ジェニファーの映画『第57番サーフ最後の日々』の完成特別試写会のあと、僕とラリー・デイヴィスは、ふたりだけでアラモアナのオフィスに帰って来た。映画は素晴らしい出来ばえだった。友人のミュージシャンたちを総動員したオリジナル・スコアが、抜群の効果をあげていた。第57番サーフの消滅と、それをめぐって起きた出来事のすべてを、スクリーンの上で体験しなおし、確認することが出来た。
オフィスには小さな小包みがひとつ届いていた。南アフリカからだった。差出人はチャールズ・ファーデンス。第57番サーフが消えるかわりに、コンクリートの人工海底でサーフを作り出すことを電力会社に売りこんだ、あの男だ。
「南アフリカか」
小包みの重みを手で量りながら、ラリー・デイヴィスが言った。
「旅に出るとは聞いていたけれど」
旅とは、サーフボードと8ミリの撮影機とともにおこなう、サーフ・サファリだ。
「この中身は五十フィートほどの8ミリ映画だよ」
ラリーの言うとおりだった。小包みのなかから、リールに巻いた8ミリのカラー・フィルムが一本、出て来た。地図を描いた紙が添えてあり、「ラリー。この波なら、きみにも気に入ってもらえるだろう。きみの新しい恋人になれそうなら、アロハを言いに来てほしい」と、走り書きしてあった。
「映写機にかけてみてくれ」
ラリーはフィルムを僕にほうった。
奥の部屋のプロジェクターに、僕はフィルムをかけた。入って来たラリーは、スクリーンに向かって置いてあるソファにすわった。部屋の照明を消すため、僕は壁のスイッチまで歩いた。僕を振り返ってラリーは言った。
「おい、バリー。このところ俺たちは、映画ばかり見てるな」
「波乗りに映画はつきものだから」
「たしかにそうだ」
「ジェニファーの映画にもつきあったし」
「映画ってのは、しかし、影だよ。光と影だ」
「平面に映写された光と影を見てるわけだ」
「本物を見にいこう」
ラリーは言った。
「チャールズが送ってくれた波のフィルムが素晴らしかったら、ただちに南アフリカへいこう」
「ジェニファーもいくと言うだろうな。また映画を撮るために」
ラリーは笑った。
「ひそかに出かければいい」
「そうしよう」
「よし、きめた。映写してくれ」
あのチャールズ・ファーデンスがわざわざ8ミリに撮り、送って来た波だ。相当なものに違いない。部屋の照明を消し、僕はプロジェクターへ歩いた。