特急で二時間かかった。東京の都心の東側へ東北の方向から入った終点で、彼ら四人は特急を降りた。佐々木祐一と山形多恵子、そしておなじクラスの男女ひとりずつ、合計四人だ。
駅の構内から彼らは外の道路へ出た。交差点を渡りながら、
「東京は臭くてむっとするわね」
と山形多恵子が言った。湿度の高い、重く曇った日だった。
今日の彼らは、買い物と東京見物をしに来た。祐一と多恵子が以前から約束をしていて、それにほかのふたりが加わった。祐一が島村という男性を、そして多恵子が荒木という女性を、それぞれ連れてきた。
買い物のための場所は駅からすぐのところにあった。高架になった鉄道の環状線に沿って、そしてその下に、彼らが乗ってきた特急の終着駅から環状線の次の駅までのあいだ、店がびっしりと密集してならんでいた。
高架に沿った表通りには、海産物の店と衣料品店が軒をつらねていた。高架の下には中心となる一本の通路がまっすぐにのび、それに対して何本ものわき道が内部で交差していた。通路に面して、化粧品や衣料品の店が連続していた。裏通りにも、高架に沿って店がつながっていた。
化粧品に強い興味を示す女性たちに、まず男性ふたりがつきあった。そのあと、四人はともにアロハ・シャツやTシャツ、そしてショート・パンツなどを買った。祐一が連れて来た島村は、ナイフを二本も買った。
姉から頼まれた化粧品の買い物を、渡されて来たメモどおりにすませたあと、祐一はシャツを二枚にTシャツを一枚だけ買った。そして、予定していなかったスタント・カイトをひとつ、衝動買いした。
一枚だけのTシャツは、多恵子が選んだ。
「これっ」
熱意をこめて、多恵子は選んだTシャツを祐一に見せた。たたんであるのを広げ、彼の胸に当てがった。
「ほら、可愛いでしょう。素敵」
メジャー・リーグの野球チームのマークとチーム名をプリントした、アメリカ製のTシャツだった。
「いいね」
「この鳥が可愛い。祐一に似合うよ」
多恵子は熱心に勧めた。自分でも気にいったから、祐一はそのTシャツを買った。
昼食をあいだにはさんで、合計四時間を彼らはそこで過ごした。そのあと、湾岸の埋め立て地へいき、水族館と植物園に入った。水族館では巨大な水槽の下を歩くガラスのトンネルが圧巻だった。植物園では、熱帯植物の庭園に現実のスコールをそっくりに模した熱帯の雨が降る様子を、四人で見物した。
都心で早めの夕食を食べ、駅へ戻った。そして座席指定の特急に乗り、二時間かけていつもの自分たちの町へ帰った。