定せっていされた架空かくうの島しまに、王国おうこくが繁栄はんえいしていた。南みなみ太平たいへい洋ようにヨーロッパから白人はくじんたちがやってくる遥はるか以前いぜんの時代じだいだ。

その王国おうこくの王おうが、病気びょうきにかかる。病気びょうきは、なかなか治なおらない。一進いっしん一退いったいの状態じょうたいが、長ながいあいだ続つづく。王おうは、次第しだいに弱よわっていく。僧侶そうりょや占うらない師し、医師いし、魔法まほう使つかいたちは、やがて、王おうの運命うんめいに関かんして、それぞれに判定はんていを下くだす。王おうの病やまいは不治ふじであり、彼かれの寿命じゅみょうはすでに尽つきている、と彼かれらは判断はんだんする。

王おうには、それぞれ腹はらちがいの息子むすこが、三さん人にんいる。その三さん人にんの息子むすこを、王おうは病床びょうしょうの枕まくらもとに呼よびよせる。そして、彼かれら三さん人にんに、王おうは次つぎのように命令めいれいする。

双胴そうどうのカヌーをつくれ。そして、大海たいかいへ漕こぎ出だせ。海うみの果はてまでいくつもりで、何なん日にちも航海こうかいを続つづけよ。やがて、列島れっとうに到着とうちゃくするであろう。その列島れっとうのいちばん南みなみにある島しまに上陸じょうりくせよ。海うみに沿そって右みぎまわりに海岸かいがん線せんをいくと、ひとつの湾わんに出でる。その湾わんには、これまで誰だれも見みたことのないような巨大きょだいな波なみが出来できる。その湾わんの波なみがもっとも大おおきくなるときを待まってその波なみを乗のりこなし、しかるのち再ふたたびこの王国おうこくに帰かえってこい。そして、その大波おおなみについて、私わたくしに報告ほうこくせよ。

命令めいれいを受うけた三さん人にんの息子むすこたちは、双胴そうどうのカヌーの建設けんせつにとりかかる。やがてカヌーは完成かんせいする。王おうの息子むすこたちはそのカヌーに乗のりこみ、大おお海原うなばらの果はてにむけて航海こうかいをはじめる。

海うみは、荒あれる。しかし、航海こうかいは続つづいていく。海うみとその波なみしか見みえない日々ひびが、続つづいていく。王おうが語かたっていた列島れっとうはほんとにあるのだろうかと三さん人にんが思おもいはじめる頃ころ、行手ゆくてに島影しまかげが見みえてくる。

三さん人にんの青年せいねんたちは、いちばん南みなみの島しまに上陸じょうりくする。王おうの言葉ことばどおり、海うみに沿そって右みぎまわりに島しまをまわっていくと、王おうが詳くわしく描写びょうしゃしてくれたとおりの湾わんにたどりつく。湾わんそのものは、王おうが言いっていたとおりだが、沖おきの海うみには波なみはまったくない。

青年せいねんたちは、湾わんのそばに小屋こやを建たてる。日々ひびを、そこで過すごしていく。季節きせつは微妙びみょうに変化へんかしていき、やがて湾わんの沖おきには、大おおきく波なみが出来できはじめる。

湾わんのすぐうしろに、深ふかい谷たにを刻きざんでどっしりと横よこたわっている山やまなみと対比たいひして、海うみにも波なみによって山やまが出来できていると表現ひょうげんしてさしつかえないほどにその波なみが巨大きょだいとなった日ひの朝あさ、三さん人にんの青年せいねんたちは王国おうこくから持もって来きたサーフボードで、その大波おおなみに挑いどむ。

三さん人にんのうちひとりは、サーフボードからほうり出だされて大波おおなみの底そこにまきこまれ、怪我けがをする。しかし、青年せいねんたちは、その湾わんの沖おきに出来できる大波おおなみを、一いち日にちがかりでそれぞれ見事みごとに征服せいふくする。

そのことの証明しょうめいとして、彼かれらは、あくる日ひ、湾わんから山やまにむかって渓谷けいこくをわけ入いったところにある滝たきの近ちかくの大おおきな岩いわの側面そくめんに、大波おおなみに乗のっている自分じぶんたちを、簡単かんたんな線画せんがで描えがく。彼かれらはカヌーに乗のり、自分じぶんたちの島しまをめざして帰かえっていく。

彼かれらが王国おうこくに帰かえってみると、王おうはすでにこの世よの人ひとではない。王おうの魂たましいをこの世よに呼よびもどすための儀式ぎしきが、おこなわれる。帰かえってきた王おうの魂たましいにむかって、三さん人にんの青年せいねんたちは、征服せいふくしてきた大波おおなみのことを報告ほうこくする。

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