現在のタヒチ、あるいは位置的にタヒチのごく近くに設定された架空の島に、王国が繁栄していた。南太平洋にヨーロッパから白人たちがやってくる遥か以前の時代だ。
その王国の王が、病気にかかる。病気は、なかなか治らない。一進一退の状態が、長いあいだ続く。王は、次第に弱っていく。僧侶や占い師、医師、魔法使いたちは、やがて、王の運命に関して、それぞれに判定を下す。王の病は不治であり、彼の寿命はすでに尽きている、と彼らは判断する。
王には、それぞれ腹ちがいの息子が、三人いる。その三人の息子を、王は病床の枕もとに呼びよせる。そして、彼ら三人に、王は次のように命令する。
双胴のカヌーをつくれ。そして、大海へ漕ぎ出せ。海の果てまでいくつもりで、何日も航海を続けよ。やがて、列島に到着するであろう。その列島のいちばん南にある島に上陸せよ。海に沿って右まわりに海岸線をいくと、ひとつの湾に出る。その湾には、これまで誰も見たことのないような巨大な波が出来る。その湾の波がもっとも大きくなるときを待ってその波を乗りこなし、しかるのち再びこの王国に帰ってこい。そして、その大波について、私に報告せよ。
命令を受けた三人の息子たちは、双胴のカヌーの建設にとりかかる。やがてカヌーは完成する。王の息子たちはそのカヌーに乗りこみ、大海原の果てにむけて航海をはじめる。
海は、荒れる。しかし、航海は続いていく。海とその波しか見えない日々が、続いていく。王が語っていた列島はほんとにあるのだろうかと三人が思いはじめる頃、行手に島影が見えてくる。
三人の青年たちは、いちばん南の島に上陸する。王の言葉どおり、海に沿って右まわりに島をまわっていくと、王が詳しく描写してくれたとおりの湾にたどりつく。湾そのものは、王が言っていたとおりだが、沖の海には波はまったくない。
青年たちは、湾のそばに小屋を建てる。日々を、そこで過ごしていく。季節は微妙に変化していき、やがて湾の沖には、大きく波が出来はじめる。
湾のすぐうしろに、深い谷を刻んでどっしりと横たわっている山なみと対比して、海にも波によって山が出来ていると表現してさしつかえないほどにその波が巨大となった日の朝、三人の青年たちは王国から持って来たサーフボードで、その大波に挑む。
三人のうちひとりは、サーフボードからほうり出されて大波の底にまきこまれ、怪我をする。しかし、青年たちは、その湾の沖に出来る大波を、一日がかりでそれぞれ見事に征服する。
そのことの証明として、彼らは、あくる日、湾から山にむかって渓谷をわけ入ったところにある滝の近くの大きな岩の側面に、大波に乗っている自分たちを、簡単な線画で描く。彼らはカヌーに乗り、自分たちの島をめざして帰っていく。
彼らが王国に帰ってみると、王はすでにこの世の人ではない。王の魂をこの世に呼びもどすための儀式が、おこなわれる。帰ってきた王の魂にむかって、三人の青年たちは、征服してきた大波のことを報告する。